本当は今日、カザフスタン行きの電車に乗ろうと思っていたので暇だ。ウルムチ市内で観たいところはもうないし、郊外に行くのも少し面倒だ。
あまりに暑いので近所の巨大ショッピングモールへ。誰がこんな大都会のウイグル自治区を想像しただろうか。H&Mや無印良品までテナントに入っている。
しかし例のごとく監視は厳しい。無印良品に入るのに荷物検査と金属探知機のスキャンが必要だなんていけてない。
カフェでコーヒーを飲む。たまには贅沢したい。毎朝インスタントコーヒーを淹れているが、中国で買ったインスタントコーヒーはネスカフェのものでも口に合わない。

しばらく本を読んで時間を潰す。いいリフレッシュになった。
電車は明日月曜日の夜にウルムチを出て、水曜日の早朝にカザフスタンの旧首都であるアルマティに到着する予定だ。
途中に食料を買えるのか情報が曖昧なところがあり、念のためにパンや飲み物を買い込んでおいた。この辺りの干しぶどうは味がいいらしいので、500gで16元(256円程度)のものを買った。枝がついたまま干しており、逆に美味しそうだ。
宿に戻ると同室にフランス人がやってきた。彼は中国を旅行するにあたって漢字を勉強してきたらしい。
「日本も漢字を使うんだよね?」
使うけど少し違う字だということを伝えた。
「中国語を読むことができるの?」
ちょっとは理解できるけど、読めはしない。漢字はアルファベットのような表音文字とは異なり、絵のように、見れば意味が伝わる表意文字だということを伝えた。
彼は語学が好きらしく、日本語も少し勉強したらしい。

「”彼”と”彼女”、”私”は分かる。”俺”って何?」
日本のアニメのキャラクターが口にするから覚えたらしい。男のインフォーマルな一人称だと答えた。本当に日本のアニメって有名なんだな。
「そういえば”Dattebayo”って何?」

語尾に付けるの?と聞くので吹き出してしまった。それはナルトだけかな、と答えると、どういう意味なの?と言うので、”です”と同じかな、と答えておいた。
「そしたら、”俺はフランス人だってばよ!”これで通じる?」
もう笑いを堪え切れない。私はフランス人です、の方がいいけど、そっちの方がウケると思うよ、と伝えておいた。
「タクシー運転手に言ってみるわ!」
と、”俺はフランス人だってばよ!”を反復して口ずさんでいる。もう勘弁してよ。整った彫りの深い顔で言うもんだから可笑しくてしょうがない。
「恨み節っていう日本の音楽が好きなんだけど、どういう意味なの?」
恨みの英語を知らなかったので、辞書で調べて見せると、「オゥ」と漏らしていた。節はリズムみたいなもんだと伝えておいた。やっぱり言語が違うから1:1で対応する言葉が見つからないことはよくある。
彼は中国語を教えてもらいにロビーに行ってくると出て行った。僕もシャワーを浴びてからロビーに行くと、中国語の辞書片手におじさんに中国語を教えてもらっていた。
僕もくつろいでいると、べらぼうにかわいい宿のスタッフがスイカをくれた。フリースイカだから食べていいよ、と。シャリシャリ齧りながら、中国最後の夜だということを思い出した。

せんまさお

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