「かわいい子には旅をさせよ」。日本人なら誰もが知る、旅にまつわることわざです。
旅にまつわる「ことわざ」は、日本のみならず、世界各地に存在します。そして、著名人による旅にまつわる「名言」も多数残されています。
その中からいくつかピックアップし、旅人視点から考えていきます。
最後に、僕が旅で出会った「言葉」についてもご紹介します。
もくじ
- 日本の旅のことわざ
- 世界の旅のことわざ
- 旅の名言
- The journey is the destination.
- The world is a book and those who do not travel read only one page.
- People don’t take trips, trips take people.
- I travel, always arriving in the same place.
- A good traveler has no fixed plans, and is not intent on arriving.
- A journey is best measured in friends rather than miles
- 日々旅にして旅を栖(すみか)とす
- All journeys have secret destinations of which the traveler is unaware.
- The world is round and the place which may seem like the end may also be the beginning.
- Travel is fatal to prejudice, bigotry, and narrow-mindedness.
- We travel not to escape life, but for life not to escape us.
- I wandered everywhere, through cities and countries wide. And everywhere I went, the world was on my side.
- 旅で出会った言葉
- 旅に出たくなった
日本の旅のことわざ
かわいい子には旅をさせよ (かわいいこにはたびをさせよ)
意味:大事な子どもであるからこそ、甘やかして目の届くところで育てるのでなく、旅をさせて厳しい経験を積ませるべき。
感想:旅中は毎日が初体験のことで満ち溢れており、判断の連続です。困難に立ち向かうとき、下手をすると危険な目に遭う可能性すらあります。親が子の前に立ち、代わりに守ってあげるだけでは、子どもはいつまで経っても自らの判断で物事を選択する能力が身に付きません。多少強引な手段ではあると思いますが、子どもに限らず、旅は自ら道を選び自ら進んでいく力を身に付ける最短の手段だと思います。
旅の犬が尾をすぼめる (たびのいぬがおをすぼめる)
意味:普段は威勢のいい犬が、見知らぬ土地では大人しくするという意味が転じて、家の中などでは威勢が良いが、外へ出るとまるで意気地がなくなる人のことのたとえ。
感想:これは極端に分かれるのかもしれません。旅に出ると、怖気づいて大人しくなる人もいますが、あからさまに威勢が良くなる人もいます。もしかすると、日本では取り繕っていた本来の性分が、思い通りにいかない旅によって露わになるからかもしれません。
旅の恥は搔き捨て (たびのはじはかきすて)
意味:旅先では自分のことを知っている人もいないし、長く滞在するわけでもないから、恥をかいてしまっても、その場限りのものである。
感想:自分を個であるとするか、集団の一部であるとするかで、このことわざの正否が分かれます。確かに、個であれば、旅先の恥は掻き捨てなのですが、集団の一部であるとするならば、その恥は集団の他の人に対して悪影響を及ぼす可能性があります。
例えば、僕が現地のマナー的にNGなことをしたとします。現地の方からあきれられるでしょう。その場合、僕個人のレベルでは、その現地の方と今後もかかわり続ける可能性は低いので、この恥は掻き捨てになります。しかし、僕が掻いた恥は、日本人はマナーが悪いというレッテルに変わる可能性があり、後に訪れる日本人にとっては悪い影響が残ります。恥を自分だけのものとするのか、自分が属する集団のものとするかで、感じ方が違うことわざだと思います。
旅は憂いもの辛いもの (たびはういものつらいもの)
意味:旅はよるべき所も頼る知人もないので、とにかく苦しく辛いことが多いものである。
感想:旅人は苦しい体験や辛かった出来事を隠して、楽しく明るい旅だけを発信しがちですが、実際には結構過酷なものです。日本で過ごしている環境とは異なり、慣れていない間は、全ての行動のハードルが高いイメージです。しかし、トラブルに慣れれば、多少の苦しさや辛さに対して鈍感になってきます。そして、旅人は全力で人を頼りながら旅をします。ことわざの通り、そこに知人はいませんし、見知っている土地もありませんが、人と知り合いながら旅をし、よるべき所を作っていくものです。そして旅が終わるころには苦しさも辛さも良い思い出になっているから不思議なものです。
旅は道連れ、世は情け (たびはみちづれ、よはなさけ)
意味:旅をするときに一緒に旅をする人がいれば心強いように、世の中を渡っていくには人情をもってやっていく事が大切だということ。
感想:一人旅には一人旅の良さというものがありますが、確かに一人旅は心もとなく、本当に大丈夫かなと不安になることもあります。特に治安の悪い地域を訪れる際は、一緒に旅をする人がいれば、確かに心強いものです。その相手がどうこうという話ではなく、誰かが一緒にいるということが大事なのかもしれません。ただ、一人旅はかけがえのない出会いを生み出すきっかけを持っていますから、道連ればかりというのもつまらないのかもしれません。
若い時旅を致さねば年寄っての物語がない (わかいときたびをいたさねばとしよってのものがたりがない)
意味:若い時に旅をして見聞を広めておかなければ、年をとってから人に話をする種がないということ。
感想:僕はまだ若い人に話をするような経験をしていないので分かりませんが、旅の経験は歳を重ねるごとに価値が増すそうです。ここで言う物語というのは、単にどこどこへ行ったという話ではなく、旅を通して学んだことなどを含ませた物語の事だと思います。
世界の旅のことわざ
旅に出るなら眉毛も抜いていけ(韓国)
意味:旅はできる限り身軽な方が良い。わざと軽い眉毛を引合いにだし、必要最低限のもの以外は持っていくなということを強調している。
感想:旅の鉄則なんてものはありませんが、その候補として挙げられる重要な項目かもしれません。荷物の軽さは旅する世界を広げます。極端なことを言えば、服2セット、お金、パスポートがあれば旅はできます。旅人同士で、いかに荷物が小さいか、さりげなくアピールする瞬間みたいなのがあります。
旅に着くことよりも楽しい道中がよい(英語圏)
意味:旅の楽しさは、目的地に到着することよりも、その道中にある見知らぬ土地の風景や食事、見知らぬ人々との出会いにわくわくするところにこそある。
感想:なぜ旅をするのか、という話になりますが、ただ単に目的地に行けば良いだけなら、目的地までの最短ルートを行けばいいだけです。その道中にこそ、旅の醍醐味があるので、道中を作るために目的地を決めるのです。旅は良いことばかりではありません。道中では、口に合わない食事、事故、不愉快な思いをすることや、辛い目に遭うこともあります。しかし、それを割り引いても、理屈を抜きに胸を膨らませてくれる何かがあるのが道中なのです。
旅に出ると性格が表れる(ペルシャ文化圏)
意味:旅に出ると、思い通りになることばかりではない。計画は日々起きる問題によって崩れ、見知らぬ地では日頃のやり方は通用しないのが普通であり、よかれ悪しかれ、いつもは抑えられていた本来の性格が現れやすい条件が整っている。
感想:他の旅人については逆に旅以外の面を知る機会がないので分かりませんが、僕個人のことで言えば、旅をして自分の意外な一面を知ることができました。日本ではあまり怒ることがありませんし、仮に頭にきたとしても波風立てないように心にしまい、ましてや大声を出して怒るなんていうことはありませんでした。
しかし、インドを訪れた際、あまりに理不尽なことをされたとき、大きな声を出して怒ったことを覚えています。それ以降、大きい声までは出さないものの、言うべき所でははっきりと物を言うようになりました。
思い通りにならない日々の中で、小細工が通用しないことを知り、鎧を剥がされ限りなく裸の状態に近づいていきます。また、旅中に出会い、旅を共にする人とは、24時間ほとんど一緒に過ごすことになります。そんな中で取り繕った自分が維持できるわけはなく、ほとんど素になっていきます。
だからこそ、旅中に出会う人とは心を許せる関係が築きやすいのかもしれません。
寝てばかりいる賢人より放浪する愚人(モンゴル)
意味:定住し、本を読んだり瞑想したりしている知識人であるよりも、あちこちを旅して放浪する愚人の方がよいものである。移動を前提とした遊牧民の生活は、机上の学問とは比べ物にならない真剣勝負であるという考えからきた精神的風土。
感想:遊牧を文化とするモンゴルだからこそ生まれたことわざでしょう。動き続けなければ生きていく事ができない過酷な環境。日本のような定住文化の中ではなじみのない言葉のようにも聞こえますが、机上の空論という言葉があるように、いくら知識があったとしても、行動しなければ現実は何も変わらないものです。行動の伴わない知識は役に立たないのです。
王様でも旅人は貧しい(東アフリカ)
意味:たとえ権力者や金持ちであっても、他国に行くと地位や富が通用せず、思うに任せないことが多い。まして庶民であれば、旅の苦難は当然のことである。
感想:普段の生活で通用することが、ほとんど通用しないのが旅です。自信満々で生きている人こそ旅に出て鼻っ柱を折られてみてほしいと思います。どこでも通用するのはスマイルだけ。
王様ではありませんが、いわゆる社会的地位の高い人から僕のような無職までが肩を並べて進んでいくのが旅なのです。それがおもしろいのです。
旅の名言
The journey is the destination.
ーDan Eldon(イギリス・ジャーナリスト)
意訳:旅は目的地です。
感想:なんて美しい言葉なんだと感動しました。旅人は目的地に向かうことが目的ではないのです。旅することこそが目的なのです。核心を突いています。
The world is a book and those who do not travel read only one page.
ーAugustine of Hippo(アルジェリア・思想家)
意訳:世界は一冊の本のようであり、旅行をしない者は最初の1ページしか読まないようなものです。
感想:旅こそが全てではないことは旅人にだってわかります。だから一冊の本なのです。そしてその本に夢中になって、無限に続くページをひたすらめくっていくのが旅なのです。一方で、旅行は目次とでもいえばいいのでしょうか。
People don’t take trips, trips take people.
ーJohn Steinbeck(アメリカ・作家)
意訳:人が旅をするのではなく、旅が人を連れて行くのです。
感想:かっこつけたことを言うと、旅人が旅に出ることは必然なのです。旅の方からしつこく誘ってくるんですから、断るのがとても難しいのです。
I travel, always arriving in the same place.
― Dejan Stojanovic(コソボ・ジャーナリスト)
意訳:私は旅行し、いつも同じ場所に行き着きます。
感想:旅人によって行き着く場所は違うのでしょうが、大変な目に遭っても、苦しんでも、辛くても、結局いつも同じ場所に行き着いて、やっぱり旅っていいなと思うのです。
A good traveler has no fixed plans, and is not intent on arriving.
ー老子(中国・哲学者)
意訳:良い旅行者には決まった計画がなく、到着するつもりはありません。
感想:これは旅人に対する愛のこもった皮肉でもあります。きっとしっかりとした人は旅をすることが難しいかもしれません。旅人はいい加減さがいい加減を生むことを知っているのです。
A journey is best measured in friends rather than miles
ーTim Cahill(アメリカ・旅行記者)
意訳:旅は進んだ距離ではなく、その道中でできた友人で測るのが最善の方法です。
感想:進んだ距離や訪れた国の数でマウントを取る形の旅人は旅人からも避けられます。なぜならその人は旅人のふりをした偽物だと感じるからです。一方で、旅で出会った友人がどのような人であるかを見れば、その人の旅は一目瞭然です。
日々旅にして旅を栖(すみか)とす
— 松尾芭蕉(日本・俳人)
意訳:毎日が旅であり、旅自体を家とします。
感想:彼の中でいかに旅が特別なものから日常になったか伝わってきます。長く旅を続けていると、旅は生活に溶け込み、区別がつかなくなってきます。彼の場合は、溶け込んだというレベルではなく、旅=生活という関係になったのでしょう。恐れ入ります。
All journeys have secret destinations of which the traveler is unaware.
― Martin Buber(オーストリア・哲学者)
意訳:すべての旅には、旅人が知らない秘密の目的地があります。
感想:捉え方は様々な言葉のようです。旅をしていると、思いがけないところで美しい景色を見つけたり、思いがけない素敵な出会いがあります。決してそれを目的に旅していたという訳ではありませんが、それはきっと旅が僕のために準備しておいてくれたんだろうな、と思っています。
The world is round and the place which may seem like the end may also be the beginning.
— Ivy Baker Priest(イギリス・作家)
意訳:世界は丸く、終わりのように見えるところも、もしかすると始まりかもしれません。
感想:旅人は世界を一周しようが、例えすべての国を訪れようが、その内また次の旅のことを考え始めてしまいます。なぜなら、終わりは始まりだからでしょう。
Travel is fatal to prejudice, bigotry, and narrow-mindedness.
ーMark Twain(アメリカ・作家)
意訳:旅は偏見、差別、狭い考えをなくさせます。
感想:旅しない人が語る世界の話ほど聞くに堪えない話はありません。偏見、差別に満ち溢れていてうんざりします。自分の目で見たことだけが確かだということをまだ知らないのです。
We travel not to escape life, but for life not to escape us.
ーunknown(不明)
意訳:人生から逃れるためではなく、人生のために旅をします。
感想:現実逃避するつもりで旅にでるのなら、やめておいた方が賢明です。旅先で見るものはどれも現実なのですから。そしてそのほとんどは日本よりも過酷な現実なのですから。
I wandered everywhere, through cities and countries wide. And everywhere I went, the world was on my side.
― Roman Payne(アメリカ・作家)
意訳:私は世界のあちこちを彷徨いました。そしてどこへ行っても、世界は私の味方でした。
感想:旅の話をすると、すごいねと言われることがありますが、それは違います。旅は人に頼らなければできません。仮に、誰一人として口を聞いてくれなければ旅はできません。旅は辛く、苦しいことの連続ですが、世界はいつだって僕たちの旅を助けてくれるのです。心配はいりません。助けを求めれば、いつだって助けてくれるのです。その先には、一生忘れられないかけがえのない旅の思い出が残ります。
旅で出会った言葉
行きたい場所へはいつでも行けるけど、その人との旅はその時しかできない。
一緒に旅していた人と、次の目的地が違ったときに貰った言葉です。その旅人とは一緒にいて居心地が良く、まだ一緒に旅を続けたいと思っていましたが、次の目的地が違い、ついて行こうか、別れようか悩んでいたときにこの言葉をもらいました。この言葉を聞き、その旅人の目的地について行くことにしました。結果、正解でした。計画通りに進まないのが旅ですが、それがおもしろいと知れたきっかけでもありました。
またいつか、世界のどこかで
旅人に言われた別れ際のあいさつです。本当に再会できるかどうかは重要ではありません。出会えたことを喜び、また再会できると信じて進むことが美しいのです。
See you again!
宿で仲良くなったスタッフに言われた一言です。宿を後にする際、僕がGood Byeと伝えると、彼女はSee you againとたどたどしい英語で返してくれました。Good Byeはもう会えないことを想定した意味合いを含む場合もあるあいさつです。一方で、See you againは「また会う日まで」という日本語に訳せるほど重たい言葉で、基本的にはまた会えるか分からないときに使います。しかし、また会える日が訪れることを願う意味が込められています。本当にそのような気持ちが込められていたのかは分かりませんが、僕は思わず嬉しくなって、See you againとあいさつし直しました。
世界、広すぎません?
もう2年以上旅をしている人から聞いた言葉です。予定では1年間の旅の予定だったそうですが、旅に出て世界の広さを知り、旅を続けているそうです。おっしゃる通りです。人生を何回も繰り返そうが、世界を見て回るには足りません。
気が付いたらここまで来てたんだ
中央アジアで出会った旅人の言葉です。彼は西ヨーロッパから自転車で中央アジアまで来ていました。最短距離でも6,000km以上あります。ヨーロッパを自転車で旅していたら、流れに流れてここに行き着いたようです。そして彼は結局、日本まで自転車で帰っていきました。
旅に出たくなった
さすが大切に語り継がれてきた言葉なだけあります。「旅とはこういうものだ」と説明するのは非常に難しいのですが、色々なたとえを使って旅のことを上手く表現しています。この記事を書いていると、旅に出たくて出たくて居ても立ってもいられなくなってきました。
個人的には「The journey is the destination.(旅は目的地です)」という言葉が大好きです。分かるようで分からない、伝わるようで伝わらない、そのハッキリしないところが旅と似ている気がしたりしなかったり。
せんまさお
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