目が覚めたら9時。ようやく時差ボケが治ってきたと思っていたが、治ってきたどころかちょっと進みすぎだ。
ハバナで特にやることもなく、ブラブラと歩いていた。
もう何人と握手したか分からない。僕は丁寧に詐欺師に対応するので、いちいち時間がかかる。最後は握手かハグ、ハイタッチで締めるのが後腐れない。僕の右手はベタベタになっていた。
中にはもちろんただ親切な人もいる。ただ雑談をして、別れるだけ。それだけでもおもしろい。詐欺師だって、ちょっと話し込むと、普通の会話だってできる。それこそがおもしろい瞬間だ。
「最近は日本人があんまり来ないんだ。せっかく日本語を勉強したのに使うことがないから忘れてきたよ。」
詐欺師の悩みも深刻である。彼はコロナが流行中の3年前に、空いた時間を使って日本語を勉強したらしい。努力も実らず、コロナ後は日本人がめっきり減ってしまったようだ。
「そうだ、葉巻買わないか?」
いらないと伝えると、すこし寂しそうな顔をして、「サヨナラ、アリガトウ」と手を振ってくれた。
革命博物館へ行ってみたら、改修中で入ることができなかった。しょうがなく、隣にあった屋外展示だけを見る。革命時に使われた車両や航空機が展示してある。それを兵士たちが警備していた。
見学していると、1人の兵士が近づいてきた。
(うっ、殺される!)
諦めかけたその時、兵士は小さく折りたたんだ手紙を渡してきた。
「お金がないので、家族を養えません。お金ください。」
僕はそっと断った。国を守る兵士にしては情けないが、給料も安いんだろう。僕に金をせびる兵士はとても弱々しく見えた。
僕は明日にはこの国を出る。キューバのお金がまだ余っていた。キューバといえば、モヒート、葉巻、野球らへんのイメージがあるだろうが、僕はとにかくロブスターが食べたかった。
バラデロにいた時にはケチって食べなかったが、今日こそ時が来たのである。
手持ちは3000ペソ(約1500円)。念のために1000ペソは夜まで持っておきたかったので、2000ペソ(約1000円)以内でロブスターを食べられるお店を探していたら、ちょうど2000ペソで食べられるお店を発見!
「本当にロブスターが2000ペソなんですか?ご飯もセットですか?僕2000ペソしか持ってないから2000ペソなら食べたいんですけど?」
と怒涛の2000ペソアピールをしてボッタクリを防ぎつつオーダー。
出てきたのは、キューバに来て以来、最も素晴らしい料理。ああ、キューバでもお金を出せばこんなに美味しい料理を食べることができるんだ。
少し何かがジャリジャリするが、素晴らしい味である。最高なのである。ロブスターなのである。
「ドリンクは?」
僕は2000ペソしか持ってないからいらないです、と伝えてロブスタープレート的なやつを平らげた。
本当はあと1000ペソ持っているので、店を出てからその辺の店でコーラを買う。いつものサンタ・コーラだ。
身体の芯から溢れ出る快感物質で脳みそが溶けてロブスターの味噌に入れ替わりそうだ。
陽気になった僕は、街の詐欺師たちと朗らかに話し、そして丁寧に断ってホテルに帰ってきた。
この国はおもしろい。でも二度と来ないと思う。良い意味なのか悪い意味なのか分からないが、とにかくいつかこの国が変わってしまう時が来たら、その時はとても興味がある。この国の未来に興味がある。
せんまさお
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