ガサゴソと音がして目が覚めた。ドミトリールームの二段ベッドに泊まっているが、ベッドごとにカーテンが掛かっており、ちょっとしたプライベート空間になっている。
カーテンを開けてみると、目の前に大男がいた。
「僕のIDカードを知らないか?」
彼は僕の上の段のベッドに泊まっているらしく、IDカード(中国の身分証のようなもの)を失くしたらしい。
もしかするとベッドの脇から下に落ちたかもしれないと言うので、僕のベッドもベッドの下も探してみたが見つからない。
「これじゃ電車のチケットを買えないよ!ファックファック!」
ファックファック言っている理由は彼の言う通りで、中国ではなぜか電車のチケットを買うためには身分証が必要だ。外国人の場合はパスポートを使う。
ちなみに、中国の身分証があれば、電車のチケットも自動発券機で買うことができるが、発券機はパスポートに対応していないので、外国人は窓口に並ぶ必要がある。
逆に、なぜ中国人が窓口に並んでいるのかは分からない。発券機は割と空いているのに、皆苛立ってまで窓口に並んでいるのは、特別割引の対象者とか何か理由があるのかもしれない。
歯を磨いて部屋に戻ると、まだ探している。彼は苦笑いしながら、「見つからないから朝食でも食べてくる」と部屋を出て行った。
荷物のパッキングを終えた頃、彼が部屋に戻ってきた。僕はもうチェックアウトするよ、と伝えると、彼は「良い旅を」と。バイバイと言うと、彼は思い出したように言った。
「あっ、IDカードの紛失には気をつけてね」
天津西駅から新幹線に乗る。本当は寝台列車が良かったが、予約を取ることができなかった。
代わり映えのしない風景が続く。中国は国土が広いためか、都市と都市の間には本当に何もない。この度も、点々と田んぼや畑が広がっていた。
稀に突然巨大な団地のような建物が並んでいるが、どう考えても人が住んでいるようには思えない。不動産投資が中国で流行っているらしいが、そう言った目的のものなのだろうか。畑に立つ高層ビルはなんとも不気味だ。
新幹線は駅によっては10分近く停車する。というのも、乗る効率が悪すぎてなかなか乗り込めないのだ。天津西駅でもそうだったが、スルスルと中に乗り込めない。
まず出てくる人を待たないから、中でひっちゃかめっちゃかしている。荷物台に荷物を乗せる時、日本なら座席側に身体をねじ込んで通路を開けてから荷物を乗せるが、こちらでは通路を塞いで乗せるもんだから通路が詰まってしまっている。
あと驚くほど座席間違いが多く、車両番号も座席番号も書いてあるのに、30%くらいの確率で誰かが「ここ私の席です」と声をかけてくる。なぜ自分を疑わないのだ。
愚痴みたいになってしまったが、たぶん座席番号に関しては、アルファベット表記なので読めない人がいるんだろう。ABCとEFの5列シートなのだが、窓側がどちらかわかっていない人が多いからだ。普通に考えてEとFならFが窓側だと分かるもんだが、アルファベットの順番が分からなければ間違えてしまうのかもしれない。車両番号間違えについてはよく分からない。
そういう感じなので到着も少しだけ遅れた。遅れたと言ってもインドに比べれば早くついたようなもんだ。
7時間かけてやってきたのは哈爾濱。
これでハルビンと読む。日本との歴史的な関係が深い都市だ。そしてロシア文化も気になるところ。少し肌寒いのは整然とした街並みのせいかも。今までとは違う中国を期待して寝る。
せんまさお
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