
ヌクス行きのシェアタクシー乗り場に来た。来た瞬間にドライバーに声をかけられ、値段も許容範囲内だったので付いて行っていると、ゴリマッチョの別のドライバーがやってきて先に声をかけてきたドライバーとケンカを始めた。
「おい、おれが先にここで待ってたんだから横取りするな!(イメージ)」
激しい口論が続き、周りの人も興味津々で見ている。僕は蚊帳の外で呆然とするしかなく、近くの人に目配せすると「困ったね」みたいな表情をされた。
ケンカは更にヒートアップし、ゴリマッチョが相手を突き飛ばした。こりゃいかんと止めに入るが、何言ってるのか全然わからん。
とりあえず値段はいくらか聞いたら同額だったので、どっちでもいいから早く出発する車がいいと伝えると、どっちも他には乗客が集まっていないらしい。
じゃあ綺麗な方の車に乗ると伝えた結果、ゴリマッチョのシボレー車に乗る事が決まった。

助手席で寛いでいると、客を見つけたのかゴリマッチョが乗り場に到着したばかりのタクシーにゴリゴリと詰め寄る。
先に僕に声をかけてきたひ弱そうな男も声をかける。ゴリマッチョが再び怒り始めた。二人のケンカに気を悪くしたのか、タクシーの乗客まで怒り始め、再びタクシーでどこかへ行ってしまった。
タクシーが去ると、二人のボルテージは下がったようだが、相変わらず口喧嘩をしている。厳しい業界だ。
トイレに行って帰ってくると、二人が仲よさそうに笑いあっていた。なんだこれ。
1時間ほど待った後、最後はまたもやゴリマッチョがひ弱そうなドライバーから2人の客を奪い、揃った瞬間に出発した。なんなんだ。
前席に座れたので広々爽快。例のごとくフロントガラスは割れているが、それでも景色を堪能できるドライブになった。砂漠ばっかりだけど。

時速120kmで飛ばし続ける。そういえばいつもドライバーは助手席の客と何か話している。しかし僕はウズベク語もロシア語も話せないので、会話がそこまで盛り上がらない。
ドライバー寝ちゃわないかなと心配だったが、たまにハンドルからちょっと手を離してみたり、お金を数えてみたり、携帯のバッテリーを外してみたりと眠気覚ましに色々工夫しているようだった。
3時間程度でヌクスに到着。ヌクスはカラカルパクスタン共和国の首都。とはいっても、ウズベキスタン領土内の自治共和国なのでパスポートのチェックとかはないようだ。
場所的には更に西に移動したのだが、カラカルパクスタン人の顔は逆に東アジア人に近いようだ。僕もギリギリ紛れ込めるかなというくらいだ。いややっぱり無理だ。
観光地でもないので宿が少なく、宿代も高い。たまたまドミトリーより安いシングルルーム(ダブルベッド)があったので、そこに泊まることに決めたが、一泊12ドル(1,275円程度)とちょっとキツイ金額だ。

チェックインを済ませると駅へ向かう。この街には早々にさよならバイバイして次の街へ向かうつもりだ。

列に並んでいると、知らないおばちゃんがやってきた。
「ロシア語話せる?」
話せないと答えると、やれやれみたいな顔をされた。なんだ突然失礼な人だな。
おばちゃんは列の横に立って、列の人と何か揉めている。
(これはもしかして割り込み!)
中国の悪夢が蘇る。抜かされてなるものかと僕は前の人との距離を詰めた。後ろからも抜かされないように脚を広げ、両手は腰へ置いて違和感のない通せんぼをした。
おばちゃんが僕をチラチラ見てくる。こちらがおばちゃんを見ると、そっと目をそらされる。おばちゃんのチラチラにタイミングを合わせてこちらも目を合わせた。にらみ合いが続く。
(絶対に抜かさせやしない。後ろのみんな、大丈夫だからここは任せろ。)
おばちゃんは列の動きに合わせてジリジリと前へ進んでいく。ついに次が自分の番だ。違和感のない程度に前の人とおばちゃんの間に僕のパーソナルスペースをねじ込む。
再びにらみ合い勃発。おどりゃこのバ◯ア、ヤポンスキー舐めてんじゃねーと僕は心の中で大声で叫んだ。
そして僕の番。もしおばちゃんが先に行こうもんなら肩を叩き抗議するつもりでいた。後ろのみんなのためにも、後にヌクスを訪れるヤポンスキー達のためにも。
「あなたの番でしょ?」
勝った。完全勝利だ。僕は無言の圧力(おばちゃんが怖くて何も言えなかった)で横入りを防いだ。
しかし窓口の人に英語が微妙に通じず、アタフタしていると、そのおばちゃんが手伝ってくれて無事に買うことができた。ありがとう、おばちゃん。ごめんなさい、おばちゃん。
そしておばちゃんは僕の次に割り込んでいた。

せんまさお

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