観光を終え、カジノにやってきた。どうしても負けを取り戻す必要があると感じていた。これは罪悪感を拭うための行為であり、今後の旅に後悔を引きずりたくなかったからだ。しかし昨日の3,310香港ドルの負けが頭をよぎり怖い気持ちが抑えられない。Ponte16に来たが、今日は機械式の台が空いている。機械式の台に対する不信感はある。ディーラーはサイコロを振ったあと蓋をして隠しておき、皆がベットを終えたタイミングで蓋を開ける。更に不正をしていないアピールなのか、サイコロは透明である。対して機械式の台は、ベットが終えたタイミングでサイコロが振られる。そしてサイコロは不透明である。
そうは疑いながらも、負けへの恐怖から最低ベット数の少ない機械式の台へ座った。今日の資金は3,000香港ドル用意しておいた。冷静に勝ちを積み重ねるが、負けが続き損切をした。手持ちは1,880香港ドルに減っていた。
昨日、賭け方の方法論を調べていた。31システムという賭け方があることを知った。これは1・1・1・2・2・4・4・8・8という単位で賭け続け、二連勝したタイミングで1ターム終了して最初から賭けなおすというものだ。すると、必ず利益が確保できる。仮に二連勝できなければ損が出るが、全敗しても31単位での損がMAXになるというものだ。
最低ベット数は40香港ドルなので、1単位は40HKD、2単位は80HKDということになる。つまり、全敗した場合の損は1,240HKDになる。全敗は確率的に非常に低く、二連勝できないという状況も、感覚的に少なそうと感じたので実践してみた。
考えてみれば分かるが、勝ちで得られる金額が少ないわりに、損が出た時の金額が膨らみがちな手法である。また、当初の作戦だった三連続で大もしくは小が出たタイミングで賭けるという方法を無視して、僕は連続で賭け続けた。
結果として手持ちは900香港ドルまで減っていた。呆然とした。もう900香港ドルが残っていることさえ憎く感じる。ヤケクソになってディーラーのテーブルへ向かう。手持ちが足りないことは分かっていたが、ここで全て負けてももうどうでもよかった。持ち金がすべてなくなればこの場から離れることができる。僕はカジノの魔力から自分の力では逃げ出せなくなっていた。きっと心のどこかで勝てると期待しているからだろう。
当初の作戦通り、三連続で大が出ている台の小に200香港ドル賭ける。また大が出た。次に300香港ドルを小に再び賭ける。また大が出た。取り戻すためには600香港ドル必要だが、もう400香港ドルしかない。僕は迷うことなく400香港ドルを小に賭けた。ディーラーがサイコロの蓋を開ける。小だった。僕はの手持ちは800香港ドルになった。ここで事前に立てた作戦の通り600香港ドルを賭けていれば増えていたはずだ。
僕は一度夕飯を食べに出ることにした。おなかが減っているのか分からなかったが、気持ちをリセットしたかった。今日の賭け方を振り返ってみると、最初に決めた戦略を何一つ守れていないことに気づいた。昨日だって、ルーレットをしたり、怪しんでいながら機械式の台で賭けたり、掛け額の戦略を無視したり、損切のルールを追加したりと余計なことをしていたように思う。
落ち着こう。とにかく心を無にして戦略通りやろう。僕はそもそもカジノを楽しみに来たわけではない。お金を増やしに来ただけだ。マクドナルドでハンバーガーを齧りながら、決意を新たに、僕はもう迷うことをやめることにした。
Ponte16に戻ってきた。800香港ドルしかないが、ここから資金を増やすのはやめておこう。すべて失ったらもう二度とカジノに来るのはやめよう。淡々と賭け続けた。運気が向いてきたのか、一発での勝ちが連続する。負けを取り戻すためのベットが担保できる金額まで増えてきた。
1,000香港ドルを超えるベットも迷うことなく行う。怒涛の連勝で気が付けば僕の手持ちは4,200香港ドルまで増えていた。疲れてきたのでミスを防ぐためにも今日はここでストップすることにした。
初日からのトータルでは890香港ドルのプラスになっていた。しかし、初回の勝ちのあと、調子に乗って香港で無駄遣いをしていたので、その分は取り戻したいと思っていた。また、初日のフェリー代やマカオでの宿泊費を考えると、1,770香港ドルの勝ちでトントンになる計算だった。
明日、880香港ドル勝ってカジノはもう卒業しよう。そこで終わろうと決意して、疲れ切って寝てしまった。

せんまさお

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