中華民国建国の父、孫文が眠る墓は小高い丘の上にある。まず墓のある公園まで緩やかな坂を40分近く歩いた。
本日の南京市の気温は36℃である。いくら水を飲んでもあっという間に汗となって流れ出ていく。
なぜこんな日に黒いTシャツなんか着てきたんだろう。水をガブガブ飲むが、身体の温度は全く下がらない。
ようやく入り口に着いたが、入場料がかかるようだ。しかも100元(1,650円程度)もする。100元もあればランチとマッサージくらいは行ける。
しかしせっかく中国に来たのなら、その建国の旗を振った偉人のお墓参りくらいしておきたい。
しぶしぶ受付の方にお墓が見たいですと伝えると、「フリーよ」とのこと。聞き間違えたのかと思って聞き返すと、「フリーよ」とまた返ってきた。
ただでさえ美人な受付の方がフリーという言葉に修飾されてワンランク上の美人に見えてきた。ありがとう、それじゃあまた、と行こうとすると、「WeChatのアカウントはある?」と聞いてきたではないか。
ただならぬ下心を気づかれたのか、逆ナンやでしかしとテンションアゲアゲのアゲでWeChatを起動すると、彼女は壁に貼ってあるポスターのQRコードを指差し、それを読み取って無料チケットを発行しろということだったらしい。
無料チケットを掲げて偉そうにゲートを通ると、392段にも及ぶという果てしない階段が待ち構えていた。
気温は変わらず36℃。デブには堪える。時間は午前11時45分。南中を前に、木々はその真下にしか陰を作っていない。限りある陰にはおばちゃん、そしておじちゃんが陣取っており、ロクに歩くスペースがない。
近くにあったトイレで顔と腕を水で冷やす。少し楽になったので階段を登り始める。隣でおばちゃんが記念写真を撮っている。大半の観光客は公園内を走る小型の観光バスに乗って来ているので、体力にはまだ余裕が感じられる。僕はケチったのですでに身体が溶けそうだ。
ジワジワと登り、ようやくお墓へ着いた。階段を振り返ると、南京市内が一望できる。ここで風でも吹いてくれれば気持ちがいいのだが、今日に限って快晴無風だ。
お墓へ失礼すると、孫文の彫刻が施された美しい白い棺が置かれている。英雄の周りをぐるっと一周して眺めた。
ところで日本に英雄はいるのだろうか。以前フィリピン人に聞かれたことがあるのだが、よく分からないので答えることができなかった。
分野別に挙げたり、個人的に挙げたりとかならば言えるのだろうが、日本という国の英雄って誰なんだろうか。
例えば、侵略から国家を守ったとか、独立運動の旗を振ったとか、革命で悪政をひっくり返したとかあれば英雄になり得るんだろうけど、そんな歴史なかったり、ピンときたりする人がいない。革命で言えば坂本龍馬なんかが当てはまるかもしれないが、日本の英雄かと言われれば一歴史上の人物感は否めない。
というのも、大概、諸外国の英雄で名前を挙げられれば、なんか聞いたことあるなぁレベルで知っていたりするが、果たして坂本龍馬と答えて知っている外国人はいるのだろうか。
こんなとき誰を答えればいいか何かアイデアがあれば誰か教えてほしい。
来た道を帰ろうとすると、出口はあっちだと別の道へ誘導された。進んでみるが、分岐がいくつもあり道に迷ってしまった。
木々が生い茂る道を歩く。時折、人が通るので危なくはないんだろうし、木の陰のおかげで涼しくはないものの耐えられる。
何かの植物の綿毛が飛んでいる。そしてそれに紛れて綿毛のような小さな虫も飛んでいる。全身がモコモコの白い毛で覆われた蜂のような虫で、腕にとまったのでよく見てみたらかわいい。
水が底をつきそうなところで地下鉄の駅へ着いた。ギリギリ生き延びたが、中国の大きな都市の片隅で干からびて死ぬところだった。
宿に預けていたバックパックを受け取り、電車で一気に北上。天津という街へやってきた。宿は上々。値段はキツイ。
せんまさお
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