「始まってみたらなんてことない」なんて言ってたのがバカバカしい。
旅はとても疲れる。家でYouTubeを観てる方が楽だ。
時差ボケで全然寝られないので、朝早くから宿をウロウロ。フロントで両替してもらい、街に出た。
正直、全然調べてないので何が何だか分からないので適当に歩く。
街の中心みたいなところに出るまで、道中いろんな人に声をかけられた。
「両替しない?」
「葉巻買わない?」
「やあ中国人、1ドルくれない?」
全てを断って歩いていたのだが、一人だけ気になることを言って来る人がいた。
「あれ?昨日キューバに来た日本人だよね?」
ピンポイントすぎるので話を聞くと、空港で働いてる入国管理局の職員らしい(本当かどうかは未だに不明)。名前はラウール。昨日、空港で僕を見たらしい。

ラウールが軽く街を案内してくれることになり、近場を二人で散歩する。

「リアルキューバを見せてやる」
確かにガイドブックとかに載ってなさそうな、超ローカルな市場とかラクガキとか廃墟とかを案内してくれる。


「政府は外国に対していい情報ばかり出すけど、実際にはご覧の通りだよ。ここの家は去年、老朽化で自然に崩壊して人が亡くなったんだ。政府は何も保障しない。」
彼はしきりに「政府は何もしない」と言うのだが、なんとなく社会主義国ならではの主張のようにも思える。

超クラシック(ボロ)の乗合タクシーで郊外へ向かう。正直、まだあんまりラウールを信用してなかったので、一緒に人気の少ない郊外へ行くのは気が引けたが、なんとなく行ってみることにした。

ヘミングウェイの旧家へ来た。しかし私はヘミングウェイについては知らないので、ただ古い家へ来たのと同じである。ラウールは熱心にヘミングウェイについて話すので、私もヘミングウェイについて知ったかぶって話を合わせた。「とても興味深い人だよね!」

街に戻った頃には、水分不足で死にそうになっていた。おしっこも真っ黄色である。今のキューバは暑い。
ラウールが家でご飯を食べようと言うので、お邪魔させてもらうことになった。家には奥さんのリリーがいた。子どもはいなかったが、詳しくは聞かなかった。
「ホットドッグをご馳走しよう。しかし、アメリカのホットドッグとは違うぞ。」
リリーが料理を作ってくれた。いただいたのは、ソーセージを細かく切ったものをケチャップで炒めてご飯にかけたものにバナナとアボカドとキャベツを乗せた一品である。

バナナだけは最後に食べようとしたら、「日本人はバランス良く食べないんだな」と言われた。バナナに対する認識が何か異なっているようだ。
「今日は配給の日だからちょっとスーパーに行ってくるよ。」
キューバは社会主義国なので一応は配給制らしく、多少は国から食料や石鹸などがもらえるらしい。
「1ヶ月に卵は一人7個、石鹸は家族で1個さ。全然足りないから、みんなスーパーや闇市で買うのさ。」
「闇市って何?」と聞くと、政府から許可を得てないお店のことらしい。どうやら、民営のお店は政府に利益の一部を支払っているらしく、値段がその分高いらしい。闇市は政府に支払わないから、物の値段が安いらしい。
ラウールからそう聞いたら、なんか政府がめっちゃ悪いように聞こえるけど、要は税金を納めてないお店のことを闇市と呼んでいるらしい。
人々は国から仕事を与えられるらしいが、基本的には給料が激安らしい。仕事によって異なるらしいが、月収20〜45ドルくらいが相場らしい。
例えば、トイレ掃除の仕事は月給20ドル。空港職員のラウールは月給45ドルとのことだ。
今日一日、ラウールは全てのお金を払ってくれていた。飲み物、食べ物、乗り物など全て。申し訳ないので私が支払うと言っていたのだが、断られ続けていた。
最後に、飲み物を1杯ごちそうさせて欲しいと伝えると、ラウールも応じてくれた。リリーも一緒にお店に行き、三人でキューバフレッシュという謎のお酒を飲んだ。ラム酒をレモネードで割った物らしい(僕はお酒を飲まないので知らない)。

僕はほぼレモネードと言っても過言ではないくらいに薄いキューバフレッシュを一気飲みして、今日一日のお礼を伝えた。「Thank you!」
ラウールは言った。「ここはキューバだ。ありがとうはGracias!(グラシアス)だよ。言ってごらん!」
僕はなんとなく照れながらグラシアス!と伝え、ハグして別れた。
キューバの日は暮れようとしていたが、日本はまだ夜が明けてない。時差ボケで眠たい。

せんまさお

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