荷物がひどく重い。バスターミナルまでは歩いて20分ほど。しかし両手は大量の食料。背中には普段のバックパック。お腹側にはコンロなどその他キャンプグッズ。
身体75kg
右手5kg
左手5kg
背中18kg
お腹5kg
トータルで108kg
煩悩1つあたり1kg換算でぴったり。
背中に全て背負えるならもう少し楽だけど、バックパックが小さいのでとても入らない。
死に物狂いでバスターミナルへ到着。チケットを買って死んだようにベンチに座って待った。
バスが出発したのは予定から5分ほど過ぎてから。この時点で船の出航までの余裕は30分となった。
眠たいので寝ていたが、激しい山道を越えていくので左右に激しく振られ寝ていられない。
そうこうしている間に到着予定時刻を過ぎてしまった。嫌な気がする。
早く着けと祈る。乗り逃せば次は金曜日。港のあるホラ・スファキオンに安宿はなさそうなので一度ハニアに戻る必要までありそうだ。
到着したのは10:15。出航まであと15分。バスターミナルから船のチケット売り場まで徒歩5分。
無事にチケットを購入。しかし乗り場は想定外の入江の反対側。歩く、歩く、しかし重い。肩がひび割れそうだ。
出発予定時刻3分前に乗船完了。仮にうんこを挟んでいれば1分前とギリギリのタイミングであった。

荷物を階段下の邪魔にならないスペースに押し込み、船体横のベンチスペースに陣取る。

乗客はまばら。シーズンを少し過ぎているからか、採算なんて取れていなさそうなスカスカ具合。
屋上のデッキには比較的人がいたが、それでも席数の1割にも満たない乗客数。これは伸びやかな島暮らしに期待できそう。
船から身を乗り出してみれば鮮やかな青。青よりも青いブルー。
まるで絵具を、いや食紅を混ぜたような真っ青。こんなに青い海を僕は今までに見たことがない。
白いテトラポットと対照してその青さが際立つ。

結局、予定時刻から10分ほど遅れて出航。海風がデッキを吹き抜ける。寒い。
冷たい風が期待に沸く身体をクールダウンさせてくれる。海を挟んで反対側には断崖絶壁が続く。

30分ほどで経由地のリゾート地へ。乗客の1/3くらいが降りてしまった。
更に30分ほど進むと別のリゾート地へ。僕と老夫婦、ヒッピー風の男、爽やかな男の5人だけを残して他は降りてしまった。

さもありなん。ガヴドス島というものがどんなところかすでに見えてきた気がする。



ここからしばらく大海原が続く。ようやくクレタ島沿岸を離れ、ガヴドス島へ一直線に向かう。
青すぎる。海が青い。今まで見てきた青い海がまるで青ではなかったかのようにさえ思える。

さすがに身体が冷えてきたので船内の席へ移動する。
ヒッピー風の男と爽やかな男は目的地が同じであることが分かったからか打ち解けあったようだ。老夫婦は言葉を交わすことなく、旦那さんは新聞を読み、奥さんはソファに横になっている。
僕だけ取り残されてしまった。いやせっかく島に行くのだから一人でいたい。一人の時間を大切にしたい。
僕もソファに横になることにした。沿岸を離れれば波が高くなる。大きなフェリーではあるが、大きくゆっくりと揺れる。
揺り籠に寝るような穏やかな気持ちになるかなとかおしゃれなことを考えていたが、普通に酔ってきた。最近急に乗り物酔いをするようになってきた。悪路を走るバスでさえ、本だって読めるくらい乗り物酔いには強かったはずなのに。
目を瞑っていると楽なので、ソファの上でじっとしていると寝てしまった。
目が覚めると窓の外にはガヴドス島が見えていた。もうすぐ着くようだ。

出航から4時間、ガヴドス島へ到着。さすがに港でテントを張る訳にもいかないので、近くのビーチへ向かう。しかしいきなり急な坂が続く。
腕と肩が限界に近い。ようやく下り坂。前から軍服姿のおじさんが歩いてきた。
僕の姿を見て、マッスルポーズをしている。
「トレーニングだ!」
ビーチはまだ遠いかと聞くと、あと少しらしい。どのビーチもキャンプして大丈夫とのこと。
休み休みビーチへ向かい、約1時間でカラキニコビーチへ着いた。
程よいところにはどこも既にテントが張られている。
ようやく手ごろな場所を見つけた。オリーブの木の裏手。強い海風を凌げそうだ。
さっそくテントを張り、水着に着替えて海へ入る。テントは見かけたが、人は誰もいない。いくつかレストランやミニショップはあるが、シーズンオフでどこも閉まっている。プライベートビーチだ。
そうこうしている間に日が傾いてきた。夕飯の準備をしなければ。
とりあえずパスタを茹で、ボロネーゼソースとコンビーフを和える。タマネギのスープも作り、完璧な初日。

しかしコンビーフは苦手だ。物によるんだろうけど、一番安かったコンビーフはなんかの動物の餌のような香りがする。あと2つもある。困った。
食事を終えた頃に少し冷え始めたのでテントに篭る。Kindleで読書に励むしかやることがない。
夜もふけた頃、おしっこをしようとテントを開けたら声が漏れた。
「Wow…」
まだおしっこは漏れていない。
そこには満点の星空が待っていた。ラッキーなことに新月のようで、星がよく見えている。

星を眺めながらおしっこ。トイレも無ェ、シャワーも無ェ、自動車(くるま)もそれほど走って無ェ、でもこんな村いいなあ。


天の川まで丸見え。

せんまさお

最新記事 by せんまさお (全て見る)
- 【世界一周#413】陽気な国だ - 2024年9月24日
- 【世界一周#412】逆走ハイウェイ - 2024年9月23日
- 【世界一周#411】アレナメヒコ - 2024年9月22日
コメントを残す