旅が好きで好きでたまらない族の僕としては、旅の全てを好きと言いたいのですが、やっぱり嫌だなという面もあります。
その嫌な面を包み隠さず懺悔します。
移動が長いしキツイ
日本国内の移動は新幹線や飛行機が充実しています。近距離であれば電車やバスで移動できますし、仮に夜行バスを使っても、6時間から長くても9時間程度の移動くらいでしか使わないのではないでしょうか。
しかし、ほとんどの国には新幹線のような高速鉄道はありませんし、空港が各地域にあるわけでもなく、高速道路のような便利な道がある訳でもありません。僕が訪れたほとんどの国には、高速鉄道はおろか、高速道路なんてものはなく、そもそも道路が舗装されていないこともしばしばありました。
電車はあるにはありますが、日本ほど充実しておらず、一日に数えられるような本数程度。基本的にはバス移動でした。
日本のようなバスがどこにでもある訳でもなく、バスターミナルでバスを待っていて、大きなバスがやって来たらガッツポーズものでした。アジアのいくつかの国では、ミニバンもしくはタクシーをシェアして移動することになります。曲がりくねり、デコボコした道を走るので、乗り物酔いする人はきついと思います。
移動時間は3時間はノーカウント、6時間は短め、9時間で普通、12時間は少しキツく、15時間で苦しみ、18時間で感情を失い、21時間で感情を取り戻し、24時間で悟り、27時間で意識を失い、30時間以上で発狂して虎になります。
こうした移動を短いと2日に1回、僕の場合は長くても1週間に1回程度の頻度で繰り返しており、慢性的な腰痛に悩まされました。
こうした環境に加え、気温・湿度、リクライニング角度、寝台であるか否か、治安的不安、騒がしさなどが相まって、すさまじいストレスになり得るのです。
かといって、仮に「どこでもドア」があったら使うかと言われれば、使わないと答えてしまうのが旅人の謎であります。
体調を崩しやすい
慣れない食事、水、気温、空気、ベッド、不衛生な環境、不規則な生活スタイルなどにより、旅中は体調を崩しやすく、また回復にも時間がかかります。
僕は過去に4度、激しい腹痛で苦しみました(ミャンマー、インド、バングラデシュ、タジキスタン)が、病院に行っていないので原因は不明です。恐らくは食あたりや疲れによるものだと思いますが、日本で生ガキを食べてノロウイルスに感染したときよりも苦しかったです。
苦しんでいるとき、頼れる人が近くにいる保証はありません。また、基本的にドミトリー(相部屋)に宿泊しているため、ゆっくり休むことも難しいことがあります。
薬は持参していますが、それが効く保証はありませんし、現地で買うにしても、薬局に行く体力すらない場合もあります。
そもそもの環境(気温、衛生状態など)が悪く、回復どころか消耗している気すらする場面もあります。
そして、なんとか復活して思います。「ネタになるな」と。
シンプルに危ない
スリや詐欺であればむしろ許容範囲内です。もちろん狙われたくはありませんが、ダミーの財布を用意したりと、想定の範囲内です。これらは命を取られないだけマシです。
強盗ともなると、もうどうしようもありません。僕自身一度ナイフ強盗の被害に遭いましたし、首絞めや暴行なんて話は旅人からはよく聞きます。一緒に旅していた人が銃殺された人にも会いました。誘拐された人もいるようです。痴漢に遭ったという女性にも何人か会いました。
このように、日本では普段意識しないような犯罪に注意する必要があります。僕は注意しすぎて、帰国してからも無意識にスリには注意するようになってしまいました。
犯罪以外では、環境が危ないことがあります。日本では必ず設置されているガードレールが、崖に面した道路にも設置されていなかったり、信号無視が当たり前の国があったり、そもそも信号機がなかったり、「あ、このドライバー、薬物使ってるな」という爆走バスに乗ってしまったり、慣れていない外国人の我々からすると、ヒヤヒヤする場面がたまにあります。
そして喉元過ぎて熱さを忘れた頃に思います。「ネタになるな」と。
日本食が食べられない
個人的にはこれが旅の一番嫌なところです。現地の食べ物を楽しむ、というのは旅の醍醐味のひとつでありますが、限度があります。仮に1週間くらいの旅であれば、十分に楽しめるのでしょうが、1か月も日本食を食べていないと、食べたくて食べたくてしょうがなくなるのです。日本食と海外の様々な食事の決定的に異なる点は、「出汁」です。国によっては肉や野菜の出汁文化がありますが、日本のような魚・海藻・キノコの出汁文化はほとんどありません。ほとんどというか、「出汁」だな、と感じられるレベルで使っている料理には結局出会えませんでした。
国によっては日本食レストランがあるので、数か月に一度、ガス抜きに行くのですが、一口目の感動は言い表せません。涙が出そうになるほどおいしいのです。
「日本に帰ったら何食べる?」というのが旅人のあるあるトークネタになるくらいに、旅人は日本食を渇望しています。
焼肉、ラーメン、卵かけごはん、かつ丼、牛丼、餃子の王将あたりがよく候補にあがっています。
ちなみに、僕は出国前と帰国後は、すき屋の「高菜明太マヨ牛丼」を食べると決めています。世界で一番おいしい食べ物ですから。
不潔になる
日本は世界最高レベルで清潔な環境が整っている国だと思います。
空気はきれいで、虫は少なく、ゴミは落ちていませんし、うんこも落ちていません。地面は舗装されているので土埃もたちません。
そんなことよりも、温かいお湯で水圧MAXのシャワーが24時間使えます。これは世界的に見ても珍しいことです。
多くの国でお湯が使えますが、数分しか使えなかったり、水圧が物足りないことが殆どです。西ヨーロッパやアメリカでも物足りなさを感じると思います。
もちろん水シャワーしか使えない国もあります。寒い時期は拷問のように冷たい水で身体を洗う必要があります。浴び終わると、意外とスッキリするのですが。
しかし、水が出るだけマシです。断水や停電で水が使えないことが稀にありますし、旅をしているとシャワーすらない場面もあります。夜行バスや寝台列車での移動ももちろんシャワーは使えません。
僕は最長で10日間シャワーを浴びることができませんでした(モンゴル)。10日間身体を洗っていないと、恐ろしいほど不潔になります。ついでに手も洗えません。
シャワーが浴びれたとしても、次は洗濯の問題があります。
基本的には手洗いなので、脱水が甘く、乾燥に時間がかかります。また、洗濯するのを忘れていたり、洗濯する余裕がなかったりすることがあります。結果として、同じ服を複数回着ることになります。
とにかく、日本であれば確実に「不潔だな」となることも、残念なことに旅中であればある程度許容できるようになってしまいます。そして身だしなみも段々雑になり、一周周って「これはワイルドなんじゃないか」と勘違いをして無精髭を伸ばしたり破れたTシャツを平気で着たりするようになるのです。
そして日本に帰って気づきます。あれ、オレ不潔じゃね?と。
結局のところ
嫌だと言っておきながら、振り返ると、それも旅の一部なんだということで、なんやかんやアリだと思えるのが悔しいところです。
嫌だけど嫌いじゃない。嫌な面も愛しく思えるほど旅が好きです。これが愛です。
せんまさお
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