朝ごはんが付いている。しかもバイキング方式なので昼ごはん分まで食べることにした。
はちみつがある。ハッピハッピーだ。小皿にハチミツをたんまりと取る。なんだかハチミツのかんじがやけに粘っこい。
食べてみると、水飴にハチミツの風味を付けたフェイクだった。まあこの値段の宿ならそりゃそうか。バターなのかバター風マーガリンなのか分からないが、たっぷりとナンに塗りつけて水飴ハチミツを絡めて食べた。
さて街歩きをしようか、と外に出たのは正午。食べ過ぎて動けなくなっていたからだ。
「タクシー、ヘイ、ミスター、タクシー」
タクシーの客引きは問答無用で断るのだが、なんだか今日に限ってドライバーと話したくなっていた。
「ピンクレイク行かない?」
明日行こうと思っていたところだ。
「ペルセポリス行かない?」
おお、ここも明日行こうと思っていたところだ。どちらも郊外にあるので、タクシーをチャーターして行こうとしていた。念のため値段を聞く。
「14ユーロ(1,625円程度)でどう?」
実は事前にタクシー配車アプリで相場を調べていた。しかし、観光中の待機時間を含めるとより高くなることは分かっていた。
待ち時間を考慮しない相場は1,250,000リアル(1,250円程度)。待ち時間を考えると、おじさんの言う値段は妥当な気もする。
僕は言った。明日行くから電話番号教えてください。
「明日は他のお客さんの予約があるからダメなんだ」
じゃあ今日行くから値下げしてください、と伝えた。いくらにして欲しいか、と言うので1,000,000リアル(1,000円程度)にして欲しいと伝えた。
おじさんは顔をしかめて悩んでいる。えっ、悩めるレベルなの、と逆に驚く。安すぎる値段を先に伝え、そこからお互いの着地点を決めるのが値段交渉のセオリーだから、その安すぎる値段を伝えたつもりだった。
どうやら決めかねているようで、僕は押しに押す。オッケーだよね、オッケーだよね、と。
オッケーが出た。ラッキーなことに想定より安く行けることになった。
どうやら普段は宿からの紹介でツアー客を乗せているらしいが、今日は予約が一件もなかったらしい。誰も乗せないより、安くても乗せた方がいいという判断か。
フセインさんと言うらしい。ほら、覚えやすいだろう?と聞かれる。まあね。
「普段はこの2箇所のツアーなら、宿を通すと22ユーロ(2,555円程度)で、僕の取り分は15ユーロ(1,740円程度)、7ユーロ(815円程度)は宿の取り分になるんだ。」
驚きのマージンだ。というか、最初からおじさんの取り分以下の値段で言ってくれていたんだ。申し訳ない。
1時間少々でピンクレイクに着いた。すごい、本当にピンクだ。
まずはひと舐め。ペロリ。少し塩っぱい。
このピンクレイク、塩湖らしく、ほとりにはパリパリになった塩が結晶を作っている。もうひと舐め、ペロリ。
よく見ると赤いプランクトンが泳いでいる。こいつらの死骸でピンクになっているのかな。なんでピンクになっているのかは実は不明らしい。
最後にその辺の塩をかじる。塩っぱいけど、伯方の塩の方が塩っぱい。なんでだろう。
近くではブルドーザーで塩をトラックに乗せている現場があった。ブルドーザーも錆びそう。
フセインさんは車をビュンビュン飛ばす。シートベルトをするドライバーなんて久しぶりに見た。どうやらイランでもタクシーは助手席に乗るのがマナーのようで、助手席の僕もシートベルトを締める。どこの国でも念のためしてるんだけどね。
2時間弱でペルセポリスに到着。ダレイオス1世が作ったアケメネス朝ペルシア時代の都。紀元前520年に建設が始まったらしい。そして紀元前331年にアレクサンドロス大王が破壊して以降、ずっと廃墟になっていたらしい。
アレクサンドロス大王、なんて悪いやつなんだ。いいウワサ聞かないぞ。
それにしても、アケメネス朝とかダレイオス1世とか世界史で勉強したような気がするけど全く覚えてない。懐かしすぎるだろ。というかそこに僕は今いるんだ。不思議なかんじ。
灼熱の遺跡を歩き回る。よくもまあ2000年以上もほったらかしておいてこんなに綺麗に残ってたもんだ。もちろん修復してるけど、きっと乾燥してるのが劣化を防いだんだろう。
遺跡が見渡せる高台に登ってきた。干からびて死にそうだ。
壮大だ。遺跡を見るたびに思うが、街って昔はこんなに狭かったんだ。産業革命を境に人口が爆発的に増えたとは言うが、今は歴史的に見たら異常なほど人がいるという事がこの遺跡を見るとよく分かる。
しかも人間は増えれば増えるほど知識の質が高まるから、食糧問題とか無視したら増加率は増える一方だ。ほんと今後どうなるんだろう。虫とか食べないといけなくなるのか?
遺跡入り口の売店でコーラを一気に飲む。ドライバーを待たせてしまったので彼の分のコーラも買っていく。
街へ戻る。トータル5時間弱の個人ツアー。やっぱり安いなぁ、と申し訳なく思ったが、ここはコーラで勘弁してもらおう。ありがとう。
宿で一休みし、夕飯を食べに行く。美味しそうな匂いのする方へ向かう。どうやらチキンケバブ屋さんのようだ。
二本の串とナンとコーラを注文。注文と同時におじちゃんが炭で焼く。ものの数分で焼けたチキンが出てきた。ほんとに焼けてるのか心配。
ちょっとピンクっぽいが、最高の焼き具合!プリプリでうますぎる。焼き鳥屋で食べる焼き鳥はとんでとなく美味しいが、ここイランにもチキンケバブ職人のおじちゃんはいた。
おじちゃんはおもむろにビニール袋から謎の葉っぱを取り出し、チキンとナンが乗った皿に盛る。一緒に食べろ、というジェスチャーをしている。
なんだか爽やかな風味がする。なんだろこれ、バジル?こんな生で食べた事ないから分からないけど、肉の味付けとのマッチ具合がすごい。
隣の席のおじさんをお手本に、フォークを置き、手づかみでチキンを食べ、枝を掴んで葉っぱをムシャムシャ食べる。うまい、うますぎる。コーラで流し込む。口に入れたもの全てが渇いた身体に染み込んでいく。
これは僕の分析だが、日本以外で食べるならチキンが一番おいしい。日本の牛肉(国産、輸入問わず)は日本人好みの柔らかくて甘い肉質に改良されているが、海外で食べる牛肉はめっちゃ美味しいと感じたことがない。高級店にも行ってみたが、高くてもマジでそんなに美味しいわけじゃない。
その点、チキンならどの国でも外れを引いたことは少ない。おそらく、チキンにかける情熱のレベルが日本とは異なる。庶民の肉だからこそ、料理が進化しているのだ。日本の唐揚げは世界一おいしいと思うけどね。
おじちゃんに礼を言い、バザールを通って宿に戻った。中庭でチャイを飲み、物思いにふける。今日も祭は続いているようで、太鼓の音が心地よい。
中庭ではカップルが喧嘩中。早く仲直りできたらいいね。
せんまさお
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