どんより曇っている。しかしイメージしていたベルリンそのまんまの天気なので良し。
ベルリン大聖堂を眺め、僕が向かったのはカリーヴルスト屋さん。
ベルリンに来たらどうしても食べたかったものだ。ソーセージはドイツ語でヴルスト。カリーはおなじみカレーのことだ。
大学1年生の時のドイツ語の先生が、ドイツ留学中によくカリーヴルストを食べたと話していたので、僕もどうしても食べてみたかったのだ。
「カリーヴルストください」
カリーヴルストスタンドのおばちゃんに声をかける。
「ヴルストだけでいいの?」
ヴルスト以外に何が追加できるのか先生は話していなかった。思い出せるのはキャベツの酢漬け(ザワークラウト)が旨いという話だけだ。
ヴルストだけください。と答えてから、メニューを眺めていると、どうやらフライドポテトを追加できるらしかった。
表面をカリカリに焼いたヴルストを手際よく輪切りにし、カリーソースとカリー粉をかけたものにフォークをぶっ刺してハイヨと出された。このかんじ、たこ焼きみたいだ。
スタンド前のテーブルに持って行き、ついに憧れのカリーヴルストを食べた。
うまい、カレー味のソースがかかったソーセージの味がする!不味いわけがない。ソーセージとカレーなんてドラえもんとクレヨンしんちゃんみたいなもんだ。うまい食べ物二つを組み合わせてマイナスに向かうわけがない。味噌とチーズですらくっ付けば旨くなる世の中だ。
カリーヴルストを一瞬で食べ終え、すぐ近くにあるらしいベルリンの壁へ向かおうとしたその時、一人のおばちゃんが声をかけてきた。
「サインください」
僕はブルース・リーじゃないですと断ろうかと思ったが、もしかするとジャッキー・チェンかもしれないので、何でですかと聞いてみた。
どうやら聴覚障害者と身体障害者の方の何かのためにサインを集めているらしい。
しかし、このおばちゃん何か怪しい。
「サインだけでいいから」
怪しがりて寄りてみるに、全部ドイツ語で書かれているから読めない。
サインだけでいいんですね?と念を押して渋々サインをしておいた。別に詐欺だろうと知らぬ存ぜぬで押し通せば良いから構わないかなと思ってのことだ。
「それでは寄付をお願いします」
ほらきた!やっぱりそうだ!サインだけでいいと言いつつ、最後は寄付をくださいだなんて詐欺じゃないか。払いませんよ、と言い、立ち去ると、なんと腕を引っ張って1ユーロでいいからとごねるではないか。
離せ!と振り解いて僕は去った。数十メートル先でも同じように声をかけられたが、僕はあなたを信用できません、と断った。
本当に許せない。正しい目的を持って募金活動をする人を侮辱する行為だ。
日本でも数年前から東南アジア系の人が駅前なんかでコソコソと日本語を書いたカードを見せて偽募金活動をしている。あんなことして恥ずかしくないのか。何より祖国が信用されなくなるぞ。自分が良ければそれでいいのかよ。と思っている。
贅沢な旅だが、いわゆる贅沢はそんなにしていない。むしろ日本で暮らす方がよっぽとお金を使うような貧乏旅なので、行き当たりばったりで募金してちゃ僕も困る。募金も人助けも、無理のない範囲で良心の下に行うことだろう。たった1ユーロだけど、1ユーロを切り詰めて明日につなげる旅でもあるんだ。
ベルリンの壁にはすぐに着いた。おお、これがベルリンの壁。実はアルバニアの公園に展示してあるものをたまたま見たので初めてではないんだけど、実際にベルリンで目の前にすると痛ましいもんだ。
絶対に乗り越えられそうもないほど高い。更に有刺鉄線まで張られていたらしいし。
今ではアートの場になっているらしく、壁にはアーティストが絵を書き連ねている。
有名なソ連のブレジネフと東ドイツのホーネッカーがキスをしている絵も見つけた。その前には人が集って記念写真を撮りまくっている。
近くにお土産屋さんがあったのでなんの気無しに入ってみると、まさかのベルリンの壁が売られていた。
かつて大半を破壊したので、そのカケラが売られていたのだ。小さいものだと1ユーロから売られている。なんか怪しいけど、少し大きいものを1つ買うことにした。
一方その頃、僕の頭の中にはカリーヴルストがフワフワと浮かんでいた。忘れられない、あの味。
もう一軒だけ行こうとベルリンの壁を後にした。
人気店を調べて向かう。ベルリンで一番人気らしいCurry36というお店。確かに行列ができている。
一つ買って店先で食べる。さっき食べたものはカリーソースがカリーカリーしていたが、今度のはケチャップ風味が強い。ヴルストは外サク中フラの僕好みのかんじ。いやあたまらんなぁ。日本でも作ってみよう。
今日はどんどん観光するぞ。
次は東ドイツと西ドイツの国境となっていた場所、チェックポイントチャーリーへ。
昔の再現でイミグレーションの建物が設置されている。どうやらお金を払えば、パスポートにかつてのスタンプを押してもらえるらしい。パスポートって余計な書き込みがあったら無効になるから、実質違法なんだけど、たくさんの人が近くの売店で押してもらっていた。
近くのジャンダルメンマルクトへ。マルクトとはつまりマーケットだ。今はクリスマスマーケットをやっている。本場ドイツのクリスマスマーケット。ソーセージでビールをグイッとやったらたまらないんだろうけど僕はビールが飲めない。
あと一人なのでそんなに盛り上がらないのでクリスマスマーケットはそれなりで素通りして、その脇にあったAMPELMANN Shopへ。AMPELMANNというのはドイツの歩行者用信号機の中の人がたのキャラクターのことだ。ドイツのはハットを被っていて、なんだかデザインもかわいいので人気キャラクターになっているらしい。これも大学時代のドイツ語の授業で聞いていたので覚えていた。
たくさんグッズが売られているが、日本で使うこともなさそうだし、持ち運ぶのも大変なので絵葉書だけ買った。友達に手紙でも書こう。
一方そのころ、僕の頭の中にはカリーヴルストの事が浮かんでいた。しかし効用という言葉がある。財貨が消費者の欲望を満たし得る能力の度合いのことだ。カリーヴルストを連続して食べても、効用は下がり、カリーヴルストってそんなでもなかったなという思い出になってしまいかねない。
僕はバウムクーヘンを探すことにした。調べてみると、バウムクーヘンを名乗るにはそれなりに厳しい基準があるらしく、それをクリアした店は実はそんなにないし、実はドイツ人はそんなにバウムクーヘンを日常的に食べていない事が分かった。
むしろ日本人の方がバウムクーヘンをやたらと食べているらしい。結婚式の引き出物でもやたらと頂くが、個人的にそれはめちゃくちゃ嬉しい。
そんなに一般的ではないにしろ、せっかくなので由緒あるお店へ行ってみた。
なんだか少しメルヘンな店内に焦ってテイクアウトすることにした。店員のおばちゃんとはほとんど言葉が通じなかったが、あたたかくもてなしてくださった。まじダンケシェーン。
バウムクーヘンは2つ買った。大きいバウムクーヘンを4等分に切ったものと、小さいバウムクーヘンの輪切りだ。
宿内は食べるの禁止なので川沿いのベンチで4等分の方を食べる。
これは!!!
かつてないほどしっとりと焼き上げられたバウムクーヘンは、フワフワでありながらも崩れることのない弾力。とても甘いが、甘党の僕には最適解にすら思えるバランス。外側は砂糖でコーティングされており、味と食感の変化も楽しめる至高の一品。ダンケシェーン。
朝早くからバウムクーヘンを焼くおばあちゃんの顔が目に浮かぶ。おばあちゃんが重ねてきた歳月を投影したかのようなバウムクーヘンの年輪は僕の心にも深く刻まれた。
最後にベルリンの壁ビジターセンターに向かったが、月曜日は閉館らしい。建物の前にいた人が教えてくれた。
ビジターセンターの前には屋外展示で、当時の壁や見張り台の残骸を見ることができた。
壁を無理やり超えた人は警告の後、射殺された。想像してみて欲しい。急に街のど真ん中に境界線を敷かれ、今からここを超えることは許されませんと強制されることを。
もしかしたらその線の反対側に家族が、恋人が住んでいるかもしれない。例えば、娘が嫁ぐことになりました、ということで家を出て行ったとする。そしてあくる日、境界線を敷かれて娘とは会えなくなりました、なんてことが起きていた訳である。
監視台で勤務していた兵士の言葉があった。
「なぜ罪のない人を射殺しなければならないのか」
兵士だって人間だ。それが不条理だったことくらい理解していたのだ。しかし彼も時代に歯向かうことはできなかったのだろう。
コンビニに寄るとおにぎりが売られていた。
“Korean food ONIGIRI”
いつから韓国料理に浮気していたのか。どうやらベジタリアンフードらしい。なるほど、確かに具次第ではベジタリアンも食べられる。
二つ買って仰天した。一つ2.5ユーロ(325円)もしたのだ。日本の感覚で値段も見ずに買ってしまった。こんなな高いおにぎりを宿に帰るまでに食べ切らなければならない。
ヨーロッパの夜は冷えます。
せんまさお
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