モンゴルの大草原を馬で走る日々。
どこまでも続く草原の中に突然、人工的な物、「お寺」が現れました。
Tuvkhun Monastery(トッフン寺)というらしく、ここで神秘的な体験をさせて頂きました。
トッフン寺
トッフン寺は1650年頃に完成したモンゴル最古の仏教僧院の一つです。
モンゴルが社会主義だった時代の1930年代後半に、宗教を善しとしないスターリン主義者の思想から深刻な破壊工作がありました。社会主義政権が終焉した数年後の1992年に寺院での宗教活動が再開され、修復は1997年に完了しました。
トッフン寺は、2000年以上に渡って培われてきた遊牧民の伝統を例証するものとして、「オルホン渓谷の文化的な景観」の一部としてユネスコの世界遺産に登録されています。現在では、何名かの僧侶が常駐し修行しています。
胎内めぐり
トッフン寺には小さな洞窟があります。
人ひとりがギリギリ通れるくらいの洞窟へ、靴を脱いで匍匐前進で入っていきます。中は小さな空洞になっており、なんとか体勢を変えることができる程度です。洞窟の中で向きを変え、今度は頭から洞窟を出ます。
洞窟を母胎と考え、中に入ることで生まれる前に戻り、外に出ることで再び生まれてくると考えることで、「生まれ変わる」ことを意味しているそうです。
日本でも同じように、「胎内めぐり」という考えがあります。トッフン寺と同じく洞窟や、仏像の中を巡ることで「生まれ変わり」を実現できるというものです。
内部はあらゆる光がさえぎられており、完全な闇です。完全な闇は動物として本能的に恐怖を感じます。そして、普段どれほど目に多くを頼っていたかが分かります。
音もせず、ただ頼れるのは今、手で身体で感じる感触のみです。未来も過去もなく、ただ身体が触れる壁や床のみが存在していることが分かり、雑念や煩悩が消えうせます。
ウマレキヨマル思想
「生まれ変わり」というのは輪廻転生の考え方です。これはキリスト教、イスラム教、ユダヤ教には存在しない考えです。
インドの仏教においては、死んでも魂は失われず、再び生まれ変わるという考えがあります。仏教においては、輪廻転生は苦であると考えられており、輪廻から抜け出すこと、「解脱」を目指して修行を行います。
胎内めぐりにおいては、単に生まれ変わることで穢れを祓うことを目的としています。
日常的にも「生まれ変わった気分」のような表現をするように、考え方が変わったり、苦手なことを克服したりというものレベルでも生まれ変わりという言葉を使います。
胎内めぐりを通して、ウマレキヨマル(生まれ清まる)ことができるのです。
危うく生まれ変わりかけた
トッフン寺での胎内めぐりを終え、崖を歩いていました。トッフン寺はちょっとした崖の上にあるのです。
崖を歩き終えそうな最後の一歩を踏みしめる予定の場所は、足の幅くらいしか踏みしめる場所がなく、できれば踏みたくないような一歩だったので、ジャンプして少し広いゴールに行くことにしました。
着地と同時に地面が崩れました。僕は咄嗟に崖のデコボコにへばりつき、落下を免れました。
もう少しで本当に生まれ変わってしまうところでした。地面が崩れた音と、僕が間抜けな叫び声をあげたことで、一緒にいた方は僕が落ちたと思ったそうです。
なんにせよ、まだ生まれ変わるには早かったということでした。いや、もしかすると胎内めぐりで生まれ清まったことで難を最小限に抑えられたのかも。
日本では長野県の善光寺などでトッフン寺のようなハードなものではない胎内めぐりができますので、機会があれば是非やってみてください。
せんまさお
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