23時に到着すると思っていたころが懐かしい。
深夜1時のトイレ休憩。僕は発狂寸前だった。
バスだと聞いていたのに、来たのはミニバン。
狭い席に横3人の男が並んで座るのだ。
左はインドネシア人、右はフランス人。自分も含め無駄にガタイがいいので肩が横一列に収まらない。
右のフランス人と交互に肩を上にしたり下にしたりしながらなんとか秩序を保つ。
壊れたエアコンが憎い。8人が乗ったインドネシアを走るミニバンは恐ろしいほど暑い。
はめ込みの窓で換気ができない。暑さと狭さで気が狂いそうだ。
「Hi Sir!」右のフランス人が運転手に向かって叫んだ。
「暑くて苦しいよ、なんとかしてくれよ!」(意訳)
同感だと僕もヘイヘイ便乗して文句を言う。
ヘイヘイ言っていると運転手は言った。
「どうにもならない、渋滞していて車も進まない」
結果から言うと着いたのは翌日14時。まさかの20時間かかった。
あまりに過酷な20時間。途中フランス人が発狂して窓を破壊して車内の空調は確保されたが、ギュウギュウのバスで20時間は堪える。
僕は久石譲のSummerをエンドレスで聞きながら心の調和を保つよう努めた。
最後のトイレ休憩で「あと1時間だ」と運転手が言ったとき車内が喝采した。
フランス人は「フルーツを食べに行こう」と意味不明なことを言っていた。
ジョグジャカルタに着いたころ、僕はいつしか心を失っていた。
それはまるで糸の切れたマリオネット。
マリオネットまさおは宿を見つけた。ちょっと高いけどいい香りのする部屋だ。
部屋に入った直後のマリオネットまさお。心を失っている。毛穴は広がっている。
ベッドに倒れこむように横になった僕は生きているだけで幸せだと心から思った。
乾ききった身体に水を流し込み、シャワーを浴びて生き返った僕はもうマリオネットとはおさらばしていた。
今日も移動で時間を使ってしまったので、近くの市場や王宮へフラフラ行き、ジョグジャカルタ最初の夜を満喫した。
観光用の馬車。割とインドネシアの方が乗っていた。やはり西洋風。
ナイトマーケットでは200円くらいでTシャツが買える。
ジャカルタは車が多かったが、ジョグジャカルタはバイクが多い。
ジャカルタと違って小奇麗ではないが、観光地として栄えているようで、家族連れの観光客が幸せそうに笑っている。
この街にはミッキーだってプーさんだって偽者しかいないけど、それでも十分に子供たちは喜んでいる。
やきとりを頬張りながら眺める世界は輝いていた。
せんまさお
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