【世界一周#373】ゲベルバルカル

スーダンは観光資源が乏しいという噂は聞いていた。国土の大半が砂漠なのだからしょうがない。だからと言って通過するだけというのももったいない。

カリマの街にはピラミッドがあるらしい。エジプトのそれとは違い、もっと尖がっているらしい。

そのピラミッドはゲベルバルカルという山の麓にあるらしく、行ってみることにした。

40℃まではいかないが、ほとんどそのくらいの気温の中、ゲベルバルカルを目指して歩く。行くのは簡単だった。高い建物がないカリマの街からはゲベルバルカルが丸見えだったからだ。

山の方向を目指して歩いていると砂漠に出た。闇雲に歩くのも危ないので、残っている足跡を頼りに砂漠を進む。

ゲベルバルカルのすぐ麓に遺跡が現れた。古代エジプト時代に領土をカリマまで広げたトトメス3世が神殿を建設したらしい。ほとんど砂に埋もれているようだが、ゲベルバルカルを含めてこのあたりは世界遺産らしい。一口に世界遺産と言っても幅が広いものだ。

遺跡を抜け、ゲベルバルカルを回り込むような形で進むと、ピラミッドが見えた。

スーダンはあまりに情報が少なく、本当にここにピラミッドがあるのか実際に見るまで不安だったが、確かにここにあった。

歩きにくい砂漠をひたすら進み、ようやくピラミッドに到着。小さいながらも、確かに尖がっている。ある程度写真に収めると、ピラミッドの陰で休憩を取ることにした。

持ってきていた水はもう半分程度まで減っている。暑さで苦しい。

しかしながらゲベルバルカルの山を目の前にしておきながら、登らないという手はない。

ゲベルバルカルの山頂にはいくつかの人影が見える。僕たちも登ろうと登山道を探すが、全く見当たらない。そう、登山道なんてものはなかったのだ。

風で吹き上がった砂が山の斜面に堆積している。要はその砂の道を登るしかないようだ。

実際に砂山を登ったことがある人なら分かると思うが、砂は踏みしめれば崩れる。登ろうとしても登れない蟻地獄のようなものなのだ。

ゲベルバルカルから降りてきた人たちに挨拶すると、この辺りを歩けば登れると教えてくれた。砂の斜面から少しだけ岩肌が露出している。

その岩肌を使いながら、斜面に対して斜めの進路を取って進めば登れるらしい。

頑張って登り始めたが、砂が崩れて一歩で半歩以下の距離しか進めない。標高わずか98mしかない山がこんなに険しいだなんて。しかも直射日光でひたすらに暑い。砂も熱せられており、肌にあたると熱くてたまらない。

岩で影を取り、水を飲んで休憩しながらなんとか頂上にたどり着いた。

頂上の岩の陰で休憩を取りながら風にあたる。それがなんとも気持ちがいい。S-さんもようやく頂上に到着。街が一望できる場所へ移動した。

僕たちが登ってきた道以外は切り立った崖のようになっており、その足場が崩れない保障もない。全く手が加えられていないこの山の頂上は砂だらけの地上とは異世界のようにも見える。

そこから眺める大地はどこまでも平坦で、唯一流れているナイル川だけが生命の存在を感じさせる。実際にこのナイル川がなければ、この砂漠の大地では生命は存在することができないのだろう。

そして人が住む小さなカリマの街はその存在に違和感すらある。砂漠の街にそびえ立つ電波塔が人の存在をこれでもかと誇示しているようだった。

水はほとんど底をついた。

再び砂の斜面を滑り落ちるように下り、街へ急いで戻る。のどの渇きが限界に近かった。

見つけた商店ですぐに水を買い、喉に流し込んだ。冷えた水が身体のどこを通っているのかがはっきり分かる。

苦しいほどに水を飲んでいると、汚れた服を着た子供3人が周りを囲ってきた。何か買ってほしいのかお金が欲しいのかと思い、断っていると、「カメラ」と言っている。恐らく写真を撮ってくれと言っているのだろう。しかし、その後でお金を請求しているパターンもあるので、僕は子供たちの見た目で判断して断ってしまった。その先のことなんて分からないから、やるのもやらないのも自己責任。

その後、宿に戻るまでに再びひどい渇きに襲われ、途中の商店で瓶のコカ・コーラを買う。コロナじゃないの?と冗談交じりの本気で聞かれるので、日本人ですという曖昧な回答をして安心してもらう。

店の軒先の段に腰かけてコーラを飲んでいると瓶に蟻がたかってきた。なんだか久しく経験していない日本の夏を思い出した。小さいころは庭で穴を掘って遊ぶのがブームでそのとき蟻をよく観察していたっけ。

水シャワーで汗を流し、夕飯を食べに向かう。朝食も昼食も食べていない上に山にまで登っていたので空腹だ。

昨日と同じ店でフライドチキンを食べようと注文すると、まだ早いから揚げていないとのこと。やむなく炭火焼きのチキンを注文。小骨に気を付けながら食べた。

明日は首都に向けて出発する。今度こそ直通バスに乗れるか。

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せんまさお

せんまさお

シャイな僕が世界一周の旅へ。諸事情により緊急でお金が必要だったので一部上場企業のキーエンスへ就職。27歳で退職し、夢だった世界一周をすることに。やりたいことを全部やっている最中です。まずは死なずに帰ってきます。皆が憧れる世界一周だと思いますが、良いところも悪いところも全てそのままお伝えして、一緒に旅している感覚になっていただければ嬉しいです。座右の銘はPLUS ULTRA。「もっと向こうへ」という意味です。好奇心の赴くままにもっと向こうへ行ってきます。好きなコーラはコカ・コーラ。スカッとさわやかコカ・コーラ。LOVE&PEACE。

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