「ロンギヌスの槍」「ノアの方舟」
どこかで聞いたことのあるような名前。エヴァンゲリオン?
そんなファンタジックなものを見ることができる場所があります。
そこはアルメニアです。
もくじ
ロンギヌスの槍とは
十字架に磔にされたキリストの死を確認するために、わき腹を刺したとされる槍のことです。
キリストの血に触れたものとして尊重されている聖遺物のひとつです。
槍を刺したローマ兵の名前が「ロンギヌス」だったことからこのように呼ばれています。英語圏では「Spear of destiny(運命の槍)」とも呼ばれます。
ノアの方舟とは
旧約聖書の「創世記」に登場する洪水にまつわるノアの方舟物語登場する「主人公ノアとその家族、多種類の動物を乗せた方舟」のことです。
《旧約聖書の要約》
神は地上に生きる人々の堕落を見て、洪水で滅ぼそうと考え、「正しい人」であったノアに方舟の建設を命じ、ノアの家族、すべての動物のつがい(雄雌)を方舟に乗せたました。洪水は40日間続き、地上に生きていたものを滅ぼしました。その後150日間地上は水で満たされましたが、方舟はアララト山の上に止まりました。
その時の方舟のことです。
どこで見られるのか
ロンギヌスの槍はキリストの死のタイミングなので約2,000年前、ノアの方舟は約4,800年前と言われています。
非キリスト教徒の僕からすると、ロンギヌスの槍に関しては史実であると信じることはできますが、ノアの方舟に関しては「ちょっと信じがたい」というのが正直な感想です。※批判する意図はありません。
しかし、それらの実物を一度に見られる場所があります。
エチミアジン大聖堂

アルメニアの首都エレバンからバスで30分ほどのところにあるエチミアジン。ここはアルメニア教会の総本山であり、広大な敷地面積を誇ります。
「ロンギヌスの槍」と「ノアの方舟」はこの教会の宝物館にあります。
実はアルメニアは西暦301年に世界でもっとも早くキリスト教を「国教」として定めた国(ローマが当時迫害を受けていたキリスト教の信仰の自由を認めたミラノ勅令は西暦313年なのでその10年も前)なので、ありそうといえばありそうです。
宝物庫への入場は時間ごとに人数制限があります。チケットは宝物庫入り口にあるお土産屋のカウンターで買うことができ、その時に時間を教えてもらえます。
宝物庫内は公式のガイドさんに続いて回るツアースタイルです。英語ガイドがいます。
僕の時は丁度ツアーが出発した直後だったので、「急いで付いて行って」と言われましたが、館内には複数の団体がいたのでどれが僕の担当のガイドなのか分からず、結局一人で回りつつ、近くのガイドの話を聞いていました。
そしてありました。これがロンギヌスの槍です。

正確には「ロンギヌスの槍の先っちょ」です。
そしてこれがノアの方舟です。

正確には「ノアの方舟の欠片」です。
四本のロンギヌスの槍
遠い昔の話であるため、現在は複数の説を元にした複数のロンギヌスの槍が存在しています。
1本目:当記事のアルメニアのもの
アルメニアのゲガルド修道院がある場所で発見されたと言われています。この地に持ち込んだのは12使徒の1人タダイとされています。タダイはこの槍を持っていたことから異教徒に恐れられ殺されましたが、直前にキリスト教に改宗させていた教徒たちの手によって、槍は洞窟に隠されました。それを手にしたのがグレゴリウスという男で、やはり異教徒に捕らえられてしまいましたが、解放された後に槍を取り戻し、王と民衆をキリスト教へ改宗させ、西暦301年にアルメニアはキリスト教を国教としました。
しかし、アルメニア教会はこのロンギヌスの槍はローマ兵のものではなく、当時のユダヤ兵が使っていたものと認めています。キリストを槍でさしたことで名前の由来ともなったロンギヌスはローマの兵士であったことから、あれ?どういうこと状態になっています。
2本目:ハプスブルク家のもの(ウィーン)
4世紀ごろ、初代ローマ皇帝コンスタンティヌス1世とその家族はロンギヌスの槍を探していました。そして彼の母へレナはエルサレムへの巡礼の旅の途中にロンギヌスの槍を発見しました。
そしてコンスタンティヌスが手にしたロンギヌスのやりは、時代の経過とともに数々の権力者の手を渡ることとなります。というのも、槍を手にしたものは「世界を制する力」が与えられると信じられていたからです。ハリー・ポッターで言うところの「ニワトコの杖」です。
そしてかのナポレオンもその槍を求めるのですが、彼の手に渡ることを避けたかった当時の所有者である王家の手によって、ウィーンへ運ばれました。
ウィーンへ運ばれた槍はその後、様々な人の手を渡り、最終的にハプスブルク家にたどり着きました。
そして現在、ハプスブルク家の歴代オーストリア皇帝が住んでいた宮殿であるホーフブルグ宮殿に保管されることとなったのです。
3本目:南極大陸の地下、もしくは南米のどこかにあるもの
2本目のロンギヌスの槍は、実はナチスのヒトラーの手によって、一度奪われた過去があります。
ハプスブルク家の手に渡ったロンギヌスの槍は博物館に展示されており、画家時代の若き日のヒトラーはそこを訪れ、「自分が生まれる以前、数世紀前にも一度手にしていたような気がする。その槍を持って世界を手中に収めようとしていた気がする。」と感じたそうです。
そして時は経ち、ヒトラーがナチスを作り、勢力を拡大し、オーストリアを併合した後、ハプスブルク家の財宝もろともドイツへ持ち帰りました。
そしてナチスは対ロシア戦で大打撃を受けます。1945年、米軍の手によってロンギヌスの槍は奪還され、ウィーンのハプスブルク家へ返されることになりました。
しかし、実は奪還されたロンギヌスの槍はレプリカだったという説があり、本物はナチス親衛隊のトップであるヒムラーの手によって南米もしくは南極にあったとされるナチスの秘密の拠点に運ばれたという説がある。
ここからは個人的に思いついた説ですが、もし今ウィーンに保管されているものがレプリカだとすると、米軍がレプリカとすり替えて本物はアメリカにある説もあるんじゃないかと思います。
4本目:ローマ教皇のもの
4本目の説は、2本目の発見まで遡る事になります。
2本目は初代ローマ皇帝コンスタンティヌス1世の母へレナがエルサレムへの巡礼の旅の途中に発見して持ち帰り、コンスタンティヌス1世の手に渡ったことになっていますが、実は持ち帰っておらず、西暦614年にペルシャ軍によってエルサレムが占拠されたときにコンスタンティノープル(現在のイスタンブール)に持ち帰られたという説から4本目が存在することになりました。
4本目は先端が欠けており、欠片は宝石で飾られた十字架の中心部に埋め込まれてコンスタンティノープルのアヤソフィア教会に保管されていました。それをフランス国王ルイ9世が買い取って保管していましたが、フランス革命で行方不明になりました。
本体の方は15世紀にオスマン帝国によってコンスタンティノープルが陥落したときもそこにあったとされています。
そして1492年、オスマン帝国のスルタンバヤズィト2世が当時のローマ教皇インノケンティウス8世にロンギヌスの槍本体を贈りました。弟が自分の座を狙っていることを恐れたスルタンバヤズィト2世が弟をイタリアに幽閉してしてもらうことの交換条件だったとされているようです。
こちらの4本目のロンギヌスの槍は、現在でもバチカン市国のサン・ピエトロ大聖堂に保管されています。公開はされていません。
DNA鑑定できるらしい
現在の技術を持ってすれば、ロンギヌスの槍に残っているであろう血液の成分をDNA鑑定すれば、どれが本物なのか、もしくはどれも偽者であることが分かるそうです。
しかし、それが行われないのは、「神への冒涜」に値するかららしい。実際には「偽物」と判明することのリスクを避けたいからだと僕は思います。
ノアの方舟発掘調査
旧約聖書に書かれていることを真実であるとし、現在でもヨーロッパ諸国では探索が行われています。
2010年にトルコのアララト山の山頂付近(標高4,000m)で方舟の木片が発見されました。専門家による年代測定を行ったところ、ノアの方舟が作られたとされる4,800年前と同時期の木片だということが確認されました。
発見された木片は、いくつかの部屋を構成していた構造物のようだったことから、ノアの方舟だと断定されました。一般の住居ではないと判断したのは、いくつかの部屋が構成されていたからという理由と、標高3,500m以上で住居が発見されたことがないことからという理由です。
こうして発見されたノアの方舟の欠片とされるものが、アルメニアのエチミアジンに展示されているものです。
しかし、「方舟の捜索に行った探検隊が手ぶらで帰ってきたという話は一度も聞いたことがない」と言われるほど、真偽の程が怪しい説ばかりです。
やはり、あまりに昔過ぎること、手掛かりがなさすぎることから、仮に本物を見つけても、誰も「これは本物だ」というものを肯定も否定もできないのでしょう。
アルメニアに展示されているものも、年代が同じだからそうだろう、というものですし。
ロマンがある
アルメニアは正直なところ、経由地の一つとしてしか考えていませんでしたが、宿で「ロンギヌスの槍とノアの箱舟が見られる」と聞いて、一気に心が躍り始めました。
なんだかよく分からないけれど見てみよう。こうしてワクワクしながら見に行ってみた訳ですが、伝説上のものが実際にある(真偽のほどは置いておいて)というのはロマンがあります。
皆さんも機会があれば見に行ってみてください!

せんまさお

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