【世界一周#266】容赦を知らない男

辺りがまだ暗い6時。フロントのソファで寝ていたスタッフは、僕が荷物を勢いよく担ぐ音で飛び起きた。

空港行きのバスは宿の近くから出ていた。乗り心地の良いバスだ。

まだまだ眠たいが、どれくらいで到着するのか分からないので起きておいた。

どうやら空港職員もこのバスで通勤しているようだ。制服姿の人がチラホラ見える。

1時間もたたないうちに空港へ到着。しばらく待つとチェックインカウンターが開いた。

さっさとチェックインし、ラウンジでモリモリ朝ごはん。すぐに搭乗開始となった。

1時間半ほどでギリシャのアテネへ到着。初のユーロ圏突入でドキドキしたが、何一つ聞かれることなくあっさりと入国。アテネの空港は想像よりも酷く古くて小さく、財政難が見え隠れする。

すぐに国内線のゲートへ向かう。普通に英語が通じることに少しの感動を覚えた。発音は意外とクセが強くて聞き取りづらい。ユーがヨウになるかんじ。

国内線でもラウンジで昼飯を食べた。トルコからの便で機内食が出ていたようだが、爆睡していて気づかなかったのだ。

食べるや否や搭乗開始の表示が掲示板に出たので急いで向かう。今度は2列×2列の小型のプロペラ機だ。

ジャンボジェットより安定感がなかったり小回りが効いたりするので、フワフワして気持ち悪くなった。

1時間もしないうちにクレタ島のハニアという街へ到着。Chaniaと書くのだが、トルコの空港職員にChinaへ行くのかと聞かれたくらいややこしい。顔も顔だけに間違える気持ちもわかるが、Chinaという空港はない。

空港でユーロ通貨を引き出す。初めて見るユーロ札。たぶんだけど、ほとんどクレジットカードが使えるだろうから少額にしておいた。今まで訪れた国のお札の中で一番しっかりしている気がする。日本の次に。

空港バスで市内へ。宿へ到着するが、鍵が閉まっている。このパターンか。チャイムもないのでドアをガチャガチャしたり叩いたりしたが反応がない。

諦めてドアの前でゆっくりとしていると、宿泊者がやってきた。事情を説明して入れてもらい、たぶんここがベッドだよと案内してもらった。どうやら長期で滞在している人みたいだ。

スタッフはおらず、やはり鍵までは受け取れなかったが、とりあえずWi-Fiに繋ぎ、今更ながらガヴドス島へ行く船について調べてみた。

ギリシャのサイトは英語にも対応しており、なんとか調べることができた。どうやら火曜日と金曜日の朝10:30にクレタ島の南の街ホラ・スファキオン(ギリシャ語ではホラ・スファキア?)を出るらしい。今日は月曜日。ラッキーだ。

その南の街へどうやって行けばいいのか分からないのでとりあえずハニアのバスターミナルへ向かう。

インフォメーションで聞いてみると、朝の8:15に毎日出ているらしい。約1時間40分かかるらしい。それなら9:55着。10:30の出発まで余裕がありそうだ。

この◯時間40分というところに文明を感じる。「ああ大体3時間くらいだ」と言って4時間半かかるみたいなアジアあるあるなこともなさそうな気がする。

食料を両手いっぱい買い込み、宿へ戻るとやはり鍵は開いていない。もう日も暮れてきたのでやることもない。おとなしく宿の前でコーラを飲んで待っていた。

するとドアのすりガラスの向こうに人影が見えた。僕はドアを連打する。

開けてくれたのはヒッピーみたいな女性だった。

「あなた今日着いた人?鍵とタオルとシーツがそこにあるよ」

スタッフですか?と聞いてみたらこれまたスタッフではないらしい。スタッフは一体いつどこにいるんだ?明日のチェックアウトは朝早いから支払いを済ませておきたかった。

夕飯のスープとパンを食べていると、おもむろに中庭にキャンドルを置いて回る人が見えた。スタッフですか?と聞くと今度はビンゴ。

「ワタシ、オカネ、ハラウ」

明日でいいわよ、と言うので事情を説明すると横にあるバイクレンタル屋さんに連れて行かれた。なんだここに事務所があったのか。

支払いを済ませたので早く寝る。実は久しぶりのシンプルなドミトリールーム。アルメニア、ジョージア、トルコではシングルやカーテン付きのドミトリーしか泊まっていなかったので、実にイランぶりの(イランもほとんど貸し切り状態の宿にばっかり泊まっていた)普通のドミトリーだ。

普通のドミトリーとは、ただの二段ベッドがいくつか置いてあるだけの部屋のことを指す。久しぶりすぎてすごく嫌だけど徐々に慣らしていかなければならない。なんせこれからヨーロッパが本格化していく。つまり宿代が高くなるので選り好みはしづらくなる。

あと久しぶりに蚊がいる。ワンプッシュで蚊を殺せるスプレーを景気付けに3プッシュしておいた。容赦はしない。僕は容赦を知らない男。

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せんまさお

せんまさお

シャイな僕が世界一周の旅へ。諸事情により緊急でお金が必要だったので一部上場企業のキーエンスへ就職。27歳で退職し、夢だった世界一周をすることに。やりたいことを全部やっている最中です。まずは死なずに帰ってきます。皆が憧れる世界一周だと思いますが、良いところも悪いところも全てそのままお伝えして、一緒に旅している感覚になっていただければ嬉しいです。座右の銘はPLUS ULTRA。「もっと向こうへ」という意味です。好奇心の赴くままにもっと向こうへ行ってきます。好きなコーラはコカ・コーラ。スカッとさわやかコカ・コーラ。LOVE&PEACE。

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シャイな僕が世界一周の旅へ。諸事情により緊急でお金が必要だったので一部上場企業のキーエンスへ就職。27歳で退職し、夢だった世界一周をすることに。やりたいことを全部やっている最中です。まずは死なずに帰ってきます。皆が憧れる世界一周だと思いますが、良いところも悪いところも全てそのままお伝えして、一緒に旅している感覚になっていただければ嬉しいです。座右の銘はPLUS ULTRA。「もっと向こうへ」という意味です。好奇心の赴くままにもっと向こうへ行ってきます。好きなコーラはコカ・コーラ。スカッとさわやかコカ・コーラ。LOVE&PEACE。