旅をしていると、世界各地で「日本」を見かけます。それは物であったり、人々の持つイメージであったりと多種多様です。
もはや懐かしくも感じる日本の一片であったり、どこか違和感のある日本であったり、もはや偽物であったり。
僕は日本人ですので、やはり海外で見かける日本には敏感です。
僕が海外で見た日本をいくつか紹介します。そして、日本がどう世界に馴染んでいるか知っていただければと思います。
日本車
訪れた全ての国で日本車を見かけました。中には日本で使われていたであろう中古車が走っていたりします。
フィリピンで「右へ曲がります」という音声がトラックから流れているのを聞いたときは、なんとなく懐かしい気持ちになりました。
日本の車は世界で最も信用のある車の内のひとつです。日本は車の国であり、車の国は日本なのです。
例え言葉が通じなくても、僕が日本人だと分かると、積極的に「トヨタ!ホンダ!」と自動車メーカーの名前を言ってくれます。それほど日本車は世界に普及しているのです。
日本人のお金持ちは欧州メーカーの車を選びがちですが、国によっては日本車は憧れの存在。結局、一般車に限っては、輸入の関税で価格差が生まれているので、国によっては日本車が高級車になっているのです。
日本車であることをアピールするために、ミャンマーでは日本語の車体プリントを剥がしません。
「桜交通」と書かれた観光バスが、都市を結ぶ夜行バスとして運行されていたり、福山通運のトラックがミャンマーでも運送業として走っていたりするのです。
とにかく壊れないという信用の高い日本車は世界中で愛され、今日も世界を駆け抜けています。
寿司
日本といえば寿司。寿司といえば日本。
「日本人は毎日寿司を食べるの?」
何度聞かれた質問でしょう。寿司は高いから毎日は食べないスペシャルフードなんだよ、と説明しています。ちゃんとしたものを食べようとすると、中には2貫でうん十ドルするんだと話すと、驚かれます。
世界中に日本食レストランがありますが、そのほとんどの店で寿司が提供され、看板メニューとして掲げられています。そして、本場からはかけ離れた寿司の概念が広まっているように思います。しかし、それで少しでも日本に想いを寄せてくれるなら、それでもいいのかもしれません。
日本製
とにかく壊れないという信用があるのは日本車だけではありません。日本製であればなんでもかんでも良いものだと思われています。
ヨーロッパのメーカーが作る、値段が高くて良い品質ものとは違い、そこそこの値段で良い品質なころが世界中で人気を得ている理由だと思います。
しかしながら、途上国では日本製はやはり高い物。そのため、途上国向けの製品を作る中国や韓国企業のブランドの方が、一般には浸透してきているように思いました。
日本ブランドに甘えていては、形勢が逆転する日も遠くはないでしょう。
また、日本製を謳い、わざわざ日本語(怪しい日本語)をプリントして、実際には海外で作られている製品を数多く見かけました。フェイクメイドインジャパンが蔓延っているのは心外です。
アニメ
世界中で愛される日本のアニメ。日本のアニメのクオリティとボリュームは確実に世界一です。
日本好きな外国人と聞けば、なんとなくアニメが好きなのかなと思ってしまうくらい、旅をしていると、日本のアニメが好きな外国人と仲良くなりがちです。そして、日本語を少し話せる外国人のほとんどが、アニメで覚えたと言っていました。
イランでは、キャプテン翼や水戸黄門のアニメがテレビで放送されている(昔、日本のアニメ会社からライセンスを受けたらしい)らしく、ある女性は「理想の男性は翼くんよ」と言っていて驚きました。
そんな日本のアニメ文化ですが、世界中でライセンスを受けていない海賊版の製品が幅を利かせています。どこか違和感のあるピカチュウやドラえもんが世界中で愛されています。そして、残念ながら、それが日本のアニメ由来のものであるという認識は恐らく広まっておらず、なんか知らないけどかわいいキャラクターとして生きているのです。複雑な気持ちです。
中国と混同
日本人の多くが、オランダとベルギーの違いを理解していないように、世界の多くの人が、中国と日本の違いを明確に理解していません。そのため、この東アジア人顔を見れば、とりあえずニーハオと挨拶してきます。
仮に日本人だと分かっても、ニーハオも通じるんだろう?くらいの感じで言われることも頻繁にあります。
というのも、欧米人にハローと言うのと似たような感覚らしいのです。(英語は世界共通言語なので違うかもしれませんが)
また、地域によっては、国が変わっても挨拶は一緒という国々もあります。(イスラム教を信仰する国は同じ挨拶らしい)
とにかく、ほぼ同じような見た目なんだから、似たようなもんだろうくらいのイメージです。
中には、合掌してお辞儀までしてくる人がいます。日本にも合掌の文化はありますが、恐らくタイの挨拶とゴッチャになっているのでしょう。ここまで来ると、顔が平たいアジア人は似たようなジャンルの人たちになるのです。
そして、日本食レストランなのに、メニューには中華料理が並び、チャイナドレスを着たキャラクターが寿司を食べる看板が掲げられるのです。
禅
旅をしていると、スピリチュアルなことに敏感なヨーロピアンによく合います。旅をしていると、自分と向き合う時間が増えるからかもしれません。いや、旅をしている人には変わり者が多いからでしょうか。
中国の達磨大師(インド生まれ)を祖とする禅宗ですが、鎌倉時代に道元によって日本に持ち帰られており、中国で衰退した後も、日本では発展を続けました。
かの有名なアップル創業者のスティーブ・ジョブズが傾倒したことで欧米で一躍もてはやされ、ZENもしくは宗教色を排したマインドフルネスという概念で浸透していきます。
「禅」と聞くと、日本人であっても「?」マークが浮かんできますが、欲を排することと聞けばピンとくるかもしれません。仏教においては、無欲を善として推奨しています。地獄はもちろん、人間界も天界も全ての世界が苦しいものであるという前提で、この輪廻転生から抜け出し、二度と生を受けず、完全な無に到達することが目的なのであります。
一方で、ヨーロッパで流行しているのはZENです。こちらは宗教色が排除されており、健康や心の平穏のために行われます。つまり、欲を排すどころか、欲を満たすために行われるのです。
そのため、禅を組む時は、無になりやすい場所、例えば洞窟や寺などが選ばれますが、一方で僕が海外で見かけるZENは息を飲むような絶景や美しい観光地で行われています。その方がスッキリするからでしょうか。
そして、その絶景を前にZENを組む人をみて思います。禅とはやっぱり違うものだな、と。
※全ての解釈は僕の個人的な見解であり、どちらか一方のみを支持する物ではありません。
空手
日本人だと伝えると、「空手できる?」と聞かれることが度々あります。というのも、世界各地に空手教室があるのです。
街の張り紙を見てみると、大都市であれば高確率で空手教室の張り紙が貼られています。旅で出会った人の中にも、昔空手をしていた、という人が何人もいました。
そして、僕は空手ができない、と伝えると、「そうか、普通の日本人か」と言われたこともありました。
少なくとも、空手は日本の武術だという認識は定着しているようですが、多くの人は空手もカンフーも柔道も似たようなものだという認識のようで、「日本は空手の国だな、ブルース・リーが有名だな」と混同している人が多かった印象です。まあ、分からなくもないです。
ハルキムラカミ
海外の旅人と話していると、「ハルキムラカミ」を読んだことがあるという人にたまに会います。もちろん村上春樹さんは日本でも有名ですが、海外での人気ぶりに驚きます。
ゲストハウスには各国の旅人が残していった本が積まれているものなのですが、日本人宿でもない限り、日本の書籍を目にすることは滅多にありません(地球の歩き方はたまに見かけます)。しかし、村上春樹さんの本だけは、英語版ではありますが、よく見かけるのです。
なんとなく海外でも読まれているという話を聞いたことはありましたが、想像以上に海外で愛されているようです。
性的コンテンツ
日本の性的なコンテンツはすごいという認識が世界中で広まっています。そのこと自体の是非については触れません。
特に、中国、韓国、台湾、香港の方からの人気はすさまじく、よくそういう話をされます。びっくりしたのが、香港の郵便局員にまで、そういう話をされたことです。
もちろん、ヨーロッパや中東、アフリカでもそういう話をされました。真面目なイメージを持たれているらしい日本ですが、そのギャップが海外の方からすれば謎のようです。
なぜ分かってくれないのか
旅をしていると、誤った日本のイメージを持っている方に数多く出会います。
「なぜ分かってくれないんだ」
とムカムカすることもありましたが、冷静に考えると、思い上がっていた部分もあったように思います。
日本は大きな国ですし、経済的にも豊かで、技術力は世界に誇るレベルです。しかし、だからといって、世界中の人が日本を正しく理解できているということにはなりません。
そもそも、日本という国を知らない人もいます。日本の場所を知らない人はもっといます。
僕は日本が大好きですし、日本人であることを誇りに思っています。日本で生まれ育ちましたから。
「日本、いいよね」と言ってくださる方も多く、それはありがたいことなのですが、それは単なるイメージに過ぎません。
日本に対する良いイメージは、先人たちが築いてくれた、我々の財産なのです。それを盾に、「俺は日本人だぞ」と偉そうに思い上がっている旅人もいます。
これからの世界で日本のイメージを作っていくのは今の世代です。子供たちが「なんだ日本人か」と思われないようにも、日本をいい社会にしていき、正しい日本の姿を世界に伝えていきたいものです。僕には何ができるでしょうか。
せんまさお
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