【世界一周#261】サバサンドの味

目から覚めても携帯は壊れたままだった。

約束していたブルーモスク近くのマクドナルド前へ向かう。カッパドキアで出会ったTミサワさんとYシキさんとイスタンブールで再会する約束をしていたのだ。

Tミサワさんも携帯が壊れていたこともあり、先に待ち合わせの約束を決めておいてよかった。

少し早く着いたので近くの公園でタバコを吸おうと座る場所を探していたら声をかかられた。

「Hey bro! Give me a cigarette!」

ロクなやつではないことを一瞬で伝える彼のテクニックに呆れを超えておもしろくなってしまった。

暇つぶしに相手してみよう。一本差し出し様子を伺う。

「イスタンブールへはいつ来たんだ?」

昨日着いたところだ。

「トルコへ着いたのは昨日か?」

いつ来たか忘れたけど確か2週間前くらいだったと思う。

「なんで覚えてないんだ?」

もう長い間、旅をしているからそんなこといちいち覚えていない。なんなら今日が何曜日かも知らないぜ。

「お前の親父は金持ちなんだな」

いや僕が働いて貯めた金だ。

「ふーん、近くにうちの店があるから見て行かないか?」

行かないよ。親父が金持ちだったら行ってたのになぁ。

「Hey bro! お金じゃないぜ。友情が大切なんだぜ。知ってるか?トルコと日本は友達だろ?この街の地下鉄も橋も日本人が作ったんだ。さあ店へ行こう。」

ごめんよ、友達と待ち合わせしてるんだ。そろそろ行かなくちゃ。

「それじゃ友達も一緒に店へ行こう。どれ、待ち合わせ場所へ行こうぜ。」

やむなく彼を引き連れて待ち合わせ場所へ。TミサワさんとYシキさんが引きつった顔でこちらを見ている。

どうやら二人も客引きに捕まってなんとか撒いてきたところだったらしい。そこへノコノコ客引きを連れてきたもんだから苦笑いをしている。

これからモスクへ行くからまたね、と客引きの彼に伝えると、二人の表情から汲み取ったのか、諦めて帰っていった。

「またな、bro!」

客引きに後ろめたくなる必要はない。勝手に話しかけてきたんだから断って悪いことはない。なにより彼はもうタバコ一本儲けたのだから上出来だろう。

ブルーモスクへ向かってみると、お昼のお祈り時間のようで、観光客は立ち入れなくなっている。

ひとまず腹が減ったので近くでホットドッグを買う。ホットドッグもまだ知っているようなスタイルのホットドッグではないけど、中央アジアよりはホットドッグに近づいてきた。

歩いて海岸へ向かう。海岸では、釣り人が暇そうに竿を投げている。釣れている人はいなさそうだ。つまりは何かボーッとできる口実が欲しいんだろう。

対岸にはアジア側のイスタンブールと、ヨーロッパ側の新市街が見える。現在いる旧市街と新市街の間には川というか海というか汽水域が挟まっているので橋がいくつかかかっている。そこを地下鉄や路面電車も走っている。

次はグランドバザールへ。広大なバザールで、バザールの外にもバザールが広がっているもんだから、どこからどこまでがバザールかなんていう明確な区切りはないに等しい。

一応、アーケードが設けられた区域をグランドバザールと呼んでいるようで、簡易な危険物チェックを済ませて中に入る。

所狭しと並ぶ店はどこも観光客向けな品揃えなので面白味はないが、アーケード自体は大したもんだ。レンガを積んで美しく作られている。

ナザール・ボンジュウ、お菓子、偽ブランド、美容、アクセサリー、雑貨土産屋以外に店のジャンルはないのだろうか。これだけ広大なのにジャンルが被りすぎてやしないだろうか。こうなれば価格競争にでもなりそうなもんだが、カルテルを組んでいるのかそこまで安くもなかったりする。

早々にそこを抜けて地下宮殿へ。ここはとんでもなく美しいと出会った旅人から聞いていたので、高い入場料を払って入る。

かつてこの地下の巨大な空間に水を貯めていたらしい。つまり正確には宮殿ではなく貯水槽なのだが、宮殿と言われても違和感がないほどに美しい造りをしている。

パルテノン神殿の如く、円柱状の柱で天を支え、市街地のど真ん中に巨大な地下空間を造った。

照明が過不足なく宮殿内を美しく照らす一方、少し場違いなアドベンチャー感あるBGMが流れている。

貯水槽を含め、貯めるという行為は人類の発展に大きな影響をもたらしていると言えるだろう。

金を貯め、食料を貯め、エネルギーを貯める。

仮に貯めることができなければ、我々は毎日食糧の確保と火起こしに悩まされ続けなければならない。肉や魚は傷みやすいので急いで食べなければならないし、火が消えないように山まで行って薪を集めてこなければならない。

肉を干し、遠くの人に売り、お金に変え、肉が取れない日にはお金で魚も買える。スイッチを押せば、電気が家まで運ばれてきて、秋に収穫しておいた米があっという間に炊き上がり、保温までしてくれる。

何が言いたいかと言うと、貯めることで時間に余裕が生まれ、生活に追われる日々から抜け出すことができるのだ。その時間を使って人々は発展してきたのだ。

イスタンブールはいち早くその貯める技術を使って余剰時間を作り出したのではないか。そして文化の発展に時間を割いてきたのではないか。オスマン帝国の強さも余剰時間を使って生み出されたのではないか。知らんけど。

地下宮殿、来てよかった。

そしていよいよブルーモスク。この街見所が多すぎる。

内部こそ割と質素だが、その巨大には驚く。地下宮殿も街のど真ん中にあるが、あくまで地下だ。ブルーモスクは街のど真ん中の地上にこんなスペースを使って作っていることからも信仰心の高さを伺わせる。ちなみに現代のトルコからは信仰心の高さはそこまで感じられない。批判ではなく客観的に見て。

ブルーモスクから歩いて新市街へかかる橋、ガラタ橋にやってきた。旧市街は少し山なりの地形に沿って作られているので、ここからは旧市街のモスクなどの巨大建築が一望できる。

どこか懐かしい香りがする。そう、サバだ。フィッシュバーガーとして、焼きサバサンドが売られている。

サバサンド、魚不足の身体にもってこい。15リラ(280円程度)を払い受け取る。

うまい、焼きサバを挟んだサンドイッチの味がする!ここから焼きサバを抜き出し醤油をかけて、炊き立てのご飯と一緒に食べたいような気持ちになる味だ。

しかしながら腹を満たすには足りず、すぐに夕飯へ。ケバブとスイーツを食べて解散。

Tミサワさんは明日帰国。Yシキさんはもうしばらくイスタンブールにいるらしく、再開を約束して別れる。

ブルーモスク前のベンチに一人座っていると、おじさんが日本語で声をかけてきた。

「日本から来たの?この辺りは変な客引きが多いから気をつけなよ。僕?僕は日本人向けに絨毯を売ったりしてるんだ。あと日本からテレビ局が来たら現地コーディネートもしてるよ。ほら、岡村隆史と北川景子。僕がコーディネートしたんだよ。僕はもう帰るから気をつけてね。」

親切な怪しい人だ。

それにしても携帯どうしようか。

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せんまさお

せんまさお

シャイな僕が世界一周の旅へ。諸事情により緊急でお金が必要だったので一部上場企業のキーエンスへ就職。27歳で退職し、夢だった世界一周をすることに。やりたいことを全部やっている最中です。まずは死なずに帰ってきます。皆が憧れる世界一周だと思いますが、良いところも悪いところも全てそのままお伝えして、一緒に旅している感覚になっていただければ嬉しいです。座右の銘はPLUS ULTRA。「もっと向こうへ」という意味です。好奇心の赴くままにもっと向こうへ行ってきます。好きなコーラはコカ・コーラ。スカッとさわやかコカ・コーラ。LOVE&PEACE。

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