
シェンゲン協定というものを結んだ国同士の移動はパスポートチェックがないとは聞いていた。
その噂の通り、寝ている間にスロベニアとの国境を越えていたようだ。
思ったよりも時間がかかり、日の入りも午後4時過ぎということも相まって、首都のリュブリャナに着いた頃にはほとんど暗くなっていた。
「305号室のCベッドを使ってね。Cよ。」
女性スタッフに念を押されて向かった305号室のCベッドにはすでに見知らぬ誰かの荷物が広げられていた。

フロントに戻り、Cベッドはもう誰かが使ってました、と交代で入ったらしい男性スタッフに伝える。
「別のベッド使ってオッケーだよ。オッケー!」
じゃあCとか言うなよ。

暗くなって逆に明るくなった街に出る。リュブリャナは首都なのにものすごく小さい。歩く人も少ない。

アコーディオンの音色が聴こえてくる。おじいさんが弾いているのが見える。

住宅街に迷い込んだ。そしてラーメン屋を見つけた。なぜリュブリャナの住宅街にラーメン屋が。
入ってみると完全に日本のラーメン屋。カウンター席しかないところも日本風。

醤油ラーメン8ユーロ(1,040円程度)。高いけどオッケーだ。なぜなら朝飯も昼飯も食べていないからだ。
「フィッシュ?ミート?」
何の話だろう。醤油ラーメンのフィッシュかミートかって何の選択肢なんだろう。もしやチャーシュー的なのが肉か魚か選べるのか。さてはまたフェイクジャパニーズラーメン屋か。
「ミートプリーズ」
よく分からないが、無難にミートにしておくことにした。注文してから気づいたが、もしかしてスープのことか。トンコツか魚介系かということか。いや、醤油ラーメンってことはトンコツじゃないか。それなら醤油トンコツラーメンだ。いや、鶏ガラということもあるのか。どちらにせよボーンorフィッシュだ。
数分後、完璧に醤油ラーメンなミートの醤油ラーメンが出てきた。

チャーシューが乗っているからミートはミートのチャーシューという推測で合っていたのかもしれない。
味もうまい。高速のサービスエリアでなら通用する味だ。そういう味だ。
スープまで飲み干して街へ戻る。満腹は幸せの形。あったまった身体で街を歩く。狭いのでもうオフィス街みたいなところへ出てしまった。
コーヒー片手に歩いている人がいた。どこで買うんだろうとキョロキョロ辺りを見ていると、お店からコーヒーを持って出てくる人がいた。そこか!
店に入り、コーヒーくださいと言うと、セルフサービスとのことだったが、親切に買い方を教えてくれた。
機械でカップにコーヒーを淹れてからレジで支払うらしい。
1ユーロ(130円程度)でSサイズを買った。宿への帰り道、飲みながら歩く。

ああ、うまい。毎日インスタントばっかりだから安物でも挽き立てはうまい。コーヒーはインスタントとの間に大きすぎる壁がある。更に言うと缶コーヒーとインスタントコーヒーの間にも大きな壁がある。
《イメージ》
缶<インスタント<豆
しかしながら状況によってはこうなる。
インスタント<豆=缶
缶のポテンシャルはあなどれない。金曜日の仕事終わりのコンビニ前と、高速道路のパーキングエリアで飲む缶コーヒーは破茶滅茶にうまい。日本の缶コーヒー飲みたいな。
再びアコーディオンの音色が聴こえてきた。1ユーロでいい夜が送れた。

せんまさお

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