教会がこのイスラム教色の強い国にあるらしい。どうやらかつての王様がアルメニア人を連れてきて働かせていたからアルメニア人の街ができて教会が作られたらしい。
どうも気がかりで朝から行くことにしていた。
「ブレックファスト、チャーチ、バス」
昨晩、教会に行くとオーナーに話していたらこの順番にしろとアドバイスをくれた。本当は朝食の前に行きたかったがまあいいか。
ちなみにイラン人の英語はRの音が巻き舌になるようで、教会がチャルチみたいになる。中央アジアも同じで、ハンバーガーがハンブルグルみたいになるから何言ってるのか最初は分からなかった。慣れるもんだ。
準備をしていると、ブラホがやってきた。今日はイエローの服でこれまたいい。
どうやら今日もブラホ、アリが教会まで一緒に来てくれるらしい。サーディーは車修理の仕事が入ったらしく今日はパス。代わりに同じ宿の18歳の少年が加わった。
道中、ふと気になった。アルメニア人はキリスト教らしいが、キリスト教徒もヒジャブを被るの?とブラホに聞いてみた。
「法律で決まっているから被ってるわよ。デザインがちょっと違うけどね。」
イラン国内では女性はヒジャブを被らないといけない法律があるらしい。いけない、とか言うと誤解を招きそうだけど。国外では個人の判断に任せられるそうだ。
「ヒジャブは嫌い?」
綺麗だと思うよ、と言った。お世辞とかではなく、なんか綺麗に見えてきたのだ。みんな基本的には黒のヒジャブを被っているのだが、なんか質の良さそうな素材でできていて、風になびいたりすると柔らかな雰囲気が伝わってくる。
ちなみにヒジャブは女性の髪が美しいから、それを隠すためのものらしい。身体のラインも隠れるように、お尻まで隠れる服をみんな着ている。でも、見える部分の顔はみんなバチバチにメイクしている。
ちょっと違うけど、サラリーマンのネクタイくらいに思えば面倒でもないんだろう。それが当たり前でない社会から来たから追加装備のように思うが、社会一般がそうならそういうもんなんだろう。
ちなみに、イラン人は美人だと思う。なんというかヨーロピアンよりも日本人好みの顔をしているんじゃないだろうか。今まで行った東アジアを除く国の中で一番美人が多いように感じた。
ようやく教会に着いた。
なんとなくモスクっぽい。中に入ってみると、作りはやっぱりモスクっぽく、ドーム状になっている。
しかし、壁面いっぱいにキリストの絵が描かれており、イスラム教との違いがハッキリと分かる。
みんなで写真を撮り、敷地内にある博物館へ行く。ブラホが説明してくれる。多分相当賢いんだろう、なんでも知ってる。
こういった歴史的な物も、宗教に関係していたからこそ大切に保存されてきたんだろう。そう思うと、宗教って人類が生み出した大切な財産なんだなと思えてくる。いや、神が人類を生み出したのか。なんだか分からなくなってきた。
宿に戻り、皆にお別れを告げる。まだ居たらいいのに、と冗談まじりで引き止められる。その気持ちもなくはない。こんな素敵な出会いは大切にしたい。
でも僕は旅人だから次に向かって進んでいく。出会いがあれば別れもある。でもこの出会いは一生忘れないだろうな。暖かい歓迎をありがとう。
バスターミナルへ向かう。話によると1時間ごとにバスが出ているらしい。
「チケットは売り切れだよ」
まさかの事態に呆然とする。
「建物を出たところに別のバス会社があるから行ってみなさい」
驚かさないでよ。その別のバス会社に行ってみたところ、2時間後のバスがあるとのこと。到着が夜になるが、この街の雰囲気ならまあ大丈夫だろう。
待っている間に済ませた昼飯が400,000リアル(400円程度)もしてひっくり返りそうになったが、事前に聞いておかなかった自分が悪い。ハンバーガー1つだよ?昨日の宿代350円だよ?
バスが到着すると、スタッフがバスの前まで連れて行ってくれた。英語アナウンスがないから助かった。
これまた1列と2列の計3列シート。今回も1列側だったようでかなり快適。今回はお菓子とジュースのサービスまである。6時間の道のりで500,000リアル(500円程度)。たまらんですなあ。
寝たり覚めたりを繰り返し、夜の10時半に着いたのはシーラーズという街。ここも歴史のある街。かつてのペルシャの首都だ。
タクシーで宿へ向かう。車で入れない道の先にあるので途中で降ろしてもらう。そんなに危なくないと分かっていても、夜の路地裏なんてさすがに怖い。
街の灯りが見えてきた。ブラホから聞いていたが、今は祭りの真っ最中らしい。人の山を見てホッとする。
チェックイン。ドミトリーは今夜は僕だけらしい。お得!
近くの出店で水とジュースを買う。深夜0時前だが、外ではまだまだ太鼓の音が鳴り止まない。幸いなことに、僕は太鼓の音が好きなので問題ない。
せんまさお
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