10時出発と言われていたが案の定出発しない。ゲルでゴロゴロしていたら高校生くらいの少年がやってきた。
なんかゴチャゴチャ言っているが例のごとく分からない。どこか指差しているのでそっちに向かう。
そこにはガイドのパタさんを始め、15人くらいの人々が座っていた。すぐ隣に一本のロープが地面に張られており、そのロープに10頭ほどの馬が繋がれている。
パタさんに手招きされ、Aラさんと二人で向かうと、そこにいた青年がAラさんにノーと言った。意味がわからないのでAラさんは後ずさりすると二度もやったよこりゃ参ったなみたいなことを言っている。
どうやらその馬を繋いでいる地面に張ったロープを跨いではいけないらしい。それは申し訳ないけどそもそも何をやっているのかも分からないからしょうがない。
皆の輪に混ざり、草原に座る。たまにパタさんのゲルでみかけるおばちゃんがキャンディーとバターの乗ったお皿を渡してくれた。
そしてマグカップにビールを注いで飲め飲めと渡してくる。
ただのピクニックでは無さそう。馬が繋がれているので何か馬の祭なんだろう。
予想は当たったようで、モンゴルには馬乳酒という馬乳を発酵させて作るお酒があるのだが、そのシーズンがこれかららしく、作り始めとしてこの祭をするらしい。
僕もAラさんもお酒に弱いのでビールで酔ってゲルに戻ると寝てしまった。
起きると12時過ぎ。頭が痛い。昼飯はホーショールという揚げ餃子。一つ10cm以上あり、中には少しだけスパイスの効いた羊肉のミンチと細かく刻んだ玉ねぎが入っている。またもやチャトラさんが腕を振るって旨いご飯が食べられた。
満腹でまたもやゲルでゴロゴロ。いつ出発するんだろう。
しばらくするとパタさんが緑の民族衣装に着替えていた。今まではブラウンだったが、こっちもなかなか似合う。この民族衣装がなかなか便利で、分厚いので雨が降っても中まで染み込まず、防寒性も高い。布団にもなる。暑くないのかは疑問。
さっき馬の祭をするときに呼びにきてくれた少年も準備している。どうやら僕たちと一緒に行くようだ。
パタさんは馬への荷物の乗せ方を教えている。ガイド業の後継者だろうか。そしてこの少年は息子なんだろうか。
14:30に出発。こんな時間に出発したことがないのでどれくらい走るのか分からないが、日が沈むのは22時前なので問題はないんだろう。
今までは僕らの荷物と食料を乗せた馬をパタさんが引っ張っていたが、今後は基本的に少年が引くらしい。
相変わらず草原を進み続ける。向かう先はカラコルム。旧首都らしいので京都的な立ち位置の街なんだろうけど何も知らない。たぶんチンギスハーンが住んでいたんだろう。
17:30に川沿いに到着。今日はここでキャンプ。夕飯までに水浴びをしようと川へ。少し茶色く濁っているがまあいい。
身体を洗っていると少年がやってきた。石を投げて水切りをしている。僕もパンツ一丁で投げる。
次は魚探し。モンゴル人は魚を食べない。モンゴルには海がないからか知らないが、神聖な生き物とされているらしい。
少年は川の岩場で魚を見つけては大はしゃぎで捕まえようとする。魚といってもメダカくらいのサイズだ。
岩でダムを作り、魚を追い込むが逃げるのが早くて捕まえられない。ついでに水がすぐ濁るので見失う。
どんだけやるねんと言いたくなるほど魚を追い回し、少年はやっと飽きたようでテントに戻る。
ちょうど夕飯の時間だ。羊肉のスープヌードル。満足に飲み物が飲めない生活が続いているせいで、スープヌードルは水分補給的な意味でありがたいご飯だ。
食後は流木を拾ってきて焚き火。パタさんが火を起こしてくれる。さすが慣れているのであっという間にめちゃくちゃでかい綺麗な形の焚き火が出来上がった。
パタさんは少年を起こそうとしている。魚探しで疲れたのかもう寝ているようだ。
焚き火を囲みながらみんなボーッとする。少年は結局起きてこない。
あの少年はパタさんの息子なのか聞いてみた。
「ノー」
どうやら近くのゲルに住む家族の息子らしい。つまり御近所さんだ。遊牧民はいくつかの家族が集まって疑似家族として生活するとか聞いたことがある。とにかく日本人がイメージする家族の概念より緩やかな繋がりがあるんだろう。確かに遊牧生活を送るに当たってはモンゴル形式の方が効率がいいだろう。
火が落ち着く前にパタさんはテントへ戻っていった。今夜も僕とAラさんはいつまでも話し込んでいた。
せんまさお
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