【世界一周#357】ゴミの街

同じ宿の長期滞在者、Hリエさんのツアー開始。おすすめの場所があるとのことで、せっかくなので案内して頂いた。

エジプトはイスラム教徒の比率が高いのだが、キリスト教徒もごく少数存在するらしい。

カイロでは、キリスト教徒の居住区が一か所に集められているそうで、行政との取り決めで、その地区の住人はゴミの処理を担当しているそうだ。

Hリエさんについてバスに乗る。このバスというのも、路線バスのような物とは少しイメージが違い、車体は軽自動車のバンであるし、路線番号のようなものも見当たらない。指のサインでこちらから乗りたい路線を合図して、ドライバーがそのサインに当てはまる路線を走るのならばバス停ではなくその辺で止まってくれる方式なのだ。つまり難易度が高い。

しばらく乗っていると、ゴミの街と呼ばれているらしいその街に繋がる道に着いた。ここはまだゴミ処理を担当しているキリスト教徒の居住区ではないが、市内中心部よりも十分に雑然としている。

Hリエさんおすすめのカップに入ったフルーツの何かを食べる。わずか3ポンド(21円程度)という実質ノーカウントとも言えるスイーツ。とても美味しい。

店員さんはHリエさんと顔馴染みらしく、とても丁寧に迎えてくれた。

それからも道中出会う方々皆、にこやかに接してくださる。Hリエさんの信用も大きく影響しているのだろうが、それでも優しい方々ばかり。

道の途中で、突然キリスト教徒の居住区に変わった。道の上には吊り下げられた教会の模型のような何かがある。それ以前の道の上にはモスクの模型のような何かが吊り下げられていた。

女性はイスラム教徒と違い、ヒジャブを巻かない方が多く、男性の手首には十字架のタトゥーが入っている。

Hリエさんオススメの奇跡のサンドイッチを食べる。店に入った瞬間から歓迎され、終始幸せな気分であったし、何よりもサンドイッチが美味しい。そして驚きの5ポンド(35円)。サンドイッチだけじゃなく、ピクルスまで付いてこの値段。

サンドイッチを食べながら道路を眺めていると、山のようにゴミを乗せたトラックが狭い道を走り抜けたのが見えた。山のようにというのがどこまで伝わるかわからないが、思ったよりも山くらいには山盛りだった。恐ろしいのが、その山の上に人が乗っているのだ。

ゴミゴミ言ったが、街中がゴミで溢れている訳ではなく、あくまでゴミ処理をする場所なので、分別やリサイクルを仕事として行なっている。ゴミなので匂いは多少キツい道もあったが、かなりイメージと異なった。

手作業でゴミを分別する人を見かけたが、それはそれは大変な仕事なんだろうなと思う。

ゴミ処理の仕事をするキリスト教徒の方々は、ゴミ処理という大変な仕事を請け負う代わりに、食事は全て支給されるらしい。

どういう経緯でこのような関係になったのかは具体的には分からないが、それをどうこういうつもりはない。

少なくとも、道端で挨拶した方々は、皆さんとても優しく丁寧に僕たちを受け入れてくださった。

そのゴミの街(語弊がありそうなのでこう呼ぶのも申し訳ない気がするが便宜的に)を抜けると、教会がある広大な敷地に着いた。

大きな崖の下に位置する敷地らしく、崖にはキリスト教に関係する壁画が描かれていた。崖に棒を刺してそれにロープでぶら下がって掘るらしい。しかも一人で全ての壁画を描いたそうな。

いくつかの教会を見学させていただいた(どこも歓迎してくださった)後、壁画を一人で完成させたらしいマリオさんにお会いすることができた。

マリオさんは壁画だけでなく、教会やらアスレチック施設やら、この敷地内にあるありとあらゆるものを作って来たデザイナーらしい。

ここでも優しく迎えてくださり、お茶をご馳走になった。

カイロの街中とは180°異なる静かで落ち着いた場所。キリスト教徒のために作られた特別な場所。マリオさんが作った世界。そう、マリオワールド。いや、スーパーマリオワールド。

マリオさんにお礼を伝え、帰りにもう一つ教会に寄った。一通り見て帰ろうとすると、管理人の方が「一緒に食べよう」と、ご飯を分けてくださった。

エジプト独特の薄いパン(ピタパンの皮みたいなやつ)と豆のスープ。パンをスープにつけて食べるとうまい。

親切に触れまくりながら、街を後にする前に串焼き屋さんに寄った。ケバブを注文し、薄いパンに挟んで食べる。もう、超うまい。ピクルスも最高。これで12ポンド(84円程度)。

ゴミの街から向かった先は、死者の街と呼ばれる場所。要はお墓なのだが、まるで家のような建物に見えるお墓が並び、それが街のように見えることからそう呼ばれているらしい。

観光地みたいになってはいるが、あくまでお墓なのでそっと歩かせてもらう。確かに街のように見えるが、ほとんど人が歩いていないところがお墓を感じさせる。

途中、葬儀中の家族とすれ違った。親族のおじいさんが微笑みかけてくれた。この辺りの礼儀で、胸に手を当てて気持ちを返すことしかできなかった。

死者の街を抜けると、モスクが見えた。全くと言っていいほど観光客がいないような場所だが、サラッと世界遺産らしい。

Hリエさんが言うには、エジプトは有名なものがありすぎて、本来なら凄いものがそれに隠れてしまっている、とのこと。AKBとかの端っこらへんにいる子みたいな存在も間違いなくAKBであるみたいなイメージ。

Hリエさん一推しのビュースポットへ向かう。まだ見ちゃダメ、というアドバイスの元、合図があるまで周囲を見ないようにして進み、高台へ登った。

せーので振り返ると、死者の街が一望できた。どこまでも続く墓地。確かに街にしか見えない。しかし住人はいないのだ。

帰り道にバザールに少しだけ寄った。実はエジプトは大好きで、日本でも博物館に行ったりしていたので、欲しいお土産は沢山ある。これは後日にしよう。

宿に戻り、エジプトの国民食的なコシャリという食べ物を食べた。米とパスタとマカロニと麺と豆とフライドオニオンを混ぜたものにトマトソースをかけたものだ。それ以上でも以下でもなく、炭水化物なので美味しくない訳がない。

ケーキを食べながらくつろいでいると、ギターの音が聴こえてきた。引き寄せられるように見に行くと、宿を出る旅人に向けてHリエさんが一曲演奏していたのだ。

「二度と走れぬ 坂道を上ったら~♪Hold Your Last Chance~♪」

後で聞いたら長渕剛のHold your last chanceという曲とのこと。

曲のことは知らなかったが、Hリエさんが歌う「二度と走れぬ坂道」というフレーズに思わずウルッときた。きっと今僕が走っている道は坂道であるし、そして二度と走ることができない道、好機そのもののような気がして。

曲名を聞いてから長渕剛本人の曲を聴いてみたが、Hリエさんが演奏する曲の方がいいなと思った。具体的なことは書かないが、実はHリエさんはすごい演奏家らしい。本業はギターではないが、それでも上手い人の演奏は本当に上手いんだなと初めて知った。

普段はジョークばかりのHリエさんだけに、ギャップにもやられた。こういう人ってかっこいい。

The following two tabs change content below.
せんまさお

せんまさお

シャイな僕が世界一周の旅へ。諸事情により緊急でお金が必要だったので一部上場企業のキーエンスへ就職。27歳で退職し、夢だった世界一周をすることに。やりたいことを全部やっている最中です。まずは死なずに帰ってきます。皆が憧れる世界一周だと思いますが、良いところも悪いところも全てそのままお伝えして、一緒に旅している感覚になっていただければ嬉しいです。座右の銘はPLUS ULTRA。「もっと向こうへ」という意味です。好奇心の赴くままにもっと向こうへ行ってきます。好きなコーラはコカ・コーラ。スカッとさわやかコカ・コーラ。LOVE&PEACE。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

ABOUTこの記事をかいた人

せんまさお

シャイな僕が世界一周の旅へ。諸事情により緊急でお金が必要だったので一部上場企業のキーエンスへ就職。27歳で退職し、夢だった世界一周をすることに。やりたいことを全部やっている最中です。まずは死なずに帰ってきます。皆が憧れる世界一周だと思いますが、良いところも悪いところも全てそのままお伝えして、一緒に旅している感覚になっていただければ嬉しいです。座右の銘はPLUS ULTRA。「もっと向こうへ」という意味です。好奇心の赴くままにもっと向こうへ行ってきます。好きなコーラはコカ・コーラ。スカッとさわやかコカ・コーラ。LOVE&PEACE。