パンダ研究所があるらしい。動物園に行こうと思っていたが、パンダ研究所の方がそそる。
パンダ研究所へはパンダ駅からパンダバスに乗っていくらしい。パンダ駅にあるパンダセンターでチケットを買いパンダバスへ乗った。
パンダ研究所の入り口はパンダをモチーフにしているようだ。その前にはパンダのモニュメントが置かれている。
パンダ研究所に入ると、パンダ弁当のポスターが貼ってあった。
入り口近くにパンダミュージアムがあったので入ってみた。すると、パンダの骨や、内臓のホルマリン漬けが展示してあった。ちなみにここまでまだ実物のパンダは見ていない。
しばらく進むとパンダがいた。かわいい。
騒ぐなと注意書きがしてあるのに、中国人は手をパンパン叩いて寝ているパンダを起こそうとしている。タダでさえ騒がしいのに酷い。
フラッシュ焚くなと書いてあるのにフラッシュを焚く。酷い。パンダがかわいそう。
パンダはかわいい。仮にパンダの目の周りの黒い部分が垂れずにつり上がっていたり、丸い耳が細長く尖っていたら、ここまでの人気は出なかっただろう。
とか考えていたら驚きの事実に気づいた。パンダの尻尾は黒いもんだと思っていたが、実物は白い上になんか平べったい。黒くて丸い小さいやつが生えているもんだと思っていたが、勝手な想像だったようだ。パンダのぬいぐるみとか尻尾は黒くないっけ?
木にひっかかって寝ているパンダ。竹を食べるパンダ。じゃれ合うパンダ。どのパンダもいい。なんならウンコも丸くてかわいい。
パンダの赤ちゃんが育てられている研究所へ行く。保育器の中で寝ているパンダの赤ちゃん。まだちゃんと毛が生えていないパンダの赤ちゃん。これはまだかわいくない。
パンダの生態について詳しく説明が書いてある。いつも通りなら翻訳サイトを使っただけのような滅茶苦茶な日本語が書かれているのだが、珍しく正しい日本語が載っている。
日本はパンダを中国からレンタルしており、そのレンタル費用はパンダの研究や保護などに使われているらしいので、そのお陰かもしれない。日本にいる全てのパンダはレンタル中という位置付けなのだ。(レンタル代は破茶滅茶に高い)
どうやらパンダは中国のごく限られた地域にしか住んでいないらしい。前に会った中国人が、「なんでパンダが中国を代表する動物なのか分からない」と言っていたのはそういう理由からだろう。知らんけど。
野生のパンダは中国のガチの対策で増えているらしい。かつては絶滅危惧種に指定されていたが、保護活動の甲斐があって危急種というレベルまで一段階引き下げられたらしい。というか野生のパンダがまだいたことに驚く。
パンダの交尾の映像が流れている。その映像には、その交尾を撮影しているスタッフが写り込んでいるのだが、スマホで撮影している。さらにその映像を観光客は撮影している。珍しく静かな中国人観光客のせいで交尾中のパンダの鳴き声が館内に響き渡る。
パンダは交尾にうってつけの日が年に3日しかないらしい。さらに普段は群を作らずバラバラに行動している上、元々は肉食なので、身体が草食に適していないから、エネルギーの消耗を減らすために食べまくって寝まくらないといけないらしい。もうなんなん、増える気ないやん。
館内にはもはや場違いに思えるレッサーパンダのコーナーがあった。レッサーパンダとのツーショットに勤しむ女性以外は人がおらず、ガランとしていた。
ちなみに、かつてはパンダといえばレッサーパンダのことを指していたらしい。ジャイアントパンダの発見以降、パンダといえばジャイアントパンダになったのだ。そのため、比較して小さいので、Lesser Pandaと名付けられた。そして実はレッサーパンダはパンダよりレベルが高い絶滅危惧種。もうほんとに不憫。
今日は一生分パンダを見た。もうお腹いっぱい。パンパンだ。
帰り道に関羽、劉備とか中国史の有名人を祀った寺院に寄ったが、そもそも三国志を読んだことがないのでちょっとよく分からなかった。勿体無いことをした。
寺の近くの出店で日本では龍の髭飴と呼ばれている飴を伸ばしまくって糸より細くして束ねたお菓子を買った。日本なら高いが、こちらなら10元(160円程度)とお手頃。口の中で解けてホジャホジャして気持ち悪い。綿菓子の方がおいしい。
駅で明日の電車のチケットを発券し、宿までレンタサイクルで帰っていると、「すき家」を見つけた。
僕は急ブレーキをかけ、食い入るように店頭のメニューを見た。
(高菜明太マヨ牛丼、高菜明太マヨ牛丼、高菜明太マヨ牛丼)
僕がこの世で一番好きな食べ物、すき家の高菜明太マヨ牛丼がない。自転車を置き、もう一度上から下までくまなく探す。しかしないものはない。
悔しいが高菜明太マヨ牛丼を諦めて帰ろうとしたら、店員さんが飛び出してきて僕を呼び込む。こんなにすき家サイドから引っ張られたのは初めてだ。よし入ろう。
店内のメニューで高菜明太マヨ牛丼を探すがやはりない。しかし、牛丼、味噌汁、サンマ、キムチのセットがあった。30元(480円程度)と少し高いが、牛丼が、味噌汁が、サンマが、キムチが食べられるなら安いもんだ。僕は威風堂々とオーダーした。
「ラッシャーセー」
海外の日本料理屋あるあるでなんか崩れた「いらっしゃいませ」がそのまま使われている。
いつサンマ焼いたん?と疑問が浮かぶが、ここ中国でも待った感覚なく一瞬で料理が出てきた。ジャパニーズスタンダード最高や。
全ての料理を噛み締め、味わい、喉でさえその食べ物を感じながら飲み込む。なんとなくモンゴルの草原が瞳に浮かび、この贅沢に罪悪感を覚えるが、それさえスパイス(醤油)になって味を昇華させる。
そうか、この牛も生きてたんやなぁとなんか初めて実感したような気持ちになった。さすがに家畜さんに少し同情するが、もう割り切ってこれからも遠慮なくおいしく頂きます。そういえばサンマもそうか。
パンダ、牛丼のお陰で、凄まじい満足感を抱えて宿に戻る。同室にいた中国人と話す。彼は英語ペラペーラだ。5歳から勉強していたらしい。
どうやら大学を中退して地元のこの街に戻ってきたところらしい。
「中国なんて嫌いだ。大学なんて、国が俺たちを洗脳する場所でしかない。気持ち悪いから辞めてやったよ。」
ボロクソ言っている。
「北京なんか最悪だよ。あんなの中国じゃない、見かけだけ綺麗にして変だ。そう思わない?そう思わなかった?」
なんというか、そんなボロクソな話に同意するのも失礼な気がするが、正直な話、中国の都会の街並みに、広州と上海を除いて違和感を覚えていたのは事実だ。街の発展とインフラの釣り合いがとれていない気がしていたからだ。
これは勝手な想像だが、恐らくオリンピックやらなんやらで急ピッチでインフラ整備を進めた結果、街の発展とともにインフラを構築していったような広州や上海といった大都会よりも、小さな地方都市の方に綺麗に整ったインフラがあったりする。リアルじゃない感はハンパじゃない。
「インターネットの制限を知ってるだろ?あれは国民を洗脳するためなんだ。海外の情報を国民に知られたくないんだ。だから海外で働く中国人が帰ってきて、いかに他の国が素晴らしかったって話をしても誰も信じないんだ。」
「みんな中国が好きって言うんだ。信じられないよ。なんで好きなのか聞いたら、安全だから、って言うんだよ。君も知ってるだろうけど、チベットやウイグルの事件を知ってるだろう?それのどこが安全な国なんだ?」
驚いた。みんなVPNという海外サーバーを経由する仕組みを使ってネットの閲覧規制を回避している(一応違法)ので、規制にはあんまり効果がないと思っていたが、そもそも中国国内の監視が厳しいから発信自体が難しいのだろう。
彼になら怒られないだろうと思って気になっていたことを聞いてみた。中国旅における僕のストレスの一番の原因、「なぜ列を作らないのか」だ。
「ちゃんとした教育を受けていないからだ。道路にゴミを捨てるのも、うるさいのも、教育のレベルが低いからだ。」
この教育が何を指すのか聞き忘れたので分からないが、彼は学校教育を否定しているので、恐らく家庭教育のことだと思う。
まあ確かに知らなかったら列は作りようがないよな。その証拠に、少なくとも中国国外で知り合った僕の友達の中国人達は、列にも並ぶし、決して騒がしくなく、ゴミのポイ捨てもしない。つまり少なくとも、国外にもアンテナが向いている人は、いわゆるマナーみたいなものを知っているし、それを守っている。たぶん日本人がラーメンズルズルすすって、鼻水もズルズルすすってキモいみたいな話と同じようなかんじなんだろう。
政府もマナー向上を目指して、あちこちに「騒ぐな」「ポイ捨てするな」「唾吐くな」などと張り紙している。列については、駅や観光地の切符売り場などに金属の柵で通路が作られており、列を強制的に作らされるようになっている。(逆走する人が少なくないので結局あんまり機能していない)
つまりは政府的にも国民のマナー向上を目指しているのだろう。街中でもやたら「文明」という文字を見る。男子トイレにも、「あなたの一歩は小さいけれど、文明にとっては大きな一歩だ」みたいなことが書いてある。たぶん本当に知らないだけなんだろう。
列を作ることのメリットを知らないから、列を作らないんだ。なるほど、納得した気がする。ただ、こんだけ国から言われてるんなら少しは守った方がいい気がするが、それはルールにやたら厳しい日本人の感想なんだろう。僕の友達の中国人も、「ルールを変えるのが中国人だ」と言っていたし、ルールがあるなら無意識に従ってしまう日本人とは価値観が違いそうだ。
念のため誤解がないように言っておくが、中国人にストレスを感じているのではなくて、列を作らないことに強いストレスを感じているのだ。油断すると抜かされるし、ふとした瞬間に崩れ去る列に並んでいたことの虚しさみたいなのに日々ふれていると結構しんどいのだ。ゴミがその辺に転がっているのとか、騒がしいのとかは、旅行でお邪魔している側なので個人的には我慢できるが、列を抜かされたらブチ切れそうになる日々を送っている。
ともかく、自国を批判的に見られる人の話は興味深い。日本にはやたら日本に批判的な人が多い気がしてそれはそれで問題な気もするが。
成都に来た目的はパンダと九寨溝だったが、九寨溝に行けない今、もう成都を出ることにした。ホテルはやたら居心地がいいし、街に出ればご飯も特別美味しかっただけに名残惜しい。
シルクロードから少し外れてしまったのかな。次は蘭州。そう、あの蘭州ラーメンの本場。
せんまさお
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