6:30アテネ着。少し遅れたみたい。船を降りると、あたりはもう明るくなっていた。

歩いて地下鉄へ。券売機があるがなぜかガラガラで、窓口に列ができていたので僕もそっちに並んだ。
窓口で市内へのチケットを買い乗車。一度乗り換えて宿へ。しかしまだ8:00くらい。眠たすぎるがチェックイン時間までは時間がある。
まだチェックインには早すぎますよね?と早く寝たい意思を込めて当たり前のことを聞く。
まだ早いです、と言われたので、荷物だけその辺に置かせてくださいと伝えた。
「まあ、正直、ベッド空いてるからもう使っていいけどね」
よっしゃ、寝れる。すぐさまコーヒーを淹れてパンを胃に流し込んで寝た。
昼頃に起き、街へ出掛けた。アテネといえばパルテノン神殿。歩いて向かう。
チケット売り場は長蛇の列。一旦諦め、隣の博物館に行くことにした。
突然、鞄と身体の間に花が差し込まれる。振り向くと花束を抱えた女性がいた。
いらないと言うと、無料だから、と言われる。いらないと言うと、今日はお祭りだからそれをパルテノン神殿に供えてと言われる。いらないと言うと、1ユーロ(130円程度)くれと言われる。いらないと言うと、ごめんなさいと言われた。
これなんやかんや1ユーロで買うやつだな。周りを見ると、チラホラと花を配っている人が見えるが、みんなそれを避けて歩いている。よく見ると外国人観光客っぽい人にばかり声をかけている。そもそも祭りも嘘だろう。
なんか久しぶりにこういう押し付け系のやつに会った気がする。よくあるのが鳩の餌を勝手に手に持たせてくるとか鞄に乗せてくるとかだけど、お金払っちゃった人にたまに会うから信じられない。なんで勝手にやってきたことの相手をしなければならないんだろう。
しかも騙されたならしょうがないけど、悪質だと明らかに分かることにお金を払うのは悪を助長することになる。悪いことをした方が儲かるだなんて広まったらそれはお金を払った人の責任とも言える。
賛否両論あるだろうけど、お金がないから悪いことをしても良いという訳ではないと思う。それじゃあ真面目に生きてる人が馬鹿らしいじゃないですか。
ギリシャの財政破綻は記憶に新しい。2009年の政権交代の際、前政権が赤字を隠蔽していたことが発覚。EU加盟条件を満たすためだったらしい。
そうしてIMFから緊縮財政を条件に13兆円も借り入れて公務員の削減や増税に取り組んでいたけど暴力的なデモが相次ぎ、2015年の国民投票で緊縮財政に反対の声が過半数を占めたらしい。そしてIMFへの返済は滞りデフォルトした。
有名な話が、過去、平均的なギリシャ人は午前中しか働かず、1/4が公務員で民間の1.5倍の給与を貰っていたこと。働きもせず、文句を言い、借りたお金を返さないってすごいよね。働かないことに関しては、失業率が25%まで増加したこともあるからなんとも言えないけど。
という経緯でギリシャは現在貧乏な国なのだ。特にアテネの街の薄暗い感じは公共の福祉が上手くいっていない感を物語っている。道路はヒビ割れ、横断歩道は黒ずみ、壁は落書きだらけ。空きテナントが目立ち、浮浪者があちこちに居る。
イメージしていた輝かしいヨーロッパとは程遠い灰色な街に見える。
このパルテノン神殿周辺でさえ、風俗店が立ち並び、道路脇のゴミ箱は悪臭を放つほど腐敗物が溜まっている。
過去にいくらかけて作ったのか分からないほど豪華な博物館へ。大層立派な施設だが、その目の前で貧困に苦しむ人が悪さを働いているなんて皮肉でしかない。















展示物に罪はないのでゆっくり見て回った。
再び花の女性達を避けつつパルテノン神殿へ。列は短くなっていた。
「ヨーロッパはここから始まった」
とチケット売り場の横に書いてある。そうなんだ。
パルテノン神殿は山の上に建っている。途中、古代の劇場があった。席に座ってみる。超昔に誰か座っていた席に座るのは変な気分だ。


たまに山の中とか変な場所を歩いていて、「多分人間でこの場所を歩いたのは自分が初めてだなフフフ」とか考えることがあるけど、逆にきっとこの場所には世界トップクラスで多くの人が座ってきたんだろう。
そしてついにパルテノン神殿。ああ、いつか来るんだろうと思っていたけどアッサリ来てしまった。

残念なことに修復中のようで、鉄の足場が組まれている。

神殿は思ったより大きかった。よく山の上にこんなでかいものつくったな。意思を積み重ねて作ってあるけど、一体どうやって作ったんだ?

憧れというわけではなかったけど、あまりに有名なものなのでもったいなくてしばらく四方から眺めていた。






宿に戻り、郵便局へ向かった。日が暮れるのが早く、なんだか雰囲気の悪い街なので慌てながら向かった。宿から非常に遠く、早歩きで30分もかかった。

窓口は非常に愛想が良かった。ふと見ると、窓口職員の手が震えていた。郊外の郵便局なので、恐らくあんまり外国人は来ないんだろう。ましてや東アジア人なんて特に。
恐らく緊張しているんだろう。それでも一生懸命相手をしてくれた。本当に嬉しい。
稀に愛想の悪い窓口の人もいるが、もしかしたら緊張してるだけの人もいたのかもしれない。そう思えばこちらも気が楽だ。
僕が就活の面接のときに意識していたことがある。それは面接官の緊張をほぐすことだ。相手も面接専門の社員というわけではないだろうから、特に若い人相手だと、場の空気をほぐしてから面接に挑むようにしていた。それが功を奏したのかどうかは分からないが、お互い気持ちよく話すには緊張は不要だろう。旅での出会いもそうだ。
第六感というのかそういうのが人には備わっているんだろう。こちらが緊張や警戒していると話かられることはあまりない。逆に陽気に歩いているとよく話しかけられる。つまりはそういうもんだと思う。
郵便局の窓口でも少し冗談を言って話していたら、職員の手の震えは止まり、和やかに別れることができた。
しかし帰り道は暗い。高架下を通るが人とすれ違いたくない。
橋の上に差し掛かったとき、道の脇にミニチュアの教会がいくつか置いてあった。もしやと思ってじっくり見てみると、やはり亡くなった方の慰霊碑的なものだった。日本のお地蔵様みたいなポジションのものだろう。
事故だろうか、亡くなった方の写真、名前、年齢が貼りつけられており、花が供えられていた。なんか悲しくなってきた。キリスト教も同じなんだな。
無事に宿に戻ってベッドでゴロゴロしていると日本語が聞こえてきた。
同じ部屋に日本人のRョウ君がいた。ロビーで話していると、ニュージーランド人カップルがやってきた。
少し話していると、「日本のお城が火災にあったらしいね」とのこと。
首里城のことだろうな。よく知ってるね、と言うと、「日本のことが好きだからね」とのこと。
「ニュージーランドも日本も太平洋の島国だから似てるんだ。車も左側を走るしね。」
日本の中古車に乗っているらしいが、カーナビがずっと日本語で何か言ってて鬱陶しいらしい。肝心のナビはずっと海の上を走っているし。そりゃそうだ。
Rョウ君とは明日一緒に街を観光することになった。この街では心細かったのでありがたい。

せんまさお

最新記事 by せんまさお (全て見る)
- 【世界一周#413】陽気な国だ - 2024年9月24日
- 【世界一周#412】逆走ハイウェイ - 2024年9月23日
- 【世界一周#411】アレナメヒコ - 2024年9月22日
コメントを残す