昨晩、寝る前に一服しようと外に出ると、いきなり巨大な犬が走ってきた。超ビックリして走って宿に引き返したが犬はオシッコをし始めた。ついでに近くにいたおじさんも思い出したかのようにオシッコをし始めた。なんだこれ。
シャングリラに向かう途中に寄った街々でも巨大な犬を見た。寒いところほど動物は大きくなるらしく、それは人間も例外ではないようで、ハルビンの人々、特に女性は大きな人が多いように感じる。ロシアの血が入っているからかなと思ったが顔はバリバリ東アジア系なのでそんなこともないんだろう。
ハルビンは日本のとの歴史的な関係が深い。そしてそれは決して良い歴史ではない。
第二次世界大戦中、日本軍が中国を占拠していたことは知っていたが、ここハルビンには日本軍の731部隊という特殊任務に就く部隊が研究機関を構えていた。
表向きは、感染症予防や給水体制の研究を行っていたとされていたが、実際には、日本国内で行われることが憚られる実験が行われていた。
その内容は、人体実験や細菌戦に使用する生物兵器の研究である。人体実験とは言葉通り、生きた人間に対して行われる非人道的な実験のことである。また生物兵器も研究にとどまらず、中国国内で実践的に使用されていたらしい。
生物兵器の使用については、第一次世界大戦におけるドイツ軍による化学兵器の使用を受け、生物兵器を含めて禁止されていたが、開発や研究については禁止されていなかったことから、秘密裏に日本軍が中国国内で研究していたという経緯のようだ。ちなみに日本は条約に調印していたが、第二次世界大戦以前は批准していなかった。
正直言ってこのような歴史を全く知らなかった。これは僕が授業を真面目に聞いていなかったからとかいう話ではないような気がする。こんな歴史、教科書には載っていたかな?
僕は日本人なのに731部隊については知らず、ナチスが行なったユダヤ人虐殺のホロコーストは知っている。なんでなんだろう。
歴史認識問題で割と揉めている話のようなので、生半可な知識の僕がここでその認識自体に触れることは意味のないことなので控えるが、この歴史について調べれば調べるほど気分が悪くなった。
具体的にどのようなことが行われていたのかは調べてみてほしい。僕には説明できない。
現在、旧日本軍の拠点の跡地に731部隊の博物館がある。日本人であることが気まずい気がして、姑息ながらもバレないように静かに入った。

731部隊が行なったことの証拠とされているものの展示がされており、じっくり見て回ると2時間はかかった。



















展示物を見てからの感想を書こうと思い何度も試みたが、文字に起こそうとすればするほど、自分の力では話が陳腐化してしまう。
「戦争は二度と繰り返してはいけない。」
「戦争は人を狂わせる。」
「これからはお互い仲良くすべきだ。」
なんていう言葉が浮かんだが、もっと根本のところで湧き上がる複雑な気持ちを言い表せていない。
博物館を出たところで大雨が降ってきた。走って駅に向かったが、びしょ濡れになってしまった。
地下鉄に乗り込み、宿がある方へ戻る。もし、この地下鉄内で「僕は日本人です」と隣の座席の人に話しかけたらどのような反応が返ってくるのだろう。ハルビンは比較的、反日感情が強いと噂で聞いていたが、実際のところどうなんだろう。
もちろん宿のスタッフは僕が日本人だと知っている。街で話す人は、中国語が通じないから日本人か韓国人、もしくはモンゴル人だと思っているだろうが、誰も冷たい対応はしてこないし、なんなら優しい人が多い。それは今まで訪れた中国全土で言えることだ。
僕は今まで、日本軍が第二次世界大戦時に占領したことのある東アジア、東南アジア諸国に訪れてきた。しかし、日本人だということで毛嫌いされたり、気づいた範囲内で差別されたことはない。
ニュースでは度々反日運動が取り上げられているが、強い意識を持っている人は恐らくごく一部の方々なんだろう。
先に述べた通り、日本の歴史について僕は知らないことが多い。特に近代史は勉強した記憶すらない。
日本の占領の痕跡を旅で訪れる度に思うのは、日本に対して好意的な感情を持ってくださっている方がいることへの驚きと感謝だ。
僕は戦争に参加していないし、僕の曽祖父まで遡っても兵士ではなかった。そして日本人であることに罪はない。しかしながら、かつて中国を始めとする諸外国に対して行なった凄惨な行為は日本人によるものだ。
現在の反日感情が仮に諸国政府の扇動によるものであったとしても、理屈は関係なく否定的な感情を持たれるような歴史があったことは日本人は少なくとも知っておいた方が良さそうだ。
こんな話に触れてしまったことが恐ろしい。どうかバカな若輩者の小さな脳みそから捻り出した稚拙な日記くらいに思ってほしい。僕の話よりもWikipediaの731部隊のページを読んだ方がまだ有意義だ。
しばらく冷えた身体を温めるためにコーヒーを飲みながら頭を整理していた。いつしか夜になり、また李先生で腹ごしらえをした。
街へ出るとロシア風建築が美しくライトアップされている。街の中央には聖ソフィア大聖堂がある。実はこの大聖堂の写真を見て、あまりに美しさにハルビンに来ることを決めた。しかし現在工事中のようで中に入ることはできなかった。2019年11月に工事は終わるようなので、来る方は12月以降がオススメ。


新しい中国スタイルの近代的なビルに飲み込まれるようにひっそりと佇むロシア風の建築物が違和感を生み、冒険心がくすぐられる。





冬季は氷祭りがあるらしい。いつの日かこの街をまた訪れてみたい。
さて、明日はまた一日中移動だ。憂鬱。お尻が痛い。

せんまさお

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