オススメできる旅の本(紀行文・旅にまつわる小説)-クリーンな旅からアングラな旅まで-全12作品-

世の中には本が溢れ返っており、本屋さんに立ち寄っても、一体どこから手をつければいいのか迷ってしまいます。


せっかく時間を割くのだから、おもしろい、役に立つような本を読みたいものです。


そのため、僕は人から勧められた本、人が勧めている本しか読みません。それだけで十分にいっぱいいっぱいですから。


そこで、今回は僕から本をオススメさせていただきます。軽いものからちょっとだけ重いものまで、クリーンなものからブラックなものまで網羅しておきました。



下手したら旅に出てしまうかもしれませんが、その際は「恐れずに。しかし、気をつけて。」



紀行文

何でも見てやろう/小田実

あらすじ:1958年、26歳の著者が、アメリカ留学をきっかけに、そのまま東回りでヨーロッパ・アジア22カ国を経て日本へ帰るまでを記した紀行文。ほぼ無銭旅であり、なんとか工面しながら、「なんでも見てやろう」という気持ちだけでフラフラと世界を歩いていく。

感想:平成生まれの僕からは想像もつかない1960年代の世界の様子が生々しく描かれています。日本は高度経済成長期に突入していたとはいえ、まだまだ貧しかった時代。アメリカ留学中、蛇口を捻るとすぐにお湯が出た、という出来事から、アメリカの目に見えないところにまで行き渡る豊かさを実感した著者。現代の日本がいかに豊かになったか実感しました。今は人や物が世界中に行き渡るグローバルな時代です。現代の世界を巡ってみても、大きな都市は多少の個性があるとはいえ、ほとんど特徴のない均一的な世界が広がってきています。著者が旅した特色豊かな世界に思いを馳せつつ、均一化する世界へ、一国も早く旅立たなければ、と気持ちを新たにしました。

著者はいわゆるインテリでありながらも、ついつい堕落した生活を送ってしまう系の学生であります。どこか憎めない彼の性格に巻き込まれていく世界の人々の様子から、なんだか世界を愛おしく感じてきます。

また、当時はまだまだ人種差別が残っている時代。日本人はいわゆる「準白人(名誉白人)」扱いされながらも、世界を旅するとなると、好奇の目にさらされた時代です。それを直視し、屈することなく、冷静に分析し、時にユーモア溢れる表現でかわしていく姿は勇敢でインテリジェンスなものです。

とにかく、旅好きだろうが否かによらず、一度は読むべきロングセラーです。

深夜特急/沢木耕太郎

あらすじ:1970年代、とある本に触発された著者が、インドのデリーからイギリスのロンドンまで、公共のバスだけで目指すと友人に告げ、旅立った。様々な人と事件に出会いながら、時に心を痛め、時に旅の闇に飲み込まれそうになりながらも、目的地ロンドンを目指す。現代に至るまで変わらず、バックパッカーのバイブル的な著書。

感想:バックパッカー界隈であまりに有名な著書であり、現代でも彼の足跡を感じられる場所が世界中に残っています。彼が宿泊した宿はまだそのままインドにあり、彼が乗った船は名前が引き継がれて今でも香港を航行しています。

旅の上辺よりも、著者の内面を描いており、なんてことない出来事、たった一言のフレーズのはずが、非常に細かく表現されています。逆に、出来事だけを羅列すると、なんとシンプルな旅になってしまうことでしょうか。そして、それがなぜ全6巻の文庫にまで膨らむのでしょうか。読めば一瞬で世界観に引き込まれ、まだまだ熱かった頃のアジアの風を感じることになるでしょう。

マリファナ青春旅行/麻枝光一

あらすじ:マリファナの煙に誘われ、日本を離れた著者は、世界をマリファナとともに放浪する。旅先で出会うドラッグで繋がっていく刺激的で幻想的な出会いが、彼の旅を広げていく。

感想:ドラッグを肯定する意思はありません。
日本では厳しく取り締まられるドラッグですが、著者が訪れた世界のその土地ではどのような立ち位置であるか、文化・背景から詳しく考察されており、興味深い内容でした。著者は一概にドラッグを悪とせず、公平に分析する視点も持ち合わせており、ドラッグにおぼれた中毒者とは一線を画する立ち位置で物語を描いています。

当然、旅の話もおもしろく、どちらかというと不良寄りの旅人の旅を感じることができます。今では禁止されていることや、マナー違反になることも、当時の緩い雰囲気の中では許容されていたのかも知れません。今となっては闇の中です。

世界ぐるっと朝食紀行/西川治

あらすじ:旅の醍醐味は朝食にあり。写真家の著者は、世界を巡りながら現地の人と同じ朝食を食べる。それがその国をよく知るための近道なのだ。

感想:はじめは、軽い気持ちで読んでいたはずが、朝食の生々しい描写と旨そうな写真にどんどん引き込まれていきました。旅といえば冒険・アドベンチャーといったイメージがありますが、著者の旅は幸せに溢れています。熱気立ち込める市場の屋台飯、聞いたこともない名前の食材、そしてその朝食の変わった入手方法には好奇心がそそられ続けます。短編が何本も収録されているので、何日かに分けて、情景を思い浮かべながらじっくり読むことをおすすめします。

幻獣ムベンベを追え/高野秀行

あらすじ:コンゴ奥地の湖に生息する幻の怪獣ムベンベを発見するため、早稲田大学探検部の11人が赤道直下のジャングルへ挑んだ78日間。若さ溢れる勢いと行動力。ふざけているようで、真剣そのもの。降りかかる困難を払いのけ、見つけたものとは。

感想:ノンフィクション作家の高野秀行さんが大学生だったころのお話です。現在でも、あらゆる世界へ好奇心の赴くままグイグイ潜入していく高野さんの性格がこのころから感じ取れます。倒れていく仲間、野生動物との遭遇、そして原住民との関係、生き生きと飛び出してきそうな文章が魅力です。

海外ブラックロード/嵐よういち

あらすじ:「旅は本来、危険なもの」強盗、テロ、差別、他の旅行記では読むことができない旅の黒い面、満載。

感想:旅で出くわす黒い面を詰め込んだ紀行文です。なぜこんなにもトラブルに巻き込まれるのか。著者はうかつな行動が多すぎるように思いますが、反面教師として、これから旅立つ方は参考にされたら良いと思います。また、自分で体験することは一生ないような危険な体験をされていますので、好奇心を満たすために読むには良い本だと思います。しかし、旅は実は危険なことがいっぱいだということは確かです。

地雷を踏んだらサヨウナラ/一ノ瀬泰造

あらすじ:「アンコールワットを撮りたい」ジャーナリストの著者は、1972年、カンボジアでフリーの戦場カメラマンとしての人生をスタート。ベトナム戦争が飛び火し、戦いが激化するカンボジアで、原始共産主義を掲げるポル・ポト政権の支配化にあったアンコールワットへ、ジャーナリストとして一番乗りを目指していた。「旨く撮れたら、東京まで持って行きます。もし、うまく地雷を踏んだら”サヨウナラ”」友人に手紙を残し、単身アンコールワットへ潜入。

感想:著者と家族もしくは友人や新聞社などとの間で交わされた書簡をまとめた形式で話が進んでいきます。著作物として記した言葉ではなく、近しい人々との間で交わされる生々しい会話が印象的です。誰の手も加えられていないリアルな戦場カメラマンの日々を知ることができます。そして衝撃のラストへ。

映画も公開されています。僕は先に映画でこの話を知りましたが、本の方がよりリアリティを感じられます。また、この本に興味のある方は、先にクメールルージュやベトナム戦争等の歴史的な背景を調べた上で読むことをおすすめします。

謎の独立国家ソマリランド/高野秀行

あらすじ:無数の武装勢力や海賊がのさばる”崩壊国家ソマリア”の中で、奇跡的に平和を達成している謎の独立国家ソマリランド。真相を確かめるため、著者は世界で最も危険なエリアへ潜入。覚醒作用のある植物にハマり、海賊の身代金の見積もりを取り、イスラム過激派組織に狙われながら、その真相に迫っていく。

感想:やっぱりこの著者はヤバイ人間だと思います。旅人の間で「ソマリランドは行けるかも」、という話が出るのもこの人のせいだと思います。一言にソマリアと言っても、実際に行ってみなければ分からないことだらけで、覚醒作用のある植物を齧りながら、現地の人の輪に辛抱強く入り込んでいく著者のやり方には執念が感じられます。冒険と言うには刺激が強すぎるかもしれませんが、リアルな世界がここにあります。

アヘン王国潜入記 /高野秀行

あらすじ:「黄金の三角地帯」と呼ばれる、ミャンマー、ラオス、タイに跨る麻薬の密造地帯。現地の有力者の協力を得て潜入した著者は、密造に携わる人々と生活を共にし、自身もアヘンの栽培から製造まで携わることなる。

感想:ドラッグを肯定する意思はありません。
なぜそこまでやるのか理解に苦しみますが、きっと著者は著作のことよりも、本人の好奇心を満たすことの方が優先なんだと思います。とにかく初めは呆れますが、その少年のような好奇心の強さに惹きつけられ、最後にはきっとまた呆れると思います。

ちなみに、表向きはもう壊滅状態にあると言われていますが、ミャンマー側は実際にはまだ活動を続けているという話があります。僕も近くまで行ってみようとミャンマー側から向かってみましたが、やはり通常のルートでは通してくれませんでした。しかし、近くの町には、かつての黄金の三角地帯を思わせるような「天秤」が売られているのを多く見ました。

旅にまつわる小説

舞台/西加奈子

あらすじ:自意識過剰な主人公の葉太は初めての海外一人旅でニューヨークを訪れる。恥ずかしい観光客だと思われないよう、ガイドブックを暗記して臨んだ葉太だったが、滞在初日で盗難に遭い、無一文に。虚栄心と羞恥心に縛られ、助けを求めることができないまま、マンハッタンを彷徨う。

感想:とにかく想像の斜め上を行きまくりのお話でした。無一文になってから、彼にとっての本当の旅が始まるわけですが、典型的な日本の弱い若者という感じで、どこか共感せざるを得ない描写が多々あります。確か台湾旅行中に無一文になった日本人女性が、どうすればいいか分からず、川沿いで泣いているところを保護された、というニュースを見たことがあります。フィクション作品ですが、実際に同じ場面になれば、同じ心理状態になる人も少なくなさそう、という意味でリアルです。精神的に追い詰められていく様子が絶妙にコミカルでおもしろかったです。そして衝撃のラスト。度肝を抜かれる展開が待っています。

旅屋おかえり/原田マハ

あらすじ:「あなたの旅、代行します」売れない崖っぷちアラサータレント”おかえり”こと丘えりか。担当していた旅番組が打ち切りになり、彼女が始めたのは人の代わりに旅をする仕事だった。

感想:まさかこんなに感動するとは。この著者の本が好きで、たまたま「旅」という文字が入っていたために手に取ったのですが、読んで心の底から良かったと思いました。読めば旅屋の意味が分かります。旅の先々で出会う人々を笑顔に変えていく物語。肩肘張らず、楽しみながら読み進められます。そして最後は感動の涙必至。

TraveLife クリエイティブに生きるために旅から学んだ35の大切なこと/本田直之

あらすじ:「旅をすることは人生のトレーニングでもあり、自由に生きるためのエネルギー源でもある」年の半分をハワイで過ごす著者が自らを成長させた旅と、クリエイティブに生きるための35の旅のレッスンを綴る。

感想:この著者の著作にはレバレッジ(てこ)をテーマとしたものが多く、効率的に成果を出す方法をまとめたビジネス書をメインに書かれています。本書では、そこまで効率にこだわる彼のバックグラウンドについて、旅というキーワードで紐解いています。旅が育てる人間性、旅が気づかせてくれる個の存在。旅するように生きる著者の秘密が詰まっています。

旅する力―深夜特急ノート/沢木耕太郎

あらすじ:「旅とは何か、なぜ人は旅へと駆り立てられるのか?」ロングセラー小説、「深夜特急」の誕生前夜の物語から、幾多の読者からの問いかけに初めて答えた旅論の集大成。

感想:上で紹介した「深夜特急」の著者、沢木耕太郎さんが、旅について語るエッセイです。深夜特急の裏話が聞けるのは嬉しいことですが、それよりも、著者が考える旅について知れるのが興味深かったです。というのも、普通の旅人が旅について語るのは野暮なことですから、あまり話に挙がらないのです。著者いわく、「猿岩石」以降、手垢にまみれた旅ですが、それでも後輩の旅人に対して声をかけて下さっています。「恐れずに。しかし、気をつけて」

 

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せんまさお

せんまさお

シャイな僕が世界一周の旅へ。諸事情により緊急でお金が必要だったので一部上場企業のキーエンスへ就職。27歳で退職し、夢だった世界一周をすることに。やりたいことを全部やっている最中です。まずは死なずに帰ってきます。皆が憧れる世界一周だと思いますが、良いところも悪いところも全てそのままお伝えして、一緒に旅している感覚になっていただければ嬉しいです。座右の銘はPLUS ULTRA。「もっと向こうへ」という意味です。好奇心の赴くままにもっと向こうへ行ってきます。好きなコーラはコカ・コーラ。スカッとさわやかコカ・コーラ。LOVE&PEACE。

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