ギリシャ時間午前2時半、バスはアルバニアとの国境に到着。隣のおじいさんに肩をたたかれて目が覚めた。すっかり寝ていたようだ。
バスを降り、ギリシャ側の出国審査を受ける。日本人か、と呟くような質問なのか独り言なのか分からないようなものにYesと答えてスタンプは押された。
国境間はバスで移動するらしく、見知らぬおじさんが教えてくれた。途中、相方を見失った中国人がドライバーと一緒に探しており、そのドライバーに連れて行かそうになった。分からんこともない。無事に再開する瞬間まで見届けた。
ここで尿意が僕を襲う。寒空の下バスを待つこと30分、身体は正直だというやつだ。
国境内にある巨大なゴミ箱の陰に隠れて立ちション。マナーは悪いが、周りのおじさんたちもしているので許してほしい。無国籍立ちションなので法的にもグレーなはずだ。
立ちションを終えるとバスがやってきた。乗り込むと、ドライバーが「オッケー?」と聞いてきた。多分オッケー。
乗客は割とゆっくり出国審査に臨んでいたようで、僕が最初の一人だった。その辺の感覚が分からないから早いに越したことはない。
後から乗ってきたおじさんから麦茶の香りがした。日本でもなかなか飲まないのに、無性に麦茶が飲みたくなった。
30分ほどで出発し、アルバニアの入国審査。車内でパスポートが回収される。僕のパスポートを回収するときだけ、審査官がじっくりパスポートを見ていた。分からんこともない。
ついでに斜め前のおばちゃんも僕のパスポートが気になるようで凝視していた。分からんこともない。
再び30分ほど待ち、そのまま車内でパスポートが返却される。何を審査したのか分からない。
ドライバーに一括返却のようで、ドライバーが名前を呼びながら手渡しで返してくれる。
僕の名前を呼ぶときだけ自信なさげに「タカスィ…」と小声で言っていた。分からんこともない。
ギリシャから時差-1時間なので時刻は午前3時。すぐに寝てしまった。
夢を見た。カチカチのうんこを漏らす夢だ。カチカチのうんこを漏らしたことがバスの乗客にバレて、軽いパニックが発生する。休憩と同時にバスから駆け下り、トイレでカチカチのうんこを悲しい気持ちで処理する夢。
目が覚めた頃に人がポロポロ街へ降り始めた。カチカチのうんこは漏らしていなかったが、眠たすぎてもう漏らしてても別にいいやという気持ちになっていた。そろそろ首都のティラーナに着くらしい。
午前7時過ぎにバスターミナルへ到着。タクシーの客引きがやってきた。ヨーロッパには無い文化かと思っていたので嬉しくなるが無視する。
歩いて40分、宿に到着。早過ぎるのでチェックインは無理かと思っていたら、準備するから待っておいてとのこと。近くのスーパーで食パンとソーセージ、卵2個を買ってキッチンで焼く。
食べ終わった頃に部屋へ案内してもらった。
「Good night」
アテネから夜行バスで12時間かけて来たことを話していたので事情を分かってくれている。とても眠たい。
少し寝るつもりが起きたのは15時。6時間も寝てしまった。
中庭に出てみると、昼なのに少し肌寒い。雨も降っていたようだ。
「Winter is coming」
いつの間にか後ろにいたスタッフが呟く。そうか、もう冬が来るのか。冬休みの学生と出会い、春休みの学生と出会い、夏休みの学生と出会って時の流れは早いなと思っていたが、もう冬が来るというのだ。
冬は嫌いだ。ネガティブになるから。
街の情報を教えてもらったので、出かけてウロウロする。なんだか雰囲気がいい国だ。

















人は程々に僕を見てくるが、なんだかそこまで嫌な気はしない。見ていることを悟られないように目を逸らしていることが分かる。こういう気遣いはありがたい。見ちゃう気持ちは分かるから。
雨が降っていたので、空はどんより曇っている。まだ5時だが、もうすぐ日が暮れそうだ。
黒い雲から漏れる日の光が怪しげな雰囲気を醸し出すが、かつて社会主義国だったアルバニアの無機質な建築物や、新しく作ったであろうヨーロッパ風の街並みと相まって、歩いているだけでどこかワクワクする。
アルバニアではかつてなんやかんやで社会主義が崩壊した後、未熟な市場に目をつけたネズミ講に50%を超える人が手を出し、あれこれやられちゃってるんじゃね?と気付き、暴動が起きて経済が破綻した破茶滅茶な国だ。
そのおかげと言っては失礼だけども、物価が安そうなので旅する上では助かる。
宿のオーナーオススメのレストランで夕食。リーズナブルだと言っていたのに割と雰囲気の良い隠れ家的レストランのようで、価格も安いかと言われれば微妙なライン。
メニューがよく分からなかったので、肉の欄にある一番上のやつとライスとコーラを注文。
チーズが好きならたぶんオッケー、とスタッフのアドバイスも貰った。肝心の肉の部位は、脇腹あたりを抑えて教えてくれたので、たぶんリブ肉だろう。
出て来たのはレバーをチーズで煮込んだやつ。そっちか。

ライスと共にパンも出てきた。この国もパンが付いてくるパターンだったか。

しかしこのレバーもパンもライスもうまい。ライスはなんかバターかなんかで炒めてある感じの味がする。
久しぶりにレストランの飯を食った。ずっと自炊かサンドイッチかピザしか食べていなかったからものすごく嬉しい。
トータル830レク(830円程度)。安くはないけど安い。1レク=1円くらいなので計算がラク。ちなみに、1レク=100チンダルクという補助通貨単位があるらしい。
これは関係ない話だが、木漏れ日が作る線状の光の通路が、その斜めや横からでも光って見える現象をチンダル現象と言う。
これも関係ない話だが、100ポンド=1キンタルである。100kgは1メトリックキンタルだ。
猫がやってきて物欲しそうにニャーニャー鳴いている。しょうがないのでパンをほんのちょっと千切ってあげたが、それはいらんと受け取り拒否された。
米を一粒摘んで見せびらかすと飛びついて奪ってきた。グルメな猫だ。
テラス席で食べていたもんだから底冷えしてきた。早く宿に戻って寝よう。寒いから寝よう。

せんまさお

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