科挙試験といえばカンニング。シャツ中に回答を書き込んでから試験に臨む想像を一度はしたことがあるだろう。
上海を離れ、かつて科挙試験が行われていた街、南京へやってきた。
科挙試験は要は官僚の登用試験。受かればその社会的地位の高さたるや、マジハンパないの一言に尽きる。ただしその難易度や倍率の高さ故に、一生をかけても受からず、精神を患うものや、過労死する者も当然存在した。
ちなみに発狂して虎になったことで有名な山月記に登場する李徴は科挙試験を突破した元官僚である。彼は詩人になろうと決意し、エリート街道を捨てたはいいが徐々に困窮し、家族を養うために妥協して地方公務員的な職に就くが、プライドを捨てきれずになんやかんやで発狂して虎になったのである。虎になるというブッ飛んだストーリーが濃すぎるあまり、それ以外のことを忘れている方も多いだろう。
貴族による統治に一石を投じた科挙制度。有能な人材を発掘して力を持たせることで国を良くしようとしたのだ。しかし、実際のところは勉学に十分な時間と費用をかけることができる裕福な家庭に生まれたものしか受験は叶わなかったそうな。
受かればその一族は安泰。落ち続ければ、一族の存亡に関わるということもあり、例のカンニングを始めとするバラエティに富んだチートが行われてきたようだが、悪質と判断された場合は死刑が執行された。
清の時代末期に試験は廃止されたが、標準試験という制度は高く評価され、欧米諸国で19世紀頃から導入されることになる。
的なことを南京科挙博物館でじっくりじっくり見ていたら日が暮れてきた。
近くに孔子の廟があった。孔子は中国人から今でも絶大な人気を誇る。中国の至る所に中山路、中山公園があるが、中山は孔子の苗字らしい。孔子にあやかったネーミングなのだ。
平日にもかかわらず、廟は中国人観光客で溢れかえっている。孔子の巨大な石像や、巨大な掛け軸が祀られており、人々は線香をあげている。
あまり広くはないので外に出たが、廟を囲むように街が栄えている。他の観光都市でもみられたように、景観を守って古い町並みを保っている。KFCも白と茶色を基調とした店舗、更に看板は漢字表記なので存在感0である。
夕飯を食べ、ライトアップされた街を眺めながら街角のベンチに座った。川には観光船が何艘も漂っている。中国のこういう派手にライトアップするかんじ、嫌いじゃない。
半分くらいがチョコでできたお気に入りのアイスを齧りながら、とことん試験を受けずに進んできた人生を振り返り、安堵していた。
せんまさお
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