【世界一周#305】アウシュヴィッツ強制収容所

ヨーロッパを知る上で欠かすことができない歴史を一つ挙げろと言われれば、ナチスがそれなんじゃないだろうか。

ナチスの行いで最も悲惨だったものがホロコースト。ユダヤ人に対して行われた大量虐殺のことだ。

その一番の舞台となったアウシュヴィッツ強制収容所。

詳しく知りたかったので、日本語ツアーに申し込んだ。個人でも向かうことはできるが、個人の場合は入場制限があることと、日本語ガイドが手配できないというデメリットがある(オーディオガイドもない)。料金は安くはないが、クラクフからの往復の送迎も付いているのでオススメだ。

朝集合場所へ向かうと、モロに日本人っぽい人数名が既に待っていた。久しぶりに見た気がする。声をかけてみると、ここが集合場所で合っているらしい。

すぐにスタッフがやってきた。

「おはようございます。失礼ですがお名前お伺いできますか?」

完璧な日本語を話すポーランド人のマグダさん。ヨーロピアン特有のなまりもない。日本に住んでいたのかな?

大型のバンに乗り込み、アウシュヴィッツ強制収容所へ向かう。

片道1時間程。

「アウシュヴィッツ強制収容所はただの観光地という訳ではなく、犠牲になった方々の墓標だという視点も持って頂くようお願いします。観光地的な写真の撮り方、例えばセルフィーやピースなどはご遠慮ください。」

確かにその通りだ。例えば広島の原爆ドーム前でピースをしてニコニコ写真を撮る日本人はいないだろう。元々そんな気はなかったが、気が引き締まる。

到着してすぐにトイレ休憩。マグダさんからバトンタッチしてガイドの方と合流した(名前は聞き逃した)。少し怪しい日本語だが、なんとか理解することができる。

アウシュヴィッツ強制収容所内はツアーが渋滞している。お互いに妨げ合わないように、ヘッドホンをつけて、ガイドさんの声を拾うようになっている。

《ARBEIT MACHT FREI》

「働けば自由になる」というスローガンが書かれたゲートを潜るともうそこは有刺鉄線で囲まれた強制収容所の敷地内だ。

レンガ造りの建物が並ぶ。葉を落とした木々が並ぶ通りは、それはそれは寂しそうに見える。

段々と増築され、建物の数も増え、最後には平家から二階建てに改築されたらしい。確かに一階部分と二階部分でレンガの色が微妙に違う。

1940年から1945年までに使用されていたこの施設には、ユダヤ人のみならず、政治犯や所謂ジプシー、障害者、同性愛者、捕虜なども収容されていたそうだ。収容後は強制労働に従事させられていたそうだが、労働に不適合だとされた老人や女性、子供、更には劣等民族というレッテルを貼られたユダヤ人の絶滅収容所としての機能も併せ持っていたそうだ。絶滅とはつまり虐殺していたという意味だ。

強制収容所に到着した直後に選別が行われ、なんの記録もなしにガス室(毒ガス)で虐殺されたらしく、正確な犠牲者数すら分かっていないらしい。現在では、120~150万人がこの強制収容所で犠牲になったと推定されているらしい。京都市の人口が150万人弱なので、それくらい多くの方々がこの場所で虐殺された計算になる。ホロコースト全体では約580万人が犠牲になったという説があるそうだ。それは北海道の人口を超える。

虐殺される際、身につけているものは物資不足を補うべく、全て没収されたらしい。服や靴のみならず、義足やメガネ、鞄、クシに至るまで全てが没収され、収容者の手によって分別されていたらしい。それらが展示されている。

一番残酷なのが、髪の毛の没収である。織物を作るために虐殺前に髪の毛を刈り取っていたらしい。刈り取られた髪の毛も展示されている。

しかも少しという訳ではなく、終戦直後に見つかっただけでも何トンも刈り取られていたらしい。部屋の片側一面に刈り取られた髪の毛が山積み展示されており、恐怖と落胆を覚えた。人間のすることではない。戦時中は人間が人間ではなくなるらしい。

没収された子供靴も山のように展示されている。子供を虐殺するだなんて。どうすればそんなことができるのか。

当時の強制収容所の施設も見学した。トイレは仕切りもなく何個か並んでいるだけ。酷いものだと、コンクリートに穴が空けられているだけのものもあった。家畜のような扱いだ。

強制労働をさせられていたとのことだが、実際には使い捨て状態で、十分な食事も与えられなかったことから、強制収容から数ヶ月で亡くなってしまったらしい。

死の壁と呼ばれる壁も見学した。この壁の前に収容者を跪かせ、銃殺する場所だったそうだ。この壁の前では沈黙がルールらしく、皆で黙祷を捧げた。

ガス室へ向かう。天井に穴が開いている。ここから毒ガス(殺虫剤らしい)の缶が放り込まれ、20分かけて虐殺したそうだ。

すぐ横に焼却炉があった。ここで遺体を燃やし、骨は川へ流したそうだ。

ガス室へ収容者を連れて行く際、石鹸を配ったらしい。これからシャワーを浴びるから、服を脱いで付いてこいと指示したらしい。混乱を避けるための嘘だったそうだ。そしてその服は没収され、裸の遺体が回収できるということのようだ。

外には首吊り台もあった。収容者の目の前で、数人の首を吊らせて恐怖を植え付けていたらしい。写真の展示もあったが、目を向けるのすら憚られる。

ここで場所を移動。再び有刺鉄線の脇を通り、一旦外へ。過酷な労働に耐えられず、強力な電流が流れる有刺鉄線に飛び込んで自殺する収容者もいたらしい。

車で5分ほど移動し、もう一つの収容所、ビルナケウにやってきた。

ここには電車が乗り入れられるようになっている。電車に乗せられた収容者がそのまま施設に収容できるようになっていたようだ。

かつて馬の牧場だった場所らしく、こちらは木造の馬小屋を使って収容していたそうだ。

こちらにもガス室があったが、その全てが崩壊していた。馬小屋も復元した者らしく、レンガ造りの建物は解体されて、戦後の復興に使われたそうだ。

約3時間に渡る見学が終了。

「みなさんが来るから忘れられない」

あ、やっぱり人がいっぱい来るから暗い過去を忘れられなくて辛いのかな、と申し訳なく思ったが、どうやら「みなさんがこうやって沢山来てくださるから、この歴史は忘れ去られない」みたいな事が言いたかったらしい。

頭を下げて感謝された。こちらこそ教えてくださってありがとうございました、と我々も頭を下げた。ここ周囲だけ物凄く日本っぽいかんじになっている。

そう言っていただければ来させてもらった甲斐があった。歴史は雑学なんかじゃなく、経験だと思う。実際に経験していなくても物事を判断できるのは、歴史に学ぶことができるからだ。これは、これからも語り継いでいく必要のある負の歴史だ。

街に戻り、ユダヤ人地区へ向かった。かつて住んでいたユダヤ人は全員が強制的に収容されたので、廃墟となっていたらしい。そこを利用して今はクラブやバーが並ぶお洒落な街に再開発されたらしい。

「シンドラーのリスト」というクラクフ、アウシュヴィッツ強制収容所を舞台としたホロコーストを描いた映画の撮影地でもある。

実は大学生のころこの映画を観ていたのだが、どんなだったかほとんど忘れていたので、先日再度観ていた。もう二度と忘れられないだろう。

観たことのない人は是非とも観てほしい。あくまで映画だが、ユダヤ人でもあるスティーブン・スピルバーグの作品だ。ユダヤ人から観たホロコーストの様子や、この映画のテーマにもなっているシンドラーという男の愛ある行いが描かれている。最後のシーンは言葉にならない虚しさが残る。

そのシンドラーの経営していた琺瑯(ホーロー)工場は現在博物館になっている。そこまで歩いて行ってみた。閉館ギリギリ間に合ったので入ってみた。

こちらもホロコーストの展示がされている。ものによってはアウシュヴィッツ強制収容所より過激なものまである。

少しだけネタバレになるが、シンドラーはナチス党の党員であったが、自身が経営する工場のユダヤ人の労働者と交流するあいだに、心が揺れはじめ、ユダヤ人を救う方法を模索し始めるのだ。

当時のナチス党員の軍服の複製も展示されていた。髑髏マークが縫い付けられている。悪の権化みたいな服だ。

外に出ると日が暮れていた。もういっぱいいっぱいだ。しかし重要なことをこの目を通して知る事ができた。これに意味はあるだろう。

そういえば、ホロコーストって何かに似てない?今まさに行われている民族虐殺。ほら、日本の近くの国で。知ってる?

強制労働ってどこかで聞いた事ない?中東の豊かな国でパスポートを取り上げられて働かされている南アジアのとある国民達。知らない?

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せんまさお

せんまさお

シャイな僕が世界一周の旅へ。諸事情により緊急でお金が必要だったので一部上場企業のキーエンスへ就職。27歳で退職し、夢だった世界一周をすることに。やりたいことを全部やっている最中です。まずは死なずに帰ってきます。皆が憧れる世界一周だと思いますが、良いところも悪いところも全てそのままお伝えして、一緒に旅している感覚になっていただければ嬉しいです。座右の銘はPLUS ULTRA。「もっと向こうへ」という意味です。好奇心の赴くままにもっと向こうへ行ってきます。好きなコーラはコカ・コーラ。スカッとさわやかコカ・コーラ。LOVE&PEACE。

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