【世界一周#174】ひとりの夜

この宿には朝食がついており、9時過ぎになるとスタッフが声をかけてくれる。そしてそれまで寝てしまう。

今日の朝食はズッキーニの天ぷらと、昨晩のうどんのつゆを使ったKンジ君特製の味噌汁。うまい。

朝食後からKンジ君は出発の準備を始めた。再び過酷な自転車旅が始まる。どこからそのパワーが湧いてくるんだろう。

ソンクル湖という場所でホースフェスティバルというものが開かれるらしく、標高3000mのその湖まで自転車で向かうらしい。

昼前頃、Kンジ君は僕と宿のスタッフに見送られて出発した。

そして気がつけば他の宿泊者も全員チェックアウトしており、宿には僕一人だけになった。

(誰か来たらフルーツを一緒に食べよう)

僕はオシュバザールというビシュケクで一番大きなマーケットに向かった。

今まで見てきたような東南アジア間溢れるマーケットと違い、どことなくオシャレな雰囲気がある。マーケットからライフスタイルの違いが垣間見える。

そして何より特徴的なのがナン。イメージするあのインド料理屋のナンと異なり、中央アジアのナンはフリスビーみたいな形をしており、中央が窪んだパンのようなものだ。陽に照らされてカチカチになっている。

試しに一つ買ったが、20ソム(32円程度)にもかかわらず、ズッシリと重い。見た目は似ているが、値段がまちまちのナンが売られている。有名店のものだと高いとかあるんだろうか。

10ソム(16円程度)を握りしめ、10ソム分だけくださいとフルーツ屋さんを回る。相場が分からないし、カゴに盛られたフルーツは量が多すぎるので、金額を指定して買う。

稀に金額が少なすぎると拒否されることもあったが、サクランボやスモモ、謎のベリーを買い、トータルで30ソム(48円)で一皿が埋まるほどのフルーツを買い揃えることができた。

宿に帰ってはきたがやることがない。そして誰もいない。近所にポストカードを買いに行ったが、暑さで書く気すら失せてしまった。

そのまま夜まで部屋で過ごし、バザールで買ったナンとミルクを夕飯にする。

ナンは焼いてから日数が経っていたのか、カチカチで歯が折れそうだが、それなりにおいしい。ミルクはモンゴルで飲んだヤクのミルクのように、やや臭みがある。しかし不思議なことに組み合わせるとベストマッチだ。

料理は食材の産地で食べるのが一番美味しいというが、こういう食べ合わせも関係しているのかもしれない。

日が暮れた頃、ふと買ってきたフルーツのことを思い出した。洗って冷蔵庫にしまってある。僕はそれをそっと取り出し、部屋の外のベンチでモソモソと一人で食べた。

サクランボの種をこっそり庭に埋めようか。

ひとりの夜。

The following two tabs change content below.
せんまさお

せんまさお

シャイな僕が世界一周の旅へ。諸事情により緊急でお金が必要だったので一部上場企業のキーエンスへ就職。27歳で退職し、夢だった世界一周をすることに。やりたいことを全部やっている最中です。まずは死なずに帰ってきます。皆が憧れる世界一周だと思いますが、良いところも悪いところも全てそのままお伝えして、一緒に旅している感覚になっていただければ嬉しいです。座右の銘はPLUS ULTRA。「もっと向こうへ」という意味です。好奇心の赴くままにもっと向こうへ行ってきます。好きなコーラはコカ・コーラ。スカッとさわやかコカ・コーラ。LOVE&PEACE。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

ABOUTこの記事をかいた人

せんまさお

シャイな僕が世界一周の旅へ。諸事情により緊急でお金が必要だったので一部上場企業のキーエンスへ就職。27歳で退職し、夢だった世界一周をすることに。やりたいことを全部やっている最中です。まずは死なずに帰ってきます。皆が憧れる世界一周だと思いますが、良いところも悪いところも全てそのままお伝えして、一緒に旅している感覚になっていただければ嬉しいです。座右の銘はPLUS ULTRA。「もっと向こうへ」という意味です。好奇心の赴くままにもっと向こうへ行ってきます。好きなコーラはコカ・コーラ。スカッとさわやかコカ・コーラ。LOVE&PEACE。