宿のオーナー夫妻に別れを告げ、首都ハバナへ戻ってきた。
宿は観光のメイン通りであるオビスポ通りの中にある。
デカいバックパックを背負ってるにも関わらず、レストランへ僕を連れ入ろうとする。今じゃないでしょ。
宿は通りに面する薄暗く細い階段を登った奥にあった。しかもその廊下にはウンコが落ちている。こういうときに冷静になってはいけない。ああ、うんこだなぁ、とやり過ごすのが吉である。
宿のオーナーは陽気な黒人女性。
「英語下手でごめんねぇ〜」
僕も下手なので気にしないでね、と言ったらゲラゲラ笑っていた。
オビスポ通りに出てみると、1分と僕を放っておかないおじさんたち。
「両替しない?SIMカード買わない?葉巻いらない?いいレストランがあるよ?」
それだけでなく、
「何人?おお、日本人?日本人に友達いるよ!どこに住んでるの?東京?大阪?ああ、大阪に友達が住んでるんだ!一緒にレストランに行こう!」
と嘘ばっかり言ってくる。
さらには、
「今日は特別な日なんだよ、知ってる?今日はそこのバーで○○の△△を祝うパーティーをやるんだ!行こうよ!」
と嘘を重ねるのである。
「毎日が特別な日で君たちが羨ましいよ」
と言うと、ほとんど皆、苦笑いしていた。バレたかぁ、みたいな顔である。
中にはそれでも、
「赤ちゃんが生まれたんだけど、ミルクを買うお金をください。」
「お父さんが病気で困ってるから、薬を買うお金をください。」
「マンゴー1つおごってください。」
など、様々な粘りを見せられる。僕は暇なので、一人一人丁寧にNoと伝え、その理由を事細かく伝えて徹底的に断った。
どれが嘘で、何が真か分からないが、「キリがない」というのが正直な理由である。
マンゴーくらい買ってあげてもいいけど、買ってあげる人と買ってあげない人が出てくるのは不公平だ。
インドを訪れたときにボランティア団体のお知らせを見たが、そこには「一人一人に渡すと様々な問題が生じるから、それを支援する団体に寄付すると、適切な使い方をして支援を行います」的なことが書いてあった。その通りだと思う。
隣で勝手にギターを弾いてくる男を丁寧に断った僕は、海に来ていた。
海の向こうには砦が見える。夜になったら大砲を撃つらしい。
海岸を歩き着いたのは民芸品マーケット。よくあるようなお土産物市場である。
物珍しくもない民芸品が並んでいる。この国からチェゲバラを取り上げたら、民芸品の半分が消えるだろう。あと葉巻がなくなったら、残るのはラム酒と木彫りの人形だけである。
そんなに強引ではなかったので、市場の人たちと触れあうのは楽しかった。
気がつけば夕方。宿の近所にホットドッグ屋さんがあった。僕はワンランク上のスーパーホットドッグを注文した。
出てきたのはソーセージが2本乗ったホットドッグである。ピクルスやオニオンがたっぷり乗った写真とは全く違ったが、当たり前のような顔で渡されたら、このスーパーホットドッグを受け入れる他ない。
宿でスーパーホットドッグを食べ、少し休憩して例の大砲を撃つ砦が見える海岸へ行く。
毎晩21時に撃つらしく、150年の歴史があるらしい。対岸からだとよく見えないが、なんか火が燃え上がっているのが見える。
(導火線かな?)
と思って見ていると、突如辺りが激しく光り、一瞬の間を置いて衝撃波が走ったかと思えば爆音が聞こえてきた。
球筋は全く見えなかったが、恐らく今発射されたのである。
花火の3倍くらいのエネルギーを感じた。というか、目の前で大砲が発射されるのを見るなんで、ここ以外ではもうないだろう。なんだか気軽に貴重な体験をした。
ハバナの夜はそんなに危険を感じない。春を売るフリーランサーたちが艶かしく視線を送ってくるくらいで、昼間に溢れかえっていた詐欺師の男たちの姿は見られない。
あちこちの家から陽気な声とサルサの音楽が漏れ出てきている。カリブってやつはいい加減なもんだなあ。
せんまさお
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