世界遺産の登録を取り消された教会へ向かう。どうやら修復しすぎてもはや原形を留めない状態になったので取り消されたらしい。つまり修復ではなくリフォームしてしまったらしい。
それはバグラティ大聖堂といい、小高い丘の上に建つ。当然のようにタクシーで向かう。僕らは歩くことをやめた。
荒いなんてもんじゃないタクシーだ。発進はタイヤが空回りするまでアクセルを踏み、直線でさえ猛スピードで車線変更するもんだから右に左に体が揺られる。
大聖堂に着いた頃には車に酔ってしまっていた。
なるほど確かに大聖堂はきれいに修復されている。何なら大聖堂の横には金属製の茶色い構造物が張り付いている。
大聖堂に入る前にその敷地内に広がる草原に向かってみた。草原越しに眺める大聖堂はまるでRPGの中の建物のようであまりに美しかった。
大聖堂の裏手には城壁のようなものがある。城じゃないので城壁ではないんだろうが、とりあえず石が積み重ねてある。
登れるようだったので登ってみた。その城壁のようなものの上から大聖堂を眺めてみてもやはり美しい。
ようやく中に入る。当然のように美しい。そりゃそうだ、元々は世界遺産だったんだから。
分かったようなフリをしながら大聖堂内に架けられている宗教画を眺める。誰が誰だか分からないが、伝説の聖人達なんだろう。そもそも顔を見分けるのすら難しい。生身の欧米人の顔を見分けるのだってちょっと難しいんだからしょうがない。
この大聖堂から更に移動。今度は現役の世界遺産、ゲラティ修道院。ここは街からは少し離れた山の上にある。
「日本か、太陽が登る国だな。だから日本の国旗は太陽なんだ。そうだろ?」
タクシードライバーはご機嫌だ。
「日本の物は全てが素晴らしい。車は特に良い。」
ドイツメーカーのオペル車を運転しながらそう言う。日本車は右ハンドルだから右車線のジョージアでは危ないらしい。もちろん日本車でも欧州モデルは左ハンドルだけどそれは黙っておこう。
「俺は車の運転を見ただけでドライバーの性別が分かるんだ。前の車を見てみな、フラフラしてるだろう。女が電話でもしながら運転してるんだろう。」
追い越しをかけたので、通り過ぎる時に見てみると本当に女性が電話しながら運転していた。タクシードライバーくらいになると特殊能力に目覚めるらしい。でもたぶん思ってても言わない方がいい。
それにしてもクタイシのドライバーはフレンドリーだ。というかマーケットでもそうだったが、なんか日本で言うところの大阪みたいな雰囲気がある。ド派手なおばちゃんにも遭遇したし、第二の都市はこうなる傾向があるのかもしれない。
ゲラティ修道院に到着。山の中なのでしょうがないが、カメムシがめちゃくちゃ飛び回っている。
露天のおばちゃんがペットボトルを露天の天井にくっ付けて何かしてるな、と思ってふと見てみると、天井にとまったカメムシを水を溜めたペットボトルで捕獲して駆除していた。ペットボトル中に溜まったカメムシ…気持ち悪い!!!
少し立ち止まるとカメムシがくっつく。歩いていてもカメムシがぶつかってくる。口の中だけは守りたい。
ゲラティ修道院は修復中だったが見事なものだ。内部の壁面はフレスコ画で埋め尽くされており、視界いっぱいに広がっている。
燃えた蝋燭のほのかに甘い香りが漂う。足音さえ邪魔になるような気がして、小学生の時に覚えた忍者歩きで足音を消す。
少し写真を撮ってみたが、シャッター音がうるさかったのでやめた。
修道院の敷地内にはかつての学校やらなんやらが建っている。どれも立派だなあ。
カメムシをかわしながら街の中心部へ戻ってきた。第二の都市というだけあって栄えている。
ショッピングモールのテラスでハンバーガーを食べる。今日も昼飯を抜かしていたが、もうすぐ夜なので軽く1つだけ。
一旦宿に戻り一休み。歩いてない癖に一丁前に疲れるのだ。
実は明日でNガノさんとお別れ。Nガノさんはトビリシに戻り、僕は次の街へ向かう。
最後の夜だからなんかいいもん食べに行きますか、とヒンカリが有名らしい店へ。
Nガノさんはヒンカリ大好きなのでいつも大量に食べている。
この店には5種類のヒンカリがあるらしい。普通の肉のやつ、特製の肉のやつ、マッシュポテト、チーズ、マッシュルーム。
それぞれ2個ずつの計10個と、ピザ、仔牛の串焼き、コーンブレッド、パン、メキシカンポテト。
ヒンカリがめちゃくちゃおいしい。ヒンカリは要は小籠包のでかい版みたいな料理なんだけど、中身を変えれば全く別の料理になる。
特にマッシュポテトのヒンカリはおかずでありながら主食でもあるというハイブリッド。家系ラーメンにおけるラーメンみたいなもんだ。
完全に頼みすぎた。食べきれない。ピザ半分とパンを袋に詰めてもらい持ち帰った。
宿に戻ると毎晩のように飲んだゼダゼニ社のレモネード(レモネードではない)で乾杯。日本に持ち込めば大ヒット間違いなしクオリティのジュースだ。今まで飲んだジュースの中ではコカ・コーラ未満オランジーナ以上にランクインするレベル。つまり2番目にうまい。
明日も早いので寝よう。明日から一人旅に戻るというのは不思議な気分だ。もともと一人旅なんだけど、一人旅は一人じゃなくなることも楽しみの一つで、一人旅なのに別れが寂しいというのも変な話だ。
せんまさお
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