ジョージア最後の一泊は少しだけ良い宿に泊まる事にした。物価が安いと言われている最後の国だ。今のうちにできる贅沢はしておきたい。
アパートメントタイプの宿で、普通のマンションの一室の一部屋を貸しに出しているらしい。
宿に到着すると、丁寧なお姉さんがお辞儀をしながら迎えてくれた。こういう場面でのお辞儀の文化なんてないはずだからアジア人というかたぶん予約時に確認した僕の国籍に合わせてお辞儀してくれたんだろう。本当にそうかは知らないけど、日本以外の宿で初めてお辞儀で迎えられたのでたぶんそうなんだろう。気遣いが嬉しい。
たまにいる日本大好き外国人によくお辞儀について聞かれる。もしかしたら僕が無意識にペコペコしているからかもしれない。角度はどんくらいとか聞かれるけど、その辺って雰囲気に合わせて自然としてるからもはやよく分からない。
目上の人に対してするの?とかも聞かれるけど、道の譲り合いとか、エレベーターでスペース開けてもらったときとかなんか知らない人に対してもするからそういう訳でもない。
ありがとうとか、すいませんとか、こんにちは、とかいろんな意味を持っていて、併せて言葉を発したり発しなかったり、会釈みたいに一度頭を下げるものと、なんか雰囲気で何度もペコペコしたりするものと本当に雰囲気による。
海外であんまりペコペコしてるのも変なので、現地の雰囲気に合わせて握手したり手を挙げてみたりしてるけど、日本人と会うとやっぱりペコペコしている。自分でもおかしいのが、日本人と電話していてもペコペコしている。これは本当に不思議なことだ。
ビジネスマナーでもお客さんを見送る時は頭を下げて見送って、見送られる方も頭を下げて出て行って、少し進んで振り返ってもう一度頭を下げて帰っていくというのがある。個人的には割と好きな習慣だ。
元来、ありがとうをありがとう以上の言葉で伝えるのが小っ恥ずかしいような国民性だと思うので、なんやかんやお辞儀が一番心が伝わる気がしている。
それはさておき、部屋に荷物を置き、ベランダに出てみた。なんにも見えないけどまあ気持ちいい。
「母が手作りしたケーキをどうぞ。紅茶とコーヒーどちらがいいですか?」
なんということでしょう。母手作りのケーキなんてJUDY AND MARYのドキドキの歌詞にあるママのつくったプディングくらい別世界の存在だと思っていました。
うちの母はベーキングパウダー抜きの全く膨らんでいないホットケーキしか作らないのに。まあこれが結構おいしいんだけど。
紅茶をお願いし、その手作りのケーキを頂く。うまい、うますぎる。当たり前かもしれないけど、ヨーロッパ文化のある国のケーキとかパンはレベルが高い。お母さん、日本で店出せますよ。
バトゥミでやることはもう黒海に沈む夕陽を見ることだけ。他になんかないかと調べていたら世界一オシャレなマクドナルドがあるらしい。
歩いて行ってみると、確かに世界一オシャレそうなマクドナルドが見えてきた。カブトガニみたいな形をしている。
せっかくなので食べることにした。中国以来の機械でオーダーするタイプ。支払いはカードで。便利。
店内もやたらとオシャレだ。これマクドナルドが建てたのかな。
夕陽はロープウェイで山に登ってから観ることにした。ロープウェイに乗りたかったからだ。
おばあちゃんと二人でゴンドラに乗る。
「昨日は人が多くて乗る気になれなかったの。今日は空いててよかったわ。」
ロープウェイは市街地の上を通って山に登っていく。日本だと安全上の問題とかで難しそうな設計だ。
どんどん市街地が小さくなってきた。高度が上がる。
ふと心配になってきた。これ落ちたら結構高いな。ロープウェイ自体は綺麗で新しそうだが、信用できるかと言われれば別の問題だ。
まあ落ちてもいいかと開き直って窓からずっと外を眺めていた。高所恐怖症だが、もう落ちてもいいかと割り切れば割と大丈夫。
バンジージャンプもスカイダイビングもやったことがあるけど、まあ死んだらしゃーないなと割り切ればなんとかなった。
鳥は普段こういう景色を見ているんだ。アホみたいなハトも実はすごいやつだったんだな。
おばあちゃんも無言で窓から景色を眺めている。それにしても一人でロープウェイに乗っているということは、このおばあちゃんも一人で旅してるのかな。
結構長い時間をかけて山頂へ到着した。日の入りまでまだ1時間半くらいある。ベンチに腰掛け、じっとしていた。
ふと我に戻る度に自分の影が伸びていることに気づく。段々と辺りがオレンジ色に染まってきた。
残念ながら少しモヤがかかっている。山に来たせいか。
しかし、ちゃんと太陽と黒海は見えている。空がオレンジと深い青のグラデーションになってきた。なんて美しいんだろう。
写真に撮っても実物と全く違う。写真は色を忠実に再現するが、輝きまでは写せない。
日が落ちるにつれ、太陽の輝きも落ち着いてきた。輪郭までハッキリと見える。
大きな太陽が大きな黒海に溶けるように沈む。明日は別の国からまた太陽を見ることになるんだろう。
太陽が沈み切ってからも、しばらくそこにいた。沈んでからの方が空はより広くオレンジ色に染まった。
モヤのせいだろうか、色が空いっぱいに広がり、オレンジの世界に来たような不思議な光景だ。
オレンジが段々と薄くなっていくにつれ、辺りは優しい肌色のような光に包まれる。登ってきてよかった。幸せだ。
なんだか胸がいっぱいで腹が減らない。もしかしたらマクドナルドのせいかもしれないけど、ここは夕陽の美しさのせいにしておきたい。
スーパーでサラダとマッシュポテトを買って宿に戻った。最後の夜はジョージア旅を共にしてきたゼダゼニ社のレモネードと、思い出のボルジョミウォーター。今日だけはコカ・コーラは鞄にしまっておく。
ジョージア、長かった。小さい国なのに。ほんの11年前は戦争をしていたこの国。トビリシのレストランで会ったおじさんは軍人で、週末からアフガニスタンに軍人として行くと言っていた。
「旅行者は皆、ジョージアは良いと言う。でも住んでる人から言わせれば嫌な国だよ。」
酔っ払って大騒ぎする彼が忘れたいものは何なのか。僕には分からない。
そして僕はジョージアに住みたいと思った。よそ者の僕からすればとても居心地のよい国だ。もしかしたら将来、ジョージアに住むことになるかもしれない。
飯はうまい、人は物静か、全部が安い、治安が良い、街が綺麗。いいじゃないか。恐い犬を除けば。
旅を長く共にしたNガノさんも移住を検討しているらしい。おもしろそうだ。
ともかく、明日は久しぶりの国境越え。どうやって国境に行くのか、これから調べないと。
せんまさお
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