昨晩、ベルギー人のアンが部屋にやってきた。
「ベルギーを知っている人にこの国で初めて会ったわ!ありがとう!」
ベルギーワッフルしか知らないなんて言えない。
一緒に朝食を食べるが、ヴィーガンらしくいくつか食べられないものがあるらしい。この宿はやたらと朝食が豪華で、食べきったが苦しくて動く気になれない。
ブハラは二重の城壁で囲まれた街で、主要なスポットは内側の城壁の中に集まっている。宿はその門から歩いて1分ほどの好立地だ。
まだ10時も来ていないが、団体の観光客がズラズラと押し寄せてきているのが見える。
14世紀には旅行記で有名なアラブの旅行家イブン・バットゥータが訪れたこの街。
今は世界地図、いやGoogleマップで地球上全部見ようと思えば見れるけど、1km先でさえ何があるか分からない時代の旅、想像するだけでワクワクする。
モスクやミナレットをひとしきり回る。狭い範囲に観光スポットや博物館が点々とあり、歩いている限りずっと面白い。この街自体が博物館都市として世界遺産なのも納得だ。
しかしその分観光客もギッシリ詰まっているので、イタリア人の老人グループに圧倒されてゆっくりも見ていられない。
歩き回って疲れたので宿に戻ると、丁度アンも疲れて戻ってきた。ベルギーについて質問してみると、嬉々として教えてくれる。
「チョコレートよ、チョコレートの博物館があるの」
それは行ってみたいなぁ。ウンパルンパ見たいなぁ。
僕はベルギー人のミュージシャンを一人だけ知っていたので有名なのか聞いてみた。
「その人は知らないわ。きっとオランダ語圏の人なんでしょうね。ベルギーは大きく分けてフランス語圏とオランダ語圏があるの。私はフランス語圏に住んでて、オランダ語圏とは全く異なる文化を持っているの。」
島国育ちなのでピンとこないが、確かにあんだけ陸続きならどっかで言葉が変わるラインがあるんだろう。それにしても文化まで異なるっていうのは面白いな。
僕は禁断の質問をした。
「ベルギーワッフルってベルギーにあるの?」
僕は天津に天津飯ない事件で日本の飲食業界の闇を知った。ベルギーに行く前に念のため聞いておきたかった。
「あるけど、きっとあなたが想像しているのとは違うわよ。ベルギーに来たら連絡して。食べに行きましょう。大丈夫、ベルギーは狭いからどこでも駆けつけるわ。」
期待高まる。
僕は手持ちのお金がなかったので両替に行った。というのも、ウズベキスタンのATMはことごとく僕のカードを受け付けてくれないのだ。
「すいません、大きい額面のお札がなくて」
銀行員はそう言うと、180枚程度の札束を手渡してきた。現在100ドル=900,000スム程度のレートで、全て5,000スム札で渡されたのだ。
一応50,000スム札を見たことがあるが、5,000スム札が最も流通している大きい額面のお札で、その昔は5,000スム札が最高額面のお札だったらしい。
輪ゴムをくれたのでそれで留め、カバンの底に詰め込んだ。
帰り道にもう一度遺跡に立ち寄った。
日が暮れかけていたので、城壁に登って眺めることにした。
しかし城壁なので当たり前だが外が見えない。たぶん鉄砲とか出す用の穴から覗き込んで夕陽を眺める。
なんだか太陽がデカイ気がする。沈むにつれ、太陽が地平線にへばりつくように溶けていくように見える。蜃気楼的なやつかな。
沈む夕陽を眺めていると寂しくなってきた。僕はなんだかまだ別れに落ち込んでいる。
全てのことにはコインのように表裏がある。良い面があれば悪い面も必ずある。出会いがあれば、その分別れもある。別れがあれば出会いもあるんだろうけど。
一人で旅していると良い出会いに触れるチャンスが増える。逆に複数でいると出会えるもんも出会えなかったりする。
太陽が全て沈んだ。振り返ると、きれいな満月が昇っていた。
せんまさお
最新記事 by せんまさお (全て見る)
- 【世界一周#411】アレナメヒコ - 2024年9月22日
- 【世界一周#411】アレナメヒコ - 2024年9月22日
- 【世界一周#410】グアダルーペの聖母マリア - 2024年9月21日
コメントを残す