下の寝台の人がスピーカーから爆音で音楽を流すもんだからイヤホンを耳栓にして寝た。

起きると11時。腹が減った。昨日買ったナンを食べる。あのナン屋さんの家族の顔が浮かんでくる。優しい味がする。
味に飽きたのでスニッカーズと交互に食べる。暴力的な味がする。
13時、ウズベキスタン出国審査が始まった。パスポートが回収される。

ウズベキスタン、ずっと来たかった国だった。去年から運良くビザ不要になり、タジキスタンからの国境も開いたおかげで、すんなり来ることができた。
サマルカンドの青いタイルは心を打った。繊細な装飾を眺めるたびに、大昔の職人の姿が浮かんで見えた。眉毛が繋がっていた。
ブハラ、ヒヴァの砂漠の街感も男心をくすぐった。いつかゲームで訪れた砂漠の街を現実に歩いているかのような気持ちになった。
道の脇に並ぶ露店からシルクロードの交易品は姿を消しただろうが、その歴史があったからこそ、今ここに街があり、僕はいるんだ。
旅行好きなら、ウズベキスタンにはクルベキスタンだと思った。そう思った。
パスポートが回収されたことで、僕の国籍がバレた。僕のいるコンパートメントにワラワラと人が集まってくる。

・おじいちゃん 82歳。彼女募集中
・モンシャック 19歳の女の子。英語が話せる
・モンシャックの弟A 11歳。顔が近い
・モンシャックの弟B 7歳。兄より大人
・ダナ 年齢不詳の女の子。インスタグラマー
・ブラ 年齢不詳の男の子。シャシリクが好き
・おばちゃんA 年齢不詳。騒音
・赤ちゃん 1歳未満。特技はハイハイ
・おばちゃんB 年齢不詳。様子を見ている
電車に空調なんて付いてないので、停車中は風が通らず車内はサウナ状態に。
例のごとくハンディ扇風機を取り出し涼む。おじいちゃんに向けると、奪い取られてしまったが気持ちよさそうだからまあいいや。

お礼にブドウとトマトを貰った。トマトはいらないのでそっと寝台に置いておいた。
「ばあちゃんの写真を見せて」
おじいちゃんはうちのばあちゃんの写真を見たがっている。見せると、彼女に手紙を送るから住所を教えろ、と興奮している。
「日本人ってカニ食べるの?」
モンシャックちゃんが興味津々で聞いてくる。食べるよ、ガパッと開いて食べるよ、と言うと、気持ち悪っ!とドン引きしていた。
おじいちゃんから扇風機を受け取って顔面に風を浴び続けるブラ君は目を細めて幸せそうな顔をしている。
「シャシリク食べたい」
どこの国の男の子も肉が好きなんだな。
その内、パスポートが返ってきた。スタンプ漏れがないか確認。
「パスポート貸して!」
ダナちゃんは自分のパスポートと僕のパスポートを並べて写真を撮っている。Instagramに載せるらしい。
一旦、寝台に横になる。
ウトウトしかけた頃、今度はカザフスタンの入国審査。今度は車内で一人ずつ審査が行われるらしい。

ポータブルの端末にパスポートを読み込ませ、顔写真を撮ると審査完了。荷物チェックもなかった。
座席に戻り、再びみんなで話す。おじいちゃんは再びトマトをくれた。今度はヘタをカットして渡してくれたので、食べざるを得ない。
「カザフスタンに何しに行くの?」
僕はカザフスタンのアクタウに行き、その日の内に飛行機でカスピ海を超えてアゼルバイジャンに行く予定だ。
長い旅だと分かると、今度は僕の携帯に入っている写真をみんなで見始めた。
「この人は誰?この写真はどこの?これはなんで撮ったの?」
中国国境の写真チェックより厳しいかもしれない。話題は尽きず、夜10時まで盛り上がった。
「外に行こう!」
途中の駅で電車は長時間停まっている。ホームには売店が並んでおり、ブラ君がお母さんからお小遣いをもらってお菓子を買いに出るらしい。
僕はカザフスタンのお金を持っていないので買い物はできないが、身体を動かすために一緒に出ることにした。
ブラ君はお菓子を買い漁っている。なんかいるかと聞かれたが、まさか小学生くらいの子に奢ってもらう訳にもいかないので、お腹が空いていないということにしておいた。

この駅から乗る人々が大量の荷物を積み込んでいる。恐らく、貨物列車の役割も果たしているんだろう、個人の荷物ではなさそうなものもドシドシ積み込まれていく。
車掌さんがそろそろ出るぞーとアナウンスし始めたので、ブラ君と中に戻ることにした。
もう11時だ。明日の朝7時にはアクタウに着く。十分に寝ておかないと朝からの移動が辛そうだ。

せんまさお

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