朝食はトーストとジャムとスパムペースト。スパムペーストは塩気が効いていてものすごくおいしい。塩気が薄い遊牧民の食事が続いていたので嬉しい。
魚肉ソーセージみたいなチューブに入っているので最後まで捻り出して食べきる。と思いきや、それを更にガイドのパタさんが吸って本当に食べきった。
ミスチルの桜井さん似のおじさんとお別れし、9時半くらいに出発。
進むにつれて雨が降りそうな空模様に。木陰で昼食をとることに。すぐに雨が降ってきた。木陰とはいえ、松のような針葉樹の下なのでまあまあ濡れる。

レインコートを着たらまた晴れた。ちなみに雨が降ると肌寒くなるが、晴れているときは半袖になれるくらい暑い。馬に乗りながら服を着たり脱いだりすると馬がびっくりするので腕まくりしたりしながら凌ぐ必要がある。













晴れている間に一気に移動し、今日はエイトレイクという8つの湖の内、最も大きな湖のほとりにやってきた。


テントを建てるともう我慢できなくなって湖で身体を洗った。とにかくシャワーを浴びられないというのは僕はものすごくストレスなのだ。なんでもいいから水で汗を流したかった。
近くに他のツアー客が来ているが関係ない。パンツ一丁でAラさんと身体を洗いまくる。
ちなみに当然ながら石鹸なんかは使っていない。それでもめちゃくちゃ気持ちいい。
無我夢中でバシャバシャしているとAラさんが水浴びしている方にまさ汚水が流れて行ったようで叫んでいる。
ついでにTシャツも洗って干している間に日光浴。とんでもなくリフレッシュ。気分まで爽やか。
普段、当たり前に浴びているシャワーがないだけで気分までどんよりしてくる。温水なんて贅沢は言わない。石鹸なんていう贅沢も言わない。とにかく水が浴びられるだけで幸せなのだ。
ものの30分ほどでTシャツは乾き、服を着てテントに戻った。近くに小高い丘があるので登ってみようと歩いていると、先ほどのツアー客が腕相撲大会をしていた。
呼び止められ、飛び入り参加することに。どうやら香港から来た方々のようで英語が通じた。

一人目は明らかに身体のでかい香港人。確実に負けると半ば諦めて挑んだが、意外とあっさり勝ってしまった。
自慢ではないが、僕は骨格はしっかりしているのに対して筋肉は辛うじてチョップスティックを持てるくらいしかない。
なんやこの見掛け倒し香港人はと心の中で罵倒しながら左腕でも挑戦したらあっさり負けた。悔しい!
すると今度はマッチョのモンゴル人が勝負を挑んできた。見掛け倒し香港人に負けたばかりで傷が癒えない僕の腕を弄ぶように揺さぶるモンゴル人。あっさり両腕とも負けた。悔しい!
すると隣にいたガリガリモンゴル人がモンゴル相撲をしようと言い出した。このガリガリモンゴル人になら勝てる気がする、吹き飛ばしてくれるわ!

ルールを聞いたがよく分からない。とりあえず肘か膝か背中が地面に着けば負けらしい。勝ちがほぼ確の僕にルールなんて関係ない。草原に沈めてやる。ガリガリモンゴル人の右膝めがけてタックルすると同時にそれを抱え上げようとする。
ガリガリモンゴル人はそれをスルリと避けて僕の腕を掴む。僕は腕を激しく振り、彼の手から逃れる。
僕は執拗に彼の右膝を狙う。それ以外にどうすればいいか分からないからだ。踏み込んだ右足を逆に抱え上げられ、僕は草原に沈んだ。
空が綺麗だ。ガリガリモンゴル人は僕に手を指し出し、大丈夫か、と聞いてきた。身体は大丈夫。心はボロボロだ。
ゼーハー言いながら座り込んでいると、マッチョモンゴル人がモンゴル相撲の勝負を挑んできた。
ヤケクソで勝負を受ける。僕は右膝めがけてタックルした。右膝タックル以外の経験値が0なので、比較的レベルの高い右膝タックルを選ぶのは当然の選択だ。
僕の両手は確実にマッチョモンゴル人の右膝を捉えた。あとは持ち上げてひっくり返すだけだ。
マッチョモンゴル人は右足を抱えられたままにもかかわらず、僕の左足を掴み、僕は後ろにひっくり返された。
「グフゥ」声が漏れた。地面がコンクリートだったら確実にやられていた。ここがモンゴルでよかった。僕はいぼ痔が痛んだがそれ以外はノーダメージでマッチョモンゴル人との勝負を終えることができた。実質勝ちと言ってもいいだろう。
一旦テントに引き返す。湖の水で作った紅茶を飲む。こういう時は冷たい物が飲みたいが、一度沸騰させているので熱い。生水は寄生虫が怖い。よく見りゃ水草とかプランクトンとかが沈んでいるので上澄みだけ飲んでなかったことにする。
一息ついていると香港人とガイドのマッチョモンゴル人とガリガリモンゴル人が帰っていく。バイバイと手を振って見送る。
実はモンゴルでモンゴル相撲をするのが夢だったので、思わぬところで叶ってしまった。ガイドのパタさんは50歳ということで誘いずらかったのでちょうどよかった。ラッキーだ。
よくやく丘に登ると湖が一望できた。僕らがテントを張っているところだけ岸が不自然に直前になっているので人の手が入っているのかもしれない。その証拠に、少しぬかるんでいる場所がある。きっと埋め立てた地面が沈んでいっているんだろう。




丘から降り、茂みに入ってみた。ハエまみれだ。ついでに蚊がいる。ハエはいいけど蚊はやめてほしい。蚊が止まらないように微妙に身体を動かし続けながらウロウロしていると疲れた。









夕飯はヤクのスジ肉入りスープヌードル。スジ肉が柔らかいのでたぶん缶詰だろう。今日は激しく動いたのでめちゃくちゃ美味しく感じる。

今日はまだまだ終わらない。焚き火でもしようと薪を集めていると、日が暮れそうになったので夕陽が見えそうなところに行ってみた。
そこには別グループがテントを張っていた。たぶんこの湖は短期ツアーの定番スポットなんだろう。小綺麗な欧米人達がアウトドアチェアに座ってなんかしていた。
声をかけてみると、その輪に入っていた女性のモンゴル人ガイドが僕らも一緒になんかしましょうと誘ってきた。
どうやら暇を持て余しているらしく、なんかみんなでできるゲームを知らないか?とのこと。仮に僕が合コン狂いだったら知っていたかもしれないが、僕は金曜日の夜はYouTubeを見て笑って過ごしていたので知らない。
ガイドが閃いた。
「伝言ゲームしましょう」
国籍がバラバラ(モンゴル、アメリカ、フランス、日本)なので、なんか難しそうだ。
隣り合う人の国籍が被らないように輪になる。最初の人は母国の言葉を言う。最後に答え合わせをして、途中で明らかに間違えた人が罰ゲームで歌ったり踊ったりする。
実際のところ、欧米人グループのガイドが場を盛り上げるために程よく皆均等に罰ゲームをやっていくかんじになった。
これ実は結構難しくて、僕は「馬」と伝言したのに、最後には「ウマルシェ」みたいなかんじになっていた。
ちなみに僕の隣は僕らのガイドのパタさんだったが、聞き返す度に違う発音で言ってくるので困るし、答え合わせの時にいいかんじで間違えてない雰囲気の発音で言うので罰ゲームから逃れていた。世渡り上手だ。
みんなヘンテコな歌や踊りで絶妙な空気感が漂っていたが、モンゴル人達の歌は上手な上に壮大で雄大。夕暮れ時の草原にマッチしてウルウルきた。
いい加減寒くなってきた頃に解散。僕らのテントの近くで焚き火の準備をしていると言うと、フランス人2人とアメリカ人がやってきた。ちなみにフランス人はパリピでアメリカ人はアンニュイな感じだ。
焚き火をしているとそんなに話さないのでそれもまたいい。伝言ゲームの絶妙な空気から解放されて皆ボーッとしている。

フランス人達は明日の朝が早いからとテントに帰っていった。アメリカ人は実はフランス人達とは別グループで、たまたま会っただけらしく、ヒッチハイクでモンゴルを旅しているらしい。

3人になった瞬間、彼は覚醒した。
「アメリカはゴミの問題を隠している…こうやって焚き火を囲んで毎日話しているのさ…靴を履かなくても寒くはないさ…オナラは自然現象さ…」
ブツクサとずっと小声の高速英語でなんか話している。僕とAラさんはウトウトしながら聞いたふりをしていた。

僕は暇なので薪を折って遊んでいた。火も消えかけたころ、僕らは解散した。
「明日の朝、日の出を見よう…また会えることを願っているよ…」
彼もどこかへ帰って行った。
僕もテントに戻り寝ることにした。服が煙臭い。シャンプーが使えないので髪もベトベトだ。まあいいや。

せんまさお

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