日本で普通に生きていれば、お金を目的とした詐欺に遭うリスクは高くありませんが、国によっては外国人をターゲットとした詐欺が横行しており、注意が必要です。
「声をかけてきたら注意しろ」とよく言いますが、別に悪くない人も声をかけてくるので、一応話を聞くことが旅を楽しむコツなのかなとも思いますが、経験値が必要なのも確かです。
そこで、僕が経験しそうになった詐欺の手口をいくつかご紹介します。詐欺の被害者が減り、詐欺師の仕事がなくなって、彼らが正しいことをしてご飯を食べるようになることを願います。
もくじ
旧正月で宿がない事件(タイ)
マレーシアからタイへ電車で移動し、駅から安宿が集まるカオサン通りへ移動しようとしたときの話です。駅にTourist Informationがあったので、行き方を聞いたところ「知り合いのトゥクトゥクドライバーを紹介してあげる、と一人の男を紹介されました。そして値段を聞いてびっくりの、500バーツ(当時1500円程度)だというのです。相場は一人30バーツ(90円程度)と聞いていたので、これは詐欺だな、と思いながらも交渉して二人で50バーツ(150円程度)まで下げてもらいました。
出発してしばらく経った頃、「宿を探しているのなら今は旧正月で空いてないぞ」と言ってきました。そして勝手に宿の紹介所へ連れて行くと、一軒のオフィスへ連れていかれました。言われるがまま、オフィスに入ると一人の女性がおり、男から何か聞くと、どこかへ電話をかけ、ものの数秒で「今カオサン通りに宿はないわよ」と言ってきました。
そもそもボッタくろうとした上に、勝手にこんなところに連れてこられて、挙句の果てにものの数秒で全ての宿の空室を調べたなんて、さすがに信じられるはずもなく、とにかくカオサン通りへ行きなさいと強めに伝え、無理矢理行ってもらうと、飛び込んだ1件目の宿で空室が見つかりました。
言われたことを鵜呑みにするのではなく、自分の目で確かめることが大切だと思います。
半分エジプト人事件(エジプト)
ギザの三大ピラミッドがあるエリアに行くために、最寄りの駅まで地下鉄で向かいました。地下鉄駅からピラミッドまでは、公共のバスかタクシーで行く必要があるのですが、地下鉄の改札付近で1組の親子に声をかけられました。「これからピラミッドに行くからタクシーをシェアしないか」ということだそうで、本当は安いバスで向かうつもりでしたが、せっかくなのでタクシーをシェアして向かうことにしました。
タクシーの中で彼が言うには、「君たちは僕に着いてくればエジプト人価格で中に入れるよ。僕の友達ということは、君たちはもう半分旅行者で半分エジプト人みたいなもんだからね。」とのこと。さすがに不信感が出てきたのですが、とりあえずギリギリまで様子を見ることにしました。
タクシーが到着したのは確かに本来の入り口から離れた場所で、一軒のオフィスのようなところへ案内されました。
「入場料は馬車代込で700ポンド(当時4,900円程度)を払ってくれ」
入場料は国際青年証(30歳以下の人が持てる青年の証)を使えば100ポンド(700円程度)なので、大半が馬車代ということになりますが、そもそも歩いて回るつもりだったので断りました。すると、急に馬車に乗らなければ暑いやらなんやらちょっと強気で迫ってきましたが、断るしかないので断って普通の入場ゲートへ向かいました。すると、エジプト人らしき方々も同じ入り口から入場していました。
つまり、そもそもの話が嘘だったのです。子連れというのがズルいなと思いました。うまい話はなかなかないものです。雰囲気に流されないように気をつけましょう。
偽警官事件(タイ)
世界各地に現れる偽警官ですが、僕も一度タイで遭遇しました。ビーチからバンコク市内へ帰ってきたのは日が沈んだ後。バスから降りると、突然2名の警察官が声をかけてきました。
「荷物を見せろ」
何の負い目もない僕たちは鞄を見せたのですが、警察官の様子が少しおかしく、鞄の中の物を出してはその辺りに投げ捨てるのです。
そして「タバコはあるか?」「何歳だ?」とよく分からないことを聞いてきます。
僕は当時22歳だったので、タイの法律的にもタバコはOKの年齢でしたが、没収しようとしてきます。その時、僕は複数の日本人と一緒だったのですが、皆さすがに不審がり、警察官が物をその辺りに投げ捨てることを強く注意すると二人は去っていきました。
後から知りましたが、荷物を漁って。めぼしいものがあれば難癖つけて没収していく偽警官だったようです。虎の威を借る狐というやつです。警察相手だとなかなか強気でいけないですから。
タイだけでなく、警察だからといって、警察の恰好をしているからといって、一概に信用していいとは言えないのが現実です。心配なら、その場で「日本大使館に確認する」と言えば、偽警官には効果的だそうです。
なめし皮工場事件(モロッコ)
モロッコでとある観光地に向かっていた時、道が入り組んでいたので、迷ってしまっていました。すると一人の青年が「どこに行くの?」と聞いてきたので、行き先を伝えると、「もう何年も閉まってるんだ」と教えてくれました。そこで普通にお別れしたので、親切な人だな、と思って歩いていると、後ろから声が聞こえてきました。振り返ると、先ほどの青年が走って追いかけて来ているのが見えました。いい場所があるから行こうと言うので、試しに付いて行くことにしました。
すると、なめし皮の工場へ到着し、匂いがきついから鼻の穴にミントを詰めて入れというので、もう別のところで見たからいいや、と帰ろうとすると、ミントを無理やり渡してこようとするので、嫌だと言いました。皮の加工にハトの糞を使うらしく、刺激臭がするのです。
実は別の街でもなめし皮工場に案内して最終的にお金を請求してくる手口が横行していたので、ここもそうだろうと拒否したのです。すると、もっと大きな工場へ行こうと言うので嫌だと言いました。
無料でいいから行こうと言われましたが、結局見物料は無料だけどチップを請求されるのがオチなので、嫌だと言いました。
ナイスなフォトスポットを知っているから行こうと言われましたが嫌だと言いました。
すると無理やり工場に連れ込まれそうになったので嫌だと言いました。
恐らく観光客をターゲットにした小遣い稼ぎのようなものなのだと思いますが、親切にしてくれたと思いきや、すぐになめし皮工場に連れて行こうとしますし、なんなら観光地を目指して歩いていても、あっちだこっちだと勝手に案内してきて、結局なめし皮工場に連れて行かれることが度々ありました。モロッコで道を聞くときは、自分から声をかけた人の方がよさそうです。
視覚・聴覚障害者寄付金詐欺事件(ドイツ)
ベルリンの壁の見物に行ったときの話です。一人のおばちゃんが僕の存在に気付くと、駆け寄って声をかけてきました。
「サインください」
何でですかと聞いてみると、どうやら聴覚障害者と身体障害者の方の何かのためにサインを集めているそうです。
しかし、このおばちゃん何か怪しく、「サインだけでいいから」と内容を説明してくれないのです。仮に詐欺だろうと、知らぬ存ぜぬで押し通せば問題ないので、サインだけでいいんですね?お金は払いませんよ?と念を押して渋々サインをすると、「それでは寄付をお願いします」と言われました。
払いませんよ、と言い、立ち去ると、なんと腕を引っ張って1ユーロでいいからとごね始めました。離せ!と手を振り解いて僕は去りました。数十メートル先でも同じように声をかけられましたが、僕はあなたを信用できません、と断りました。
正しい目的を持って募金活動をする人を侮辱する行為です。悪質な詐欺です。
ブレスレット無料プレゼント事件(スペイン・イタリア)
「ヘイ!」と声をかけられたので声の方へ振り返ると、突然ブレスレットをパスされました。不思議なもので、無意識にキャッチしてしまったのですが、どうやらその声の主がパスしてきたようです。
「どっから来たの?あげるよ」と言うので、いらないよ、と返そうとすると、手を身体の後ろで組んで受け取ろうとしません。無理やり彼の手を前に持ってきて、手のひらに載せて指を曲げて握らせました。
その時彼の視線に気づきました。僕の右ポケットに手を伸ばしていたのです。僕は身体を回転させて避けましたが、ガタイのいい男だったので揉めると怖いのですぐに去ることにしました。
ブレスレットはいらないけどありがとうね、と伝えると、「良い日を!」と言ってくれましたが、悪い日になりそうでした。
ちなみに、これはスペインでの出来事ですが、イタリアでもほとんど同じ手口に遭いそうになりました。イタリアでは、最終的にお金を要求されましたが、断ると睨まれたので揉めることにしました。最終的に和解しましたが、ブレスレットをパスされたら無視すればいいと思います。
今日はお祭りだから脇にバラ事件(ギリシャ)
パルテノン神殿の入り口前を歩いていた時、突然、鞄と身体の間に花が差し込まれました。振り向くと花束を抱えた女性がいました。
いらないと言うと、無料だから、と言われました。いらないと言うと、今日はお祭りだからそれをパルテノン神殿に供えてと言われました。いらないと言うと、1ユーロ(130円程度)くれと言われました。いらないと言うと、ごめんなさいと言われました。
周りを見ると、花束を抱えた女性が複数おり、明らかに外国人であろう人にばかり声をかけているようでした。「無料であげる」と言いつつ、持って行こうとするとお気持ちだけちょうだいと言ってくるタイプの詐欺のようです。これだけなら返せばいいのですが、今日はお祭りだから、というのは後から分かりましたが完全に嘘でした。これはもう紛れもなく詐欺です。
バラだけでなく、タイやモンゴルではハトの餌を押し付けてくる詐欺に遭いました。勝手に身体や鞄にハトの餌を乗せて来て、戻そうとしても決して受け取らず、その場に置いて行こうとしたり、返そうとして落としてしまったりするとお金を要求されるというものです。恐喝まがいの要求をされたという話も聞きますので注意してください。そもそも相手をする必要がないことを覚えておいてください。
ニューデリー駅ポケモンの世界化事件(インド)
インドの首都にあるニューデリー駅ですが、入ろうとするだけで複数の人が騙そうとしてきます。
多くの人で賑わう駅ですが、僕の方へ一直線に向かってくる人々がいます。まるでポケモンのトレーナーが勝負をしかけてくるときかのようなかんじで。
《嘘の例》
①そのチケットは無効だ
②その電車は今日は走ってない
③今日は駅は休みだ
④駅は危険だ
⑤外国人は駅に入れない
実際には、
①仮にチケットが無効でも駅に入ることができる。というかそもそもチケットは駅で買う。
②電車の運行状況は駅構内の電光掲示板で確認可能。
③仮に駅が休みだとしたら人が多すぎるし、電車が到着したというアナウンスが聞こえている
④もしかすると危険なのかもしれないが、何が危険なのか具体的なことを言えていない
⑤外国人専用窓口が用意されているくらい外国人へ対応した駅である
つまり、全て気にする必要がなく、ただチケットを買うだとか、電車に乗るといった目的だけを果たせばいいです。
インドでは詐欺に遭う可能性が非常に高いですが、自分の頭で冷静に考えれば避けられる被害は多いです。一旦相手の話を聞かず、自分のペースで話を進めるようにしましょう。
禅問答事件(インド)
ガンジス川沿いに髭を剃ってくれる人がいると聞いていました。おもしろそうなので、声かけられ待ちで歩いていたのですが、すぐに声をかけてもらえました。
髭剃り自体にも問題がありましたが、一番の問題はその後です。髭剃りから自然な流れでマッサージが始まりました。おっ、肩をもんでくれるなんていいサービスだな、と思っていましたが、気づけば僕はガンジス川沿いのコンクリートの地面に寝そべり、背中のマッサージを受けていました。
これはおかしい気がするぞ、と「これ有料じゃないよね?」と聞くと、「考えて」と言われました。
当初50ルピー(80円程度)という話で髭を剃ってもらっていたのですが、それでいいよね、と聞くと「500ルピー(800円程度)でいいよ」とのことです。
最初にマッサージの話なんてしてなかったんだから払わないよ、と言いましたが、彼は「考えて」の一点張りです。
しかし、このマッサージがかなり上手かったし、30分くらいは揉んでもらったので追加で50ルピーを払うことで合意しました。それでも少ないでしょうから、チャイくらい奢るよ、という話になり、僕が買いに行こうとすると、「君が買いに行ったら外国人料金になるから、ちょっと待ってて」と僕の10ルピーを握りしめて彼は走っていきました。このまま帰ってこないかな、と思っていましたが、彼は大きいカップに注がれたチャイと、小さい小分け用のカップを持って帰ってきました。
そして大きいカップから小さいカップに半分移し、二人で分けて飲みました。一見いい話のようですが、彼はあくまでもマッサージのうまい詐欺師です。
メーター一桁ごまかし事件(アゼルバイジャン)
夜の11時半にアゼルバイジャンのバクー空港に到着しました。エアポートバスはもう終わっていたので、タクシーで宿まで向かうことにしましたが、タクシー配車アプリを使っても偽物が大量に現れるのでなかなか本物を見つけられませんでした。
仕方がなく、流しのエアポートタクシーに乗ることにしたのですが、メーター制だと言うのにメーターが表示されていませんでした。
指摘すると、「到着したときに表示される」とのことでした。そんなことあるもんか、と思いながらも乗っていたのですが、到着直前になって急に表示されていることに気づきました。
表示は【3.88】だったのですが、ドライバーは「もうすぐ着くから、38.8マナト(2,640円程度)ね」と言います。
一桁違うということで相当揉めました。詳しくは割愛しますが、大きなトラブルに発展させることで難を逃れましたが、深夜ということもあり、避けたいトラブルでもありました。
タクシーを利用する際は、事前にメーター制であることか、もしくは値段の交渉をしっかり済ませて証拠を残しておくことが重要です。
詐欺にはどう対処すればいいのか
基本的に詐欺師からは日本人観光客はなめられています。ハッキリ言えない性格につけこんで無茶なことを言ってきます。もしくは、今更断れない、という雰囲気を作り出してきます。
一番の対処法は「相手にしない」ことです。次に「はっきりと断る」ことです。
人間は自由な意思を持って行動しています。詐欺師は詐欺師で自由に詐欺を仕掛けてきますが、自分は自分で自由にそれを拒否する権利を持っています。相手をしないことは悪いことではありません。皆が持つ権利なのです。
逆に言えば、なぜ勝手に話しかけてきた人の相手をする必要があるのでしょうか。こちらが話したくなければ話す必要はありません。断ることも権利なのです。
一番難しいのは良い人を見分けることです。人との交流も旅の楽しみの一つです。だれでもかれでも避けていれば詐欺には遭わないでしょうが、一生の思い出に残るような出会いもありません。
時には心を開き、仮に相手が詐欺師であっても、もっと深い人間的なところと向き合ってみるくらいの余裕を持って旅をすると、世界が開けてきます。

せんまさお

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