1番好きな映画はスクービー・ドゥー。人間の言葉を話す犬のスクービー・ドゥーがトラブルに巻き込まれる破茶滅茶コメディ映画だ。
2番目に好きな映画はナイトミュージアム。夜になると展示物が動き出す不思議な博物館で働くことになった主人公の活躍を描くコメディ映画だ。
そしてナイトミュージアム第三作の舞台となったロンドンの大英博物館。
世界中に植民地を持っていたイギリスだからこそできた世界中の超レア品の収集(窃盗とも言われている)。植民地の多くが独立した現在、返還を求める運動も起きている(特にギリシャから)が、これだけあんなものやこんなものが一か所で観られるのはここだけだろう。しかも無料で!
あまりに多すぎる展示物。恐らく本気で見てまわっても1週間はかかりそう。週末に来てちょっと観て帰るなんてことをしてたら恐らく1年は楽しめるだろう。
そこを2時間の超ダッシュで駆け回る。
まずはモアイ。言わずと知れたイースター島のモアイがロンドンに佇む。なんでこんなところに。
次にロゼッタストーン。古代エジプト文字のヒエログリフの解読の鍵となった世界一レアな石。
エジプトのラムセス二世の像。古代エジプトで最も力を持ったと言われているファラオ。イタリア人の俳優がイギリスのスパイとしてエジプトに入り、ロンドンに持ち帰ったという訳わからん経緯。
物議を醸すパルテノン神殿の彫刻。剥ぎ取って持って帰ってきたらしい。剥ぎ取るって…。しかも白が美しい、という当時の価値観から、塗装されていたのを剥がして研磨するという悪行。影響を受けた他の博物館まで剥がしまくるという取り返しのつかない事態に。だから有名なギリシャ彫刻は白いらしい。現在ギリシャは返還要求中。
ルイスのチェス駒。スコットランドのルイス島で発見された12世紀ごろに作られたセイウチの牙製のチェス駒。ハリー・ポッターにも登場したことで有名。こちらも所有権で揉めている。
他にもミイラやら仮面やら壁画やらてんこ盛りの展示品を眺めたあと、最上階にある日本コーナーへ。なぜか日本のコーナーが最上階にあるので不思議だなと思っていたら、三菱商事が協賛しているらしい。寄付で運営している博物館らしいところ。
浮世絵や鎧など、まあ日本人からしたらどっかで観たなというようなものばかりが展示されていたが、外国人からしたら滅多に観れない生クールジャパンというところだろうか。
ほとんど館内全てを舐めた後、引き返していると、制服姿の中学生らしき日本人がゾロゾロと歩いていた。修学旅行だろうか。みんな同じ制服姿っていうのはイギリス人の目にはどのように映るのだろうか。
ドアを開けて先に通してあげたらお辞儀してサンキューと言われた。僕も日本人だ。それにしても修学旅行でイギリスなんて羨ましいような親がかわいそうなような。
確か僕は中学生のときは沖縄に行った。マングローブにカヌーで突っ込んでしまったことと、宿に到着してテレビをつけたらJR福知山線脱線事故が起きたニュースが流れていた記憶しかない。他は全く覚えていない。旅とは違うツアー旅行なんてそんなもんだ。そこに主体性がなければ身になることなんて一つもない。
逆に高校生のときの修学旅行で行ったメイド喫茶のことは忘れもしない。当時、電車男のドラマが流行っていて、秋葉原のドン・キホーテにはメイド喫茶があるらしいと聞きつけた僕たちは、ドキドキしながらご帰宅したのを覚えている。
ご帰宅料:500円
カレー(レトルト):1,000円
チェキ:500円
のトータル2,000円のお会計で、落書きされたチェキと苦い思い出を握りしめてドン・キホーテを後にしたのだ。その時のチェキは戒めとして今でも持っている。
そのせいもあってか、先輩から誘われてガールズバーで飲むなんていったことにエゲツない嫌悪感を持っていたのは先の体験が大きく影響しているのだろう。
霊感商法はNGなのに、萌えパワーがOKなこんな世の中じゃ…ポイズン。
大英博物館を後にし、向かった先はそう。もう分かるよね。
フリーメイソンホール。
都市伝説界隈で有名なフリーメイソンの本拠地はここロンドンにある。
中に入れると知り、僕は真正面から入った。
「何かお困りですか?」
ヒェッ
一瞬で怖い人に止められてしまった。持ち前のトークスキルとボディーランゲージを織り混ぜたコミュニケーションスキルを使い、僕は7分咲きの笑顔でこう言った。
「ここは博物館か何かですか?」
怖い人は笑顔で言った。
「見学希望でしたら横の入り口から受付を済ませて入ってください」
ああ、そうですか、それではさようなら。と、ドアを出ようとすると、怖い人に再び呼び止められた。
(しまった、闇に葬られる!)
ドアを出ようとする僕の後ろから、明らかな上流階級の人がホールから出ようとしていたのだ。
明らかな上流階級の人は虫けらのような僕に軽く会釈し、怖い人に見送られながら出て行った。
僕はやったぞ。上流階級のフリーメイソンの人から軽く会釈してもらった。もう分かるよね。つまり僕もフリーメイソン。
フリーメイソンの僕は横の入り口から入り、受付を済ませた。
「なんだそれは?」
ヒェッ
「これはキャメラ(カメラ)です」
チェックを受けた印のフリーメイソンシールをカメラに貼ってもらい、博物館コーナーに向かう。
今日は何かフリーメイソンのパーティーをしているようで、上流階級の人たちが館内でワイワイしていた。
仮に僕がテロリストなら世界に大きなダメージを与えられそうなチャンスだが、僕はだだの虫けらなので明日からも世界は変わることはない。
かつてのグランドマスターの肖像画やら勲章やらが展示されている。まだまだフリーメイソン入りたての僕からしたら雲の上の存在だ。
あちこちにフリーメイソンは慈善団体ですよ的な説明があり、世界を裏で操っているような匂わせは見受けられない。やはりフリーメイソンの内部組織、イルミナティが操っているのか。
イルミナティどころかなんの手掛かりも得られず、僕はお土産コーナーに行った。
「何かお探しでしょうか?」
ヒェッ
「見てるだけです、ありがとうございます」
闇に葬られるんじゃないかとドキドキした。いや、何も買わずに出ると消されるリスクがある。僕は日本では必要のないマネークリップをレジに持って行った。
マネークリップにはコンパスと定規からなるフリーメイソンのロゴがあしらわれていたが、中央部の「G」は抜かれていた。僕が正式なフリーメイソンとして認められるまで、「G」はお預けということだろう。もしくは、「G」が僕の前に現れた時、僕はフリーメイソンとして認められるのかもしれない。
上流階級のフリをしながらホールを後にする。冗談みたいなシルクハットを被り、ステッキを持った上流階級の人たちが出たり入ったりしている。
僕はふと気がついた。
(僕はフリーメイソンではないかもしれない)
空気に飲まれていた。いや、裏で操られていたのかもしれない。信じるか信じないかは、あなた次第です。
暗くなりかけた街を彷徨い、僕はビッグ・ベンにやってきた。どうやら修復作業中らしく、足場で囲まれて時計しか見えない。
次はウェストミンスター寺院に行く。寺院と言ってもキリスト教の寺院だ。中に入ることはせず、少しライトアップされた外観だけ見た。
Tカヒロおすすめのバラマーケットに向かう。別に薔薇のマーケットではなく、ローカル感ある小規模店舗のマーケット。しかし時間が遅かったようで、ほとんどの店が閉店準備中だった。
ロンドンブリッジを通り、レドンホールマーケットへ移動。そういえば昔、ロンドンブリッジっていう曲あったよね。
このマーケットにはハリー・ポッターの撮影に使われた店舗がある。パブ漏れ鍋の入り口があったが、中身は健康食品の店みたいなのになっていた。
そこからロンドン塔まで歩く。もう閉まっているので外からだけ。近くには世界一有名な橋のうちの一つという日本語では理解し難い表現を押し付けられているタワーブリッジが。ライトアップが水面に反射して美しい。
夜はTカヒロとご飯を食べる約束をしていたので、地下鉄で向かう。
エンバンクメント駅に電車が到着した時、急ブレーキがかかった。隣に立っていたおじさんがよろけて僕の足を全力で踏みつけてしまった。
僕は痛気持ち良さに包まれていた。今日は20km以上も歩いている。足の疲れが激しい圧迫でほぐされたのだ。ミャンマーの山の階段から滑り落ちて腰を強打したときにも同様の快感が得られたことを思い出した。強い凝りには強い刺激が必要なんだろう。
「アイムソーリー」
おじさんが焦って大謝りしてくる。
「大丈夫ですよ。あなたは大丈夫?」
おじさんからしたらエラい器がでかい東洋人に見えたことだろう。おじさんは幸運だ。仮に僕がフリーメイソンだったらおじさんは次の駅に着くことはなかったかもしれない。
カムデンタウンに着いた。大阪日本橋のでんでんタウンを思い出す。あそこはエキサイティングな街だが、ここはもっとエキサイティングらしい。ロックの聖地とのこと。
間も無くしてTカヒロと合流し、日本食料理屋へ。
餃子がオススメらしく、餃子と揚げ出し豆腐、枝豆、唐揚げなんかを注文。
出てきた餃子に感動。溢れ出る肉汁に比例して心の肉汁が溢れ出る。ジュワジュワ。
Tカヒロは仕事が楽しいらしい。羨ましい話だ。普通、人生の大半の時間をかける仕事。ここにどれだけ満足感を得られるかというのが、人生の満足感に繋がるのは言うまでもないだろう。僕もイケイケゴーゴーの仕事を見つけたいもんだ。
餃子をもう一皿追加し、ラーメンも頼んで楽しい時間を過ごした。
そしてご馳走してもらうことになってしまった。先輩ならまだしも、友達に奢られるとは情けないやつだ。日本に帰ってきたら絶対にお返しさせて欲しい。
Tカヒロおすすめの場所があるらしい。向かった先はハイド・パーク。クリスマスマーケットが開かれている。
今まで訪れてきたクリスマーケットと規模が違う。移動遊園地がひしめき合っている。
もうキラキラのピカピカで夢の世界のよう。写真を撮っていると、いかに僕が田舎者なのか、実感が湧いて恥ずかしくなってくる。
ここは世界の中心のうちの一つ、ロンドン。聞いたことあるものだらけの街。世界共通言語、英語の生まれ故郷。ロンドン、ロンドン、いい響きだね。夢があるね、ロンドン。
せんまさお
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