部屋に窓がないもんだから朝が訪れても身体が起きようとしない。肌寒い気候もその原因の一つだと思う。
11時過ぎ。もうドミトリー(相部屋)には誰もいない。とっくに支度を済ませて出て行ってしまったんだろう。
ケトルでお湯を沸かし、いつ買ったんだか覚えていないインスタントコーヒーを淹れ、甘々のオートミールクッキーを食べる。
どうやら今日は曇っている。黒海に沈む夕陽が見たくてこの街にやってきた。昨日見ておけばよかったのだが、辛ラーメンを食べて汗をかいた後は寝ると高校生の頃から決めているのだから仕方ない。
今日はこのままでは夕陽なんて見られないだろうな、と延泊を考えたが、この宿はどうも自分に合わない。居心地が悪い。
今日チェックアウトして宿を変えるのも面倒なので、ともかく夕陽次第で考えようと決めた。
カジノで急激に発展した街ではあるが、歴史ある建物や街並みもあるようなので街を散歩する。
近くにあった教会では、結婚式が行われていた。カメラマン2人と空撮用のドローンまで飛んでいる。
海外で結婚式を見かける度に思うが、日本の結婚式はちょっと金をかけ過ぎじゃないか。豪華な新婚旅行にした方が楽しそうだと思う。僕が男だからそう思うんだろうけど。
道端の教会などに寄りながら海岸へ向かう。
途中、なんかとんでもない噴水を見つけた。たぶんなんか偉い人なんだろうが、半裸の金色の男がてっぺんでポーズをとり、その四方を乳首から水を噴き出すスターバックスのロゴの人魚的な像が囲んでいる。前衛的すぎるぜ。写真写真!
海岸に到着。バトゥミのビーチは砂浜ではなく砂利というか小石でできている。なので靴でも側まで行くことができた。
海岸沿いには観覧車と謎のモニュメント。ジョージアでは先進的な街なんだろうが、日本からするとノスタルジックな雰囲気にも感じる。バブル期に作られた建造物やモニュメント、テーマパークとジャンルが似ているんだろう。
港からはクルーズ船が出ていた。黒海からバトゥミを眺めるんだろうが、僕はバトゥミから黒海が見たい。
もっと見晴らしのいい場所を探して海岸を歩く。
ようやく見つけた。視界には黒海と空だけ。黒海って黒くないんだな。
どこまでも黒海が続いているようで、実は真っ直ぐ進むとウクライナとかルーマニアとかブルガリアとかに着くらしい。ここで世界は終わりですと言われたら信じてしまいそう。対岸なんて本当にあるんだろうか。あるんだろうけど。
黒海はカスピ海のような塩湖だと思っていたが、地図をよく見てみると、トルコのイスタンブールで海に繋がっているようだ。
そのまま街を歩いていたが、そろそろ日が暮れそうだと思い、再び海岸へ。太陽が沈んでいることは分かるが、やはり雲に隠れておりそれ自体は見えない。
もう一泊だけしてみようか。明日、夕陽が見られたらジョージアを出よう。次の国へ行こう。
せんまさお
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