ちょうど深夜0時頃に国境へ到着。イラク国籍のクルド人グループが声をかけてくれ、一緒に越境することになった。
イラン側の出国審査はすんなり終わり、国境となっている橋へ向かう。
「スタンプがないと国境へは行けない」
僕はe-VISAを取得しており、イランのe-VISAはスタンプ無しなのだ。いくら説明しても伝わらない。クルド人の彼らのパスポートにも同じくスタンプはない。
一旦出国審査場へ戻るが、同じく追い返されたe-VISA組が集まっている。出国審査官はスタンプがなくても通れると言い張る。どっちでもいいけど出国審査場と国境の間から抜け出せないんですけど。
その内、どうやら連絡を取り合ったようで、スタンプ無しで通過できる話に落ち着いたらしい。最初から話が通じていないとは情けない。
無事に国境にかかる橋を通り、アルメニア側の入国審査に到着。
しばらく待って僕の番。しかし、僕のパスポートの顔と僕の顔が違うと疑っている。ふざけて変な顔で写真を撮ったのが仇になった。
虫眼鏡で僕のパスポートの写真を見ている。そして光に透かして写真を見ている。写真を貼り替えていないか疑っているのだろう。
「フジヤマイズジャパン?」
イエス、ジャパン、と答えるとスタンプが押された。なんだこの質問。さあバス待つぞ、と入国審査場を出ようとすると、別のスタッフがこっちに来いと呼んでいる。そして僕のパスポートを取り上げて、再び入国審査場へ戻っていった。
なんだよ、僕は間違いなく日本人のオノタカシだよ。とは思ったが、確かに身分証明書くらいしか自分が自分だと証明できるものはないし、それが疑わしいとなったら困ったもんだ。
何かスタッフ同士で話し合っていたが、無事にパスポートは返却された。なんか一言くらいあっても良さそうだが、日本以外でそんな気遣いを期待するだけ無意味かもしれない。
入国審査場の外は寒空。現在午前1時半。フリースとダウンジャケットを着るがまだ寒い。マフラーを巻くと少しはマシになった。

クルド人達は布にくるまって寝てしまった。バスの出入国審査待ちだ。
いつまで経ってもバスは来ない。震えながらバナナガムを噛む。
なぜか犬が沢山いる。子供が懐中電灯で犬を照らして遊ぶもんだからヒヤヒヤする。

おじさんが足で犬を撫で回して手なづけ始めた。調子に乗ったおじさんは持っていたビスケットを犬に与えようとした。その瞬間、俺の分もくれと言わんばかりに他の犬が一斉に吠えながらおじさんの元へ向かって走り始めた。
おじさんは驚き、ビスケットを遠くへ投げた。犬が一斉にビスケットに集り、喧嘩をし始めた。余計なことをしたな、おじさん。
暇なのでキョロキョロしていると、今まで生で見た人の中で一番かわいい人がいた。僕はおったまげた。家族でバスを待っているようで、その娘ポジションのその子は超ド級にかわいい。何かで例えようとしたが無理だ、過去一番かわいい。
見ちゃダメだ、しかし見てしまう。暗闇から視線がバレないようにチラチラと見続けた。
そして2時間半後の午前4時。ようやくバスがやって来た。寒くて眠たくて死にそう。
バスに乗った瞬間に眠りに落ちた。
午前8時。朝食休憩だが、食欲などない。トイレを済ませると再び寝ることにした。

起きると10時。まだまだ寝足りない。しかし窓から見える風景が変わって来た。ずっと砂漠を旅していたので、草木が生い茂る景色は久し振りに見た気がする。ところどころに、石造りの簡素な家が見える。ああ、ヨーロッパやって来たなって感じ。



ウトウトし続け、午後2時。出発から18時間でアルメニアの首都、エレバンに到着した。
随分オシャレな街並みだ。石やレンガ造りの建物が並び、アゼルバイジャンとは違った近代的な雰囲気を感じる。誰もジロジロ見てくることもない。


歩いて30分、宿に到着。すぐに布団に潜って寝る。身体がもう疲れ切っている。歳のせいもありボロボロだ。
午後6時、ようやく目覚める。日本食料理屋があると旅人から聞いていたので向かってみる。
櫻田というレストラン。左手に包帯を巻いたおばちゃんスタッフが手を動かしずらそうにやってきた。
とり天と親子丼、コーラを注文。どうやら風邪をひいたようだ。クシャミと鼻水が止まらない。
何度目かのクシャミのとき。
「ガダベシュー」
向かいのテーブルに座っていた美人が何か言ってきた。えっ、なんて?と聞き返すと、クシャミした時に英語だとこう言うのよ、とのこと。
あれ、ブレスユーみたいなやつちゃうかったかな、と思っているともう一度クシャミが出た。
「God breath you」
今度は聞き取れた。ゴッドブレスユーか。ゴッドを付けてくるなんて卑怯だ。
そうこうしている内にとり天がやってきた。おばちゃんの左手が気になる。

とり天を一口。
うまい、うますぎる。唐揚げがメニューになくてがっかりしていたが、唐揚げとは違う旨さがそこにあった。しっかり味が付いていて、衣はフワフワ。鼻水を垂らしながらフガフガ食べた。
すぐに親子丼がやってきた。親子丼、なんて残酷なネーミングなんだろう。

こちらは出汁が効いていて旨い。フガフガと一瞬で平らげた。
最後にコーラをグイッと飲み干す。幸せだ。
会計の時、櫻田さんが厨房から出てきた。明日も来ますと伝え、宿に戻った。


フロント前でアイスを食べていると、トルコ人の男が声をかけてきた。
「これ読める?」
彼の腕にはタトゥーが彫られていた。
(剛柔流)
ごうじゅうりゅう、かな。よく分からんけど、なんか強そうだ。
彼は2年前、習っていた格闘技のルーツがあるらしい沖縄に来たことがあったそうだ。
「沖縄そばを食べてから僕の人生の豊かさが増した」
彼は50カ国以上旅をし、世界中でトルコ料理と日本料理だけが口に合うことが分かったらしい。特に出汁がたまらんらしい。
やっぱり出汁だよね、という話で、櫻田レストランを紹介しておいた。リアルジャパニーズレストランだと伝えて。
この宿のベッドは変わっていて、日本のカプセルホテルみたいになっている。しかし、ただの板で区切られているため、音は逆に響き渡るようになっている。
ターバン3人衆が僕の上のブースで固まって何か話している。宿のオーナーが彼らに何か注意しているので盗み聞きしていると、どうやら滞在許可証みたいなのがないらしい。僕はビザ免除なので詳しくは分からないが、もしかすると不法滞在状態なのかもしれない。
オーナーが何か早くしろと急かしている。ちょっと待てとターバン3人衆は抵抗し、結局深夜0時に出て行った。騒がしかったので良いが、今の時間からどこに行くんだろう。
とりあえず、鼻水が止まらない。

せんまさお

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