近くのカフェの前にアニ遺跡へ向かうバスが来るらしい。定かではない情報だ。普通はタクシーかツアーで行くらしい。
アニ遺跡なんて聞いたこともなかったが、イランで会ったHヤシ君が一押ししていたので行ってみることに。カルスから1時間くらいで行けるらしい。
なんか花がいっぱい咲いている遺跡らしい。ワクワクしながらカフェの前に向かうと、もうバスは来ていた。
ドライバーにアニ遺跡行きですか?と聞くと、とても小さくうなずく。乗り込んで待つ。乗客は僕の他に2人だけ。料金を支払い出発。
バスは猛烈に飛ばす。一般道だが時速100kmを超えているメーターが見える。
そして道中で他の二人は降りてしまった。どうやらアニ遺跡に向かっているのは僕一人だけらしい。
飛ばしまくったからか、バスが軽かったからか分からないが、聞いていた話より10分早い50分ほどで到着。
1時間半後にバスは戻るらしく、それまでに戻ってこいとのこと。次のバスは3時間半後なのでそれまで待つのもしんどいのでちゃっちゃと回ることにした。
「カムサハムニダー!!!」
なんか突然感謝された。大声のする方へ振り返ると、東アジア人3人組がいた。たぶん韓国人だろう。
話しかけると、僕を韓国人だと思って試したらしい。気持ちは分かる。
とにかく僕には時間がない。チケットを買って猛スピードで歩く。
すごいぞ!草原のあちこちに遺跡が建っているぞ!あと花は全て枯れているぞ!
そりゃそうだ、もう秋だ。まあいい、見える限り一番遠い遺跡に向かって歩く。
ここはアルメニアとの国境にある遺跡。争いの中で捨てられた街。17世期以降ずっと放置されているらしい。
遺跡のほとりには大きな谷がある。谷には川が流れ、その対岸はアルメニアだ。アルメニア側には監視台が見える。
ちなみにアルメニアでロンギヌスの槍とかノアの箱舟のカケラを見た街はここから60kmくらいしかない。
しかし、アルメニアとトルコの国境はその関係の悪さから閉ざされている。
撃ち殺されたりしないかな、とドキドキしながら国境ギリギリあたりの遺跡まで隈なく見て回る。放置されていた割には保存状態がいい。
どう見ても教会なモスクもある。屋根は抜けてボロボロだが、石造りだからか、中に入ってみるとまだまだしっかりしているように見える。
他に観光客もあんまりいないので独り占めだ。
丘の上には要塞跡がある。急いで登る。頂上にはトルコ国境。こっからトルコだぞ、と主張しているのか。丘の上からアルメニア側を見てみると、同じように遺跡が建っているのが見える。
今は国境で隔てられているが、昔は一つの街だったんだろう。
なんで国境を跨ぐと文化や言語まで違うんだろうと疑問だったが、おそらく、領土をお互いに広げたり、攻め入ったりした結果、その境界ができ、それが国境になったから、急に色々変わるんだろうなと納得した。
昔々はもっとぼんやりした境界だったんだろうが、今みたいにキッチリ境界を決めて武力でそれを守るから、その境界では分けきれない問題が発生してしまうんだろう。
クルディスタンだってそうなんじゃないか。当人達の問題なのに、国として認めるか否かで他国が干渉してきて揉める。国境なんかない時代にはクルド人がいる場所がクルディスタンだったんだろう。
存分に満喫した。素晴らしい遺跡だ。どうやら世界遺産登録に推されているらしい。
バスに戻る。
「グッドだったか?」
ペリーグッドだ、と答えると、ずっと険しい顔をしていたドライバーが初めて微笑んだ。
帰り道も僕ひとり。バスは往路以上に飛ばす。たった40分で街へ戻ってきた。1時間かかるという話では。
カルス市内にも遺跡がある。これまた山の上に要塞があるらしい。今日も登る登る。
風が気持ちいい。早起きすると色々できていいもんだな。
山を降り、道端の店でお茶を注文。歩道に置かれた椅子に腰掛け、お茶を飲む。いい時間だ。
飲み終わって、お代を払おうとした。
「フリー」
えっ?驚いて声が出た。言葉はよく通じないが、お代はいらないと言っている。
びっくりした。なんてことだ。お店にご馳走してもらってしまった。
ありがとう、と喜んで伝えると、彼は少し照れてはにかんでいた。
ヤバイなぁ。トルコに入ってからいい気分だ。素敵な国だなぁ。
せんまさお
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