この宿には朝食がついており、9時過ぎになるとスタッフが声をかけてくれる。そしてそれまで寝てしまう。
今日の朝食はズッキーニの天ぷらと、昨晩のうどんのつゆを使ったKンジ君特製の味噌汁。うまい。
朝食後からKンジ君は出発の準備を始めた。再び過酷な自転車旅が始まる。どこからそのパワーが湧いてくるんだろう。
ソンクル湖という場所でホースフェスティバルというものが開かれるらしく、標高3000mのその湖まで自転車で向かうらしい。
昼前頃、Kンジ君は僕と宿のスタッフに見送られて出発した。
そして気がつけば他の宿泊者も全員チェックアウトしており、宿には僕一人だけになった。
(誰か来たらフルーツを一緒に食べよう)
僕はオシュバザールというビシュケクで一番大きなマーケットに向かった。
今まで見てきたような東南アジア間溢れるマーケットと違い、どことなくオシャレな雰囲気がある。マーケットからライフスタイルの違いが垣間見える。
そして何より特徴的なのがナン。イメージするあのインド料理屋のナンと異なり、中央アジアのナンはフリスビーみたいな形をしており、中央が窪んだパンのようなものだ。陽に照らされてカチカチになっている。
試しに一つ買ったが、20ソム(32円程度)にもかかわらず、ズッシリと重い。見た目は似ているが、値段がまちまちのナンが売られている。有名店のものだと高いとかあるんだろうか。
10ソム(16円程度)を握りしめ、10ソム分だけくださいとフルーツ屋さんを回る。相場が分からないし、カゴに盛られたフルーツは量が多すぎるので、金額を指定して買う。
稀に金額が少なすぎると拒否されることもあったが、サクランボやスモモ、謎のベリーを買い、トータルで30ソム(48円)で一皿が埋まるほどのフルーツを買い揃えることができた。
宿に帰ってはきたがやることがない。そして誰もいない。近所にポストカードを買いに行ったが、暑さで書く気すら失せてしまった。
そのまま夜まで部屋で過ごし、バザールで買ったナンとミルクを夕飯にする。
ナンは焼いてから日数が経っていたのか、カチカチで歯が折れそうだが、それなりにおいしい。ミルクはモンゴルで飲んだヤクのミルクのように、やや臭みがある。しかし不思議なことに組み合わせるとベストマッチだ。
料理は食材の産地で食べるのが一番美味しいというが、こういう食べ合わせも関係しているのかもしれない。
日が暮れた頃、ふと買ってきたフルーツのことを思い出した。洗って冷蔵庫にしまってある。僕はそれをそっと取り出し、部屋の外のベンチでモソモソと一人で食べた。
サクランボの種をこっそり庭に埋めようか。
ひとりの夜。
せんまさお
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